第24話【地下】
――城内地下
(どこだテツ? どこにいるんだ……?)
アンジはガルイード城の地下へ続く階段を降り、テツの投獄されている部屋を探した。
(扉……)
階段を降るとそこには扉があった。
(鍵が掛かってる……)
アンジは扉のノブを掴むと集中した。
「…………」
すると扉のノブが熱で赤くなった、そしてアンジが赤くなったノブを足で蹴ると、ノブは破壊され扉が開いた。
「よし……」
アンジは中へと入っていった、すると更に地下へと続く階段があった。
(いざとなった時の他の脱出経路はなさそうだな……しかし、このまま帰るわけにはいかない、なんとしてでもテツを連れ戻すんだ……)
アンジはどんどんと階段を降っていった。
(これは……)
階段を降りしばらく進むと、そこには先程の扉より頑丈そうな扉が三つ並んでいた。
(どれだ? テツはどこにいるんだ?)
よく見ると扉には小さな小窓のようなものがあった。
(……)
アンジは真ん中の扉の小窓を開け覗き込んだ。
(!! テツ!!)
小窓のぶ厚いガラス越し、そこには紛れもないテツの姿があった。
「テ!」
「そこまでだ!!」
「!!」
アンジが振り返るとそこにはシラウの姿があった。
「貴様、いったいなにをしているのかわかっているのか?」
「……私は家族を助け出そうとしているだけです……」
「家族……? その怪物がか?」
「テツは怪物なんかじゃない、あんたらが勝手に怪物にしたてあげ、自分等の都合で殺そうとしているだけだ!」
「だまれ!! その怪物を世に解き放とうなど! 貴様も牢屋にぶち込んでやる! かかれ!」
二人の兵隊がアンジに襲い掛かり、抑えつけてきた。
「くっうぅ……」
アンジは後ろから抑え込んでくる一人の兵隊の腕を掴んだ。
するとアンジの手が輝いた。
「?! ぐわあ! 熱!!」
兵隊は掴まれた腕に異常な熱さを感じ、咄嗟にアンジから手を離した。
そしてその瞬間、アンジはその兵隊に肘を打ち付けた。
「ぐはっ!!」
さらに腰を抑えていた兵隊の背中に、両手を重ね下に叩きつけた。
「ぐわっ!」
「貴様!! 抵抗するか!!」
(くそっ……、どうすれば……)
「抵抗するなら仕方が無い……」
シラウ大臣の合図で兵隊達は一斉に剣を抜いた。
「くっ……」
「掛かれ!! この国の為だ! 生死は問わん!」
「おおお!!」
「!!」
剣を持った兵隊達が襲いかかってきた。
「くっ!!」
無数の剣が襲い掛かるも、アンジは右へ左へ上手くかわしている。
「はあはあ……」
(くそ、かわすことだけに集中すれば何とかかわせはするが、いつまでも持たない……何か武器がないと……)
ジリジリと兵隊が距離を詰めてくる。
「はあ!」
また兵隊が攻撃を仕掛けてくるも、アンジは何とかかわし続けた。
「!? ぐわっ!」
その時、先程倒した兵隊に躓き転んでしまった。
「しめた!」
兵隊は剣を振り上げアンジに襲いかかった。
「!!!!」
甲高い金属音が響いた。
「?!」
アンジは倒れていた兵隊の剣を抜き防いでいた。
そしてそのまま兵隊を蹴り飛ばし距離をとった。
「はあはあ……」
アンジはゆっくりと起き上がり剣を構えた。
「ぬうう……おい、こやつは魔法も去ることながら剣の腕も相当立つらしい、心してかかれ」
「はっ!」
兵隊達は徐々にアンジとの距離を詰める。
「きええええい!!」
兵隊たちが襲いかかってきた。
アンジは剣を握る手に力を入れた。
「はあ!」
数回剣を打ち合った後、兵隊の剣を受け、横に受け流すと、そのまま柄で顔面を突き上げた。
「きえいやああ!!」
たて続けに兵隊が剣を振り上げ襲いかかってくる!
