第40話【爆発】
「ゲルレゴンの兵士よ、貴様は立派に戦っている! あきらめないその姿勢、誠に感服した!!」
「誠にあっぱれな兵士ですね!」
( 自分でやっといて泣いてる!? あきらめてないとかそういうことじゃないから!! まだあの人に 理性あると思ってるの??!! 勝手にタコ殴りして勝手に感動してるーー!!)
サンタニロ隊長は静かに拳をおろした。
「もう良いではないか、意地を張らずに降伏するんだ、貴様の兵士としてのプライドはもう十分に伝わった」
デズニードは黙ったまま動かない。
「……ちっ!」
「き、聞こえていないのでしょうか?」
(またちっ! って言った!!?? シカトに免疫無さ過ぎない!!?? 涙からの即ちっ! って! 感情の振り幅なさ過ぎない!!?? 怒りと悲しみがお隣さん同士なの??!!)
サンタニロ隊長はデズニードへと飛び出し、 すごい形相で殴り始めた。
「隊長! その調子です!」
(やっぱ切れてるーー!! さっきまでの彼への敬意は!? 涙は!? なんなら彼の方が血の涙流してるしーー!!」
テツはその時不敵に笑っていた。
「ふっふっふっ! いくら殴っても我がデズニードは不死身じゃ! そのうち貴様の方が疲れちゃうぞー! ふっふっふっ!」
「テッ様……」
「なんじゃ?」
「デズニードは不死身、というわけではございません」
「え!? そうなの!? だって頭とか無いのに動いてんだよ?」
「身体の大部分が喪失した状態でも動けるうえに、攻撃を受けても不痛不感ですので不死身にも思えますが、 攻撃を受け、ダメージを負えばオームが消費されます。オームとはエネルギーですから、オームが尽きればデズニードも活動出来なくなります、 そうなると不死身とは言えませんね」
「なんだ、そうなんだ? つまんないのー! じゃあもうあのデズニードに勝ちめは無さそうだね……」
「そうですね、 相手の体力の消耗は望めなさそうですし、もうほとんど勝負はついたかと、あとは……」
「あとは??」
「デズニードの底力に期待しましょう」
「なんだー! なんかあんのかと思ったら! 底力ねぇ……そんなものあるのかねぇ??」
アンジは意味深な顔をしていた。
一方、デスニードはもはや手も足も出ず 、一方的に殴られ続けていた。
「隊長その調子! 頑張って!」
(うっひゃー……きつそー……うちの隊長体力馬鹿だからなぁ……まだまだ続くよー、御愁傷様ですー……てかこのままいったら最終的にミンチになってハンバーグにされちゃうんじゃないの……?)
その時、デズニードが急に腰を落とした。
「隊長! 効いてますよ!」
(あれ? 効いた? 不死身じゃないの? ダウンします?)
そして抱え込むように自分の両肩を掴んだ。
「シェアアアアア!!!」
「むっ!?」
「え!?」
するとデズニードの身体が光り輝き出し、その場で爆発を起こした。
「!!!!!! っぱあぁぁあ!!」
テツはびっくりしてひっくり返っていた。
「びっくりしたー!! 変な声出ちゃったよ!! なに今の!? 爆発したけど??」
「最終手段、 「自爆」ですね、 自身に流れるオームを爆発させたのでしょう……」
「オームってそんなこと出来んの??」
「エネルギーですからね、理論上は可能かと」
「へー! じゃあ相打ちかー! なんか最後はあっけなかったなぁ……」
「そうでもないみたいですよ」
「へ?」
テツは爆煙漂う方に目を向けた、するとその爆煙の中に人影が見えた。
「はぁはぁはぁ……」
なんとケイスがサンタニロ隊長の目の前に立ち、両手を前に突き出し護っていた、そしてそのケイスの両手はひどく焼けただれていたのであった。
「アンジ……なにあれ? どういうこと? 爆発を手で止めちゃったってこと?」
「いえ、素手ではございません、尽きかけたオームの爆発とはいえ、生身で受ければ木っ端みじんになっていた事でしょう、爆発の瞬間、あの男が瞬時に隊長の前に立つと、魔法で大量の炎を出して爆発を相殺したのです。あの瞬間での判断力と行動に移したスピード、それに尽きかけていたとはいえオームの爆発を防ぎきるほどの炎魔法は大したものですね」
「へー! やっぱこの大陸の兵士は強いんだねー!」
「そうですね、たとえ今は平和とはいえ、三百年前までは戦争をしていたようですし、ずっと平和に暮らしてきたガルイードと比べ、戦闘における文化はかなり発展しているようですね」
サンタニロ隊長は、目の前に突如現れ爆発から守ってくれたケイスに驚きを隠せなかった。ケイスは爆発を相殺する為に一気にアークを放出したので、かなりの消耗をしていた。
「はぁはぁはぁ……」
「ケ……ケイス……ケイス!」
「た、隊長……」
サンタニロはケイスを………………殴った。
「ぶへああ!!??」
(ええええええーーーー!!!!????)テツ&ケイス
「貴様なんてことを!!」
「す! すみません!! またしても出過ぎた真似を!!」
(もうやだーー!! 手痛いし顔痛いし!! もうやだーー!!)
「ちがう!!」
「へ??」
「私を助ける為にこんな無茶なことをして……もしお前の身に万が一のことがあったら私は……私は……」
サンタニロはケイスをきつく抱きしめた。
「良かった……無事で……本当に良かった……」
「た、隊長……」
(まあ……あなたも無事で、なによりでしたよ……)
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