第51話【第二の兇承獣】
アンジがテツの元へとやってきた。
「テツ様、お疲れさまでした」
「うん! 結構楽しめたよ!」
「それはよろしゅうございました」
するとアンジが何かに気付いた。
「テツ様、それは……」
アンジはテツの持つエリズスティードを指さした、そしてテツが見てみると、エリズスティードにはヒビが入っていた。
「ああー!! ヒビが入ってるー!! なんでー!?」
「恐らく……バグレットの攻撃や、テツ様の流したオームを受けきれる程の強度がなかったのではないかと」
「そうなのー? てかなんかそれじゃ僕が悪いみたいじゃん……」
「いえ、その剣の寿命です、物はいつかは壊れゆくものですので」
「そっか……うーん……結構気に入ってたのに……」
「テツ様、要は素材と作り手がいればいいわけですから、素材はチシリッチ鉱山にあるのはわかっているわけですし、作り手も……」
「ああ! シム・ナジカって言ってたっけ? でもどこにいるの?」
「それは
「そう? よーし! じゃあ、シム・ナジカとゲルレゴンを探して新しいエリズスティードを作ろう!」
「はい」
「そうだ! その前にバグレットを仲間にしないと!」
テツとアンジは地上に落ちたバグレットの元へと降りて行った。
「結構ボロボロだね、大丈夫かな?」
「あれ程の力を持った生命ですから、この程度の負傷ならスクリアを授かれば、たちどころに修復されるでしょう」
「そっか! じゃあ!」
テツは目を閉じ拳を握ると集中した、しばらくするとテツの拳は光り輝きだし、テツが目を開けるとテツの瞳はまた、黒くなっていた。
そしてテツがその輝く拳を開くと、そこには碧色に輝くスクリアがあった。
アンジはそれを食い入るように見ていた。
「おおお……」
テツが手を傾け、スクリアをバグレットの頭部に落とすと、スクリアはゆっくりとバグレットの中へと入っていった。
「ふう……これでいいね!」
「お疲れ様です」
「でもこんなおっきな奴じゃお城入れないね、城の外にいてもらう?」
「そうですね……確かにこのままではなにかと不便ではありますが、スクリアの力を受け、まずはどう変化していくのか…」
「そうか……たしかに、今までと少し変わるよね、でっかい角生えてきたりして!」
「可能性的には十分にあり得ることかと思いますよ」
「どうなるんだろう!? 楽しみだなあ!」
二人が話しているその時、バグレットからスクリアの鼓動が聞こえ始めた。
……ックン トックン トックン……
「始まりましたね」
「うん!」
鼓動は次第に大きくなってきた。
ドックン! ドックン! ドックン! ドックン ! ドックン!
その時、バグレットの身体からまばゆい光が放たれた。
「うわ! なにこれ!? まぶしい!!」
光はどんどん大きくなり、辺り一面を照らした。
「この光は……」
暫くすると、光は一か所に収束するように減光していった、そして、光が全て収束されたその場所には、一人の少年が横たわっていた。
「え? ええええ!!?? 何この子!? バグレット!? 子供になっちゃった!?」
「こ、これは……」
「ねえねえ! なんでなんで!? どういうこと!?」
アンジは暫く考え込むと口を開いた。
「先ほどのバグレットから放たれたものは、紛れもないオームでした……」
「うんうん!!」
「バグレットにスクリアを埋め込む事でスクリアが反応し、大量のオームが生まれた……しかしあまりに増大した為、受け皿であるバグレット自身を破壊してしまうところだった……」
「う、うん……」
「そこで、バグレット自身の力を凝縮させることでオームを収めた……バグレット自身が小さくなったのは、力を凝縮させる過程で起きた事なのでしょう」
「そ、そっか……でもなんで人間の形なの? 小バグレットじゃないの?」
「それは恐らくスクリアの記憶……」
「スクリアの記憶……?」
「はい……スクリアには記憶があり、授かった者にはその記憶が反映されます、私がスクリアについていろいろと理解があるのも、スクリアの記憶が私に教えてくれるからなのです、なので恐らく、スクリアの記憶の中に、生命とは人間の形、という記憶があったのでしょう」
「へー、てかさ、何で授かった者にはいろいろな記憶があって、授けた僕には無いわけ?」
「それは……すみません、わかりかねます……」
「かーんじんなとこだけわかんないんだから!」
「テツ様、それはそうと如何なされますか?」
「そうだね……意識もないし、とりあえず城に運ぼっか」
「承知致しました」