「はっ!」
兵隊の振り下ろした剣を横に避けると膝で脇腹を蹴り、倒れかけた所に柄を振り下ろした。
「はあはあ……」
(しめた、狭い場所が幸いして剣を構えた兵隊はひとりずつしか攻めてこれない)
「ぐぬぬぅ……なにをしてる! 早く引っ捕らえろ!」
「ははっ! うをををおおお!!」
またしても兵隊が剣を振り上げ襲いかかってきた。
「……」
アンジは剣で受け止めると腹を蹴り上げ、頭の下がったところを剣の腹で打ち落とした。
「ぐはっ!」
さらに兵隊が突いてきた剣をかわすと剣は壁に突き刺さった。
アンジは峰でその兵隊の背中を打ち払った。
「はあはあ……」
(しかしこうしていてもラチがあかない……どうすれば……)
「おおおあああ!」
また兵隊が襲いかかってくるも、剣で受け止めた。
(はっ! そうだ!)
剣を横に受け流すと、すかさず腹に膝を入れた。
「ぐはっ!」
そしてすぐさま上着を脱ぎ、兵隊の両腕を取り後ろで巻きつけた。
さらに後ろから首に腕を巻きつけ、剣を兵隊に突き立てた。
「動くな!! こいつがどうなってもいいのか!!」
ザワザワ……。
「さがれ!! さがるんだ!!」
兵隊たちは後ずさった。
アンジはゆっくりとシラウへと近付いた。
「テツの部屋の鍵を出すんだ」
「……」
「早くっ!!」
「……」
シラウは鍵を取り出し、目の前に掲げた。
「そこに投げろ」
「……」
シラウはアンジの横にカギを投げた。
「動くんじゃないぞ……」
アンジはシラウを警戒しつつ、ゆっくりと鍵を拾った。
(よし……)
そしてテツのいる部屋の扉の方を見ると、数人の兵士が立っていた。
「そこをどけー!!」
兵隊達は道を開けた。
そしてアンジはゆっくりとテツのいる部屋の方へと向かった。
その時、シラウ大臣は倒れていた兵隊になにか合図を送った。
「ゆっくり壁際まで下がるんだ!」
兵隊たちの間を通り、アンジはゆっくりと歩を進める。
その一瞬、倒れていた兵隊が後ろから襲いかかって来た!
「!!!!」
アンジはすぐさま兵隊を盾に振り返った。
「動くな! こいつがどぅ……ぐはぁああ!!」
倒れていた兵隊はアンジが盾にしていた兵隊ごと突き刺してきた。
「がはぁ! うぐぐぅぅ……」
アンジは兵隊もろとも地面に倒れた。
シラウ大臣がアンジに近付いてきた。
「……」
シラウ大臣はアンジを蹴り飛ばした。
「ぐわあ!」
「咄嗟に身体を捻り致命傷は避けたか、流石の反応だな」
「うぐぐぅぅ……」
「おい! こいつを一週間後の怪物処刑までの間、牢屋にぶち込んでおけ!」
「はっ!」
「おいっ! 立て! こっちへくるんだ!」
「うぐぐぅぅ……」
(一週間……)
アンジは兵隊に無理矢理起こされ、牢屋へ放り込まれようとしていた。
「うぐ……くっそ……」
アンジは拳を握り締めた、するとまた光が放たれた。
「うわああぁぁ!!」
するとアンジの周りに突風が吹き荒れ、兵隊達は吹き飛ばされた。
「はあ……はあ……」
「おのれ、まだそんな力が……」
「はあ……はあ……」
「なにをしてる! 早くそいつをひっ捕らえろ!」
「はは!」
また兵隊達が一斉に飛び掛かってきた。
アンジはポケットからなにかを取り出しそれを掲げた。
「うあああぁぁぁあああ!!」
そしてそれを勢いよく地面に投げ付けた。
「!!!!!!!!」
魔法弾であった、アンジは持っていた魔法弾を地面に投げ付け、大爆発を起こさせたのであった。
周囲の壁は崩れ、辺りには黒煙が立ち込めた。
「ぐぬぅぅう……」
シラウ大臣は近くにいた兵隊を盾にして難を逃れていた。
「くそっ! どこへ行った!?」
辺りを見渡すがそこにアンジの姿は無かった。
「ぐぬぅぅう……」
シラウ大臣は拳を握り、悔しそうに壁を殴りつけた。
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