第5話 美玖を心配したクラス委員

弥太郎には聞かない事にした。

何故かといえば.....そんなに無理矢理に聞いた所でどうにか出来る問題ではないと思ったから、だ。


俺自身が助けになれば良いのかもしれないが。

何せ俺自身は.....恋に臆病なのだ。

昔の事があって、だ。

あ。義妹の事じゃ無いけど。

だから俺は密かに応援する事にした。


「おーう。裕太郎。みほみほ。さっさと帰ろうぜー」


「そうだな。学校に何時までいてもつまらんしな」


「だねぇ。楽しくないしぃ」


放課後になった。

掃除当番はクラスメイトなので任せて帰る事にする。

俺はそう考えながら.....気怠そうな弥太郎と美穂と一緒に帰宅をした。

するとその途中で弥太郎が聞いてくる。


「そういや聞いたぜ。.....義妹ちゃんが部屋から出て来たって?」


「.....うーん。ちょっと間違ってるけどな。.....だけどそれはビンゴかもな」


「.....あの冷徹ちゃん.....元気なのか?」


弥太郎は恐怖故かブルッと震える。

そりゃそうだろうな。

弥太郎に散々.....説教したしな。


当時の美玖は、だ。

それは何故かといえば服装がなってない、とか、だ。

何度も何度も激昂しながら言っていた。

弥太郎に鬼気迫る顔で散々迫ったしな.....。


「元気っちゃ元気だな。有難うな。弥太郎」


「.....そりゃそうだろ。お前の義妹ちゃん可哀想だしな」


「.....性格が壊されたしねぇ.....」


「.....」


ご心配をして下さるのは有難いのだが。

今は多分もう大丈夫だ。

何故なら凄まじくエッチな義妹になっているので、だ。

考えながら目の前を見ると。

通学路の途中に黒髪のボブヘアーの中学生が立っていた。


「あ。もしかして甘味さんですか」


「.....?.....君は?」


「私、佐藤理保(さとうりほ)って言います。貴方を待っていました。甘味美玖さんに関して、です」


見た感じは美少女だな。

律儀な感じの.....である。

顔立ちは幼いながらも大人びて目がクリッとしていて。

そして.....凛としている。

身長は平均の女性よりも高いかもしれない。


俺は見開きながら、そうなのか、と答えた。

理保さんは、はい、と笑顔で答える。


「私、クラス委員なんですが.....是非、クラスの仲間である美玖さんに会おうと思いまして。挨拶を、と思いました」


「.....」


『お兄ちゃん。お◯んち◯とか舐めてあげよっか?』


あれは.....まああの状態では無理ですね。

卑猥すぎるんだが。

考えながら俺は青ざめて直ぐに答えた。


御免な、それは無理だ、と。

引き篭もっているのが理由なんだけど、とも言った。

理保さんは、え?駄目ですか.....、と落胆する。


「そんな事言わずに会わせてあげたら?美玖さんに。裕太郎。せっかく来てくれたんだし」


「そうだぜ裕太郎。この子は折角会いに来てくれたのに」


「い、いや......」


うーん.....。

困ったな、と思いながらも。

期待の眼差しで見てくる理保さんに諦めざるを得ず。

そのまま理保さんに向いて答えた。


「分かった。でも高確率で会ってくれないとは思うが何とかしてやってくれたら嬉しい」


「はい!是非是非です!」


「良かったねぇ。裕太郎」


「そうだな。アッハッハ」


全く人の苦労も知らないで。

あんなにエッチになった義妹なんだぞ。

まあ絶対に言わないけど。

だけど.....美玖をこんなに心配してくれる人も居るんだな。

その事を考えながら俺は、理保さんを家に連れて行く、とメッセージを飛ばす。

しかし。


(ハァ?何考えてるの?お兄ちゃん、連れて来ないで。迷惑)


「.....そりゃそうなるわな」


「どうした?裕太郎」


「.....何でもねぇ。ちょっとな」


通学路の角に差し掛かった。

それから俺は弥太郎と美穂と別れてから。

そのまま2人で歩き出す。


すると理保さんが聞いてきた。

もしかして、さっきのは美玖さんですか?、と。

俺は、まあ.....そんな感じかな、と答える。


「最近、メッセージを飛ばしてくる事だけは出来る様になったんだ」


「そうなんですね。私ともやり取りしてくれたら嬉しいな」


「.....」


可能性としては0に近いと思う。

だけど諦めない事は大切だよな.....。

考えながら俺は仕事などで誰も居ない家に理保さんを招き入れた。


すると目の前に画用紙が4枚置かれており。

そこには巨大な文字で、帰れ。呪われたくなければ、と赤文字で書いてあった。

マーカーで書き殴った様な痕である。

アイツ......ここまでするか。

俺は額に手を添える。


「あ、あはは.....嫌われてますね。私」


「.....まあそうだろうな」


俺は額に手を添えながらそのままリビングに案内してから。

2階に上がってから美玖の部屋のドアをぶっ叩いた。

おいコラ!お前はどういうつもりだ!、と、だ。


すると返事が無い代わりに。

ドンドンドンドンと滅茶苦茶な感じでドアに抵抗の音があった。

そして、お兄ちゃんのバーカ!、と言葉が。

俺は困惑する。


「いやいや。お前を心配して来てくれているんだよ。クラス委員の人が。もし良かったら会わないか」


「.....ふーん。お兄ちゃんはそうしてまで私をクラス委員の人に会わせたいの?ふーん.....」


まあどうやっても絶対に会わないけど。

と言いつつそのままドアから離れて行った様な美玖。

俺はその事に盛大にため息を吐きながら踵を返しつつ去ろうとした。

その時だ。

美玖の部屋の扉がゆっくり少しだけ開いてからジト目の美玖が顔を見せた。

そして満面の笑顔を見せてくる。


「.....お兄ちゃん。そのクラス委員は女子だろうけど手を出したら殺すからね。惨殺するから」


「いや.....何なのお前.....」


「ん?本当にぶっ殺すってだけの話だよ?アハハ」


コイツならマジにやりかねんのだが。

俺は真っ青になりながら顔を引き攣らせて目から光の消えた美玖を見る。

そして美玖はバァンとドアを閉めた。

俺はその事に盛大に溜息を吐きながら.....その場を後にした。

駄目だった、と考えながら、だ。

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