第2話 突きつけられる理不尽
その日の授業が終わった夜頃。
とある女子寮の一室で、2人の女子生徒が話をしていた。
「ごめんセナ! 今日歴史の宿題がものすごく時間がかかってて、剣術の勉強一緒にできそうにないや・・・」
「そうなの? それは仕方ないわね・・・。 私手伝おうか?」
「いや、大丈夫! このぐらいの宿題なら自分一人でやってみせるよ! 多分・・・」
金髪で髪型がボブの少女が、机の上で頭を抱えていた。
その様子を見てセナは、心配している。
「じゃあ私は、広場で自主練しとくから。帰ってくるまでに終わらせておくのよ。」
「うん! わかったお母さん! 」
「だ・・・誰がお母さんよ! フィオナ!」
セナはフィオナの頭をぐりぐりと少し痛めつけた後、学園から少し離れたいつもの広場へと、自主練しに出かけた。
「あれ? あいつは・・・」
しかし、その場所には先客がおり、それはリアだった。
どうやら、剣の素振りをしているようだった。授業で出来なかった分をしようとしているのだろうか。
それにしてもあいつ・・・
「あんた、良い剣してるわね。」
「あっ、セナ・ヴァージニアさん・・・ ありがとうございます。」
リアは、驚きとともに褒められたことがうれしくて耳を赤くし照れている。
そんな少年の姿を見ながらセナは、悲しい目を向けていた。
「だからこそ、残念ね。『勇具』に選ばれなかったのは。」
「ッ・・・」
白髪の少年は、声にならない悲しみを発した。
そしてセナは言葉を続けた。
「リア・ライゼル。あんたこの学園をやめなさい。」
「え?」
リアは衝撃のあまり、言葉が出てこない。
だが、赤髪の少女の目は、心から言っているように思えた。
「どうしてですか?」
「それは、あなたも分かっているでしょう? どれだけ個人としての力を上げても『勇具』を持つ者と持たない者じゃ、戦闘力が歴然の差なことを。」
彼女が言うことは至極当たり前のことであり、リアが避けてきた事実でもあった。
勇具は内にある『勇者の力』を引き出す。
それは、人間の枠を超える力を得るという意味と同意である。
「きっとこれから『勇具』を持たなければついていけない環境になっていくことになると思うしね。」
「それでも僕は・・・!」
「ムリよ。」
セナは少年の訴えを完全に否定した。それは彼のことを思ってのことでもある。
「あなたは出来ると思っているかもしれないけど、世の中にはどうすることもできない理不尽があるのよ。それにこれから先、デビオラが力をつけてきたら・・・ あなた死ぬわよ?」
これは大げさに言ったのではなく、起こりえる現実である。
デビオラは同年代の生徒に比べ、上位の戦闘能力を持っている。
その彼が、『勇具を持たない者』に暴力を振るったら・・・ 悲惨な結末になるのは間違いない。
だからセナは、彼に嫌われようとも誰かが言わなければいけない言葉をかけたのだ
しかし・・・
「ごめんなさい。セナ・ヴァージニアさん。それでも僕はこの学園をやめることは出来ない。」
「あなた人の話を・・・!」
聞いていなかったのかと言おうとしたが、彼の目を見た瞬間、リナ・ライゼルは考えを曲げないと悟ってしまっ た。
それほど、彼の目は力強い何かがあった。
「そう・・・ まあいいわ。あなたがどうなろうとも私には関係ないし。後、今日は貸してあげるけど、ここは私の場所だから今後使わないでよね。」
「あ・・うん。わかりました。」
「それじゃ。」
セナはその言葉の後、自分の部屋へ戻ろうとしたが、それをリアが少し引き留める。
「あ・・・ あのセナ・ヴァージニアさん!」
「なに?」
「その、僕のことを心配してくれてありがとう。この学園に来て初めてまともに人と話せたから嬉しかった。」
セナは、自分の行動を否定するような人物に対して、顔を赤く染めながら礼を言うリアに驚き、あきれてしまった。
「ほんと、バカね・・・」
「え、なんて言ったんですか? 」
「何でもないわよ。それと別にあなたと友達になったわけじゃないから。私に話しかけるのはやめてよね。それじゃ! 」
そう言って、セナはその場を後にした。
そしてその場に残ったリアは彼女の背中を見送った後、夜空を見上げ呟いた。
「友達になろうなんて一言も言ってないのに・・・ いつかはなれるといいな。」
学園に来て、初めてできた小さな夢を。
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「なんで、あのリアとセナが一緒にいるんだよ・・・」
パーティーが終わった後、偶々広場に来ていた大柄の男子生徒が、二人が話している現場を見ていた。
「俺の女を取るとは、やってくれるじゃねえか・・・ 望み通り殺してやるよ。」
史上最弱の勇者は最狂の剣で無双する。~自分を貶めてきた奴らに最高の『ざまあ』をくれてやるよ~ みなかな @minakana782
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