7-4


「……ギンガは……オレのことを倒せるの?」


 オレは『ジャンク組成ダー』を使って、両手の盾を更に大きくする。つぎはぎの上に、もっと鉄板を重ねたぶ厚いシールドだ。


「それは……」

「オレは戦いを止めたいって思っている。でも、ギンガがどうしても神様になりたいなら、オレは全力で止めてみせる」

「だから、オレっちはカイタと戦いたくないんだって!お前の優しい……争いたくないって気持ちを踏みにじりたくないんだよ!」


 ギンガは涙をぼろぼろこぼし続けている。気持ちが揺れ動いているんだ。


「もし、親友を裏切ってでも夢を叶えたいなら、オレにはどうすることも出来ない。でも、本当に神様にならないといけないの?」

「は……?」

「ギンガは諦めているみたいだけど、本当に宇宙飛行士にはなれないの?」


 オレは説得をやめない。

 親友と戦わずに済む道を、諦めたくない。


「だって、オレっちはバカだから……」

「バカなことは知っているよ!でも、これからずっとバカだって、決まった訳じゃないでしょ!?」


 確かにギンガはバカだ。

 成績は良くないし宿題も全然出来ない。オレとおんなじくらい、頭が悪いのは本当のことだ。

 でも、だからこうして仲良くなった。

 似た者同士、友達になったんだ。


「いくらバカなギンガだって……。神様になれるって言われて、他の人を蹴落として夢を叶えるなんて……その方がもっともっとバカだよ!」


 そんな大切な友達が、言われるがまま戦うなんて