そういうとアンジは子供を浮かべた、そして二人はゲルレゴン城へと飛び立った。
――
「テツ様」
「なあに?」
「ところでこのバグレットの名前は如何いたしますか?」
「名前? バグレットじゃないの?」
「バグレットとは種族名ですので、人間、と呼んでいるのと同じです、こうして我々の部下になった以上、何かしらの名前が必要かと」
「それもそうだね、え? てか僕が付けていいの?」
「もちろんでございます」
「えー! どうしようかな……?」
テツは暫く考えた。
「うーん……バジム……」
「バジム、ですか?」
「変かなあ?」
「いえ、素晴らしい命名かと」
「よし! じゃあ今日からお前はバジムだ! よろしくね!」
テツは気を失っているバジムに微笑みかけた。
――ゲルレゴン城
二人はゲルレゴン城へと戻った。
「おお、結構直ってるね!」
「テツ様、私はバジムを寝室へと連れて行きますので、テツ様は王室にてお寛ぎ下さいませ」
「そう? わかったー!」
テツは王室へと降り立った、中では
「お帰りなさいませ!」
「ああ、ただいま」
テツは持っていたエリズスティードを残念そうに眺めた。
「これどうしよう……」
テツは
「ねえ」
「は! 御用でしょうか!」
「これさ、あそこに置いておいて、飾ってあった場所」
「は! かしこまりました!」
そう言うとテツは
「よろしく」
テツは王座に着き、暫く考え込んでいた、するとアンジがテツの元へとやってきた。
「テツ様」
「ああ、アンジ……バジムは?」
「寝室で休ませております」
「そっか……」
「どうかなさいましたか?」
「うん……バジムが人間の形になったのはスクリアの記憶って言ってたでしょ? てことは僕の先祖は人間てことなのかな? でも人間でスクリアなんて生み出せる人いないよね? そうなると僕はなにものなのかね?」
「私の中のスクリアの記憶では、あくまでスクリアについての記憶しかございません、なのでスクリアを生み出す者の正体まではわかりかねます」
「そっか……」
「ご自身の起源にご興味がおありで?」
「まあ、自分がなにものか、くらいは知っておきたいよね」
「そうでしたか……テツ様がどこから来て、一体何者なのか、確かにそれは私にも興味があります」
「でしょ? どうしたらわかるのかなー?」
「そうですね、それについては色々な情報が必要になってきます、ただ、この世を統べる事で情報は集まるので、支配を進めていけば自ずと解明されていくのではないでしょうか」
「そっか、たしかに! じゃあなんせ予定通りに支配を進めるって事だね!」
「はい」
「それと、新しいエリズスティード作ってもらわなくちゃね、シム・ナジカって人探さなきゃ」
「それに関しては先程、
「仕事が早いねー! でもそしたら僕やる事なくなっちゃうよ……」
「テツ様のお手を煩わせる事はではありません、しかし、ただ待つだけというのも所在ないと思われますので、こちらを……」
するとアンジは王座の前の机の上に、拳を握り掲げた、そして目を閉じて集中した。
「…………」
暫くするとアンジの拳が輝き出し、アンジの拳の中から一粒の光が落ちた、その光は机の上に浮き、留まった。
「アンジ、それ?」
「はい……スクリアでございます、私の中にあるスクリアを一欠片にして出しました」
「そんな事出来んの?!」
「はい、そして……」
次の瞬間、スクリアの欠片から映像が投影された。
「これれって……」
「はい、
「へー! 凄い! じゃあどの
「テツ様はここで
「わかったー! でもアンジ大丈夫なの? アンジの中のスクリアなんでしょ?」
「あまり多くの量を出してしまうと、体内のオームや、それこそ生命の維持にも影響が出てしまうでしょうが、この程度の量であれば然程問題はありません」
「そうなんだ、スクリアってなんか色々便利だねー」
「はい、まだ私にも理解出来ていない、未知なる力の可能性は大いにあると思われます、ですのでテツ様、申し訳ありませんが、私に少しお時間を頂けないでしょうか?」
「うんいいよ! なにすんの?」
「スクリアとオームの力について研究をしようと思います、城の一部屋を頂ければ、そこを研究室として、スクリアやオームの力の可能性を解き明かしていければと」
「わかったー! じゃあ僕はここで
「承知致しました、では……」
アンジはそう言うと王室を出て行った。
「さあて、
テツはスクリアの映像を興味津々に見始めた。
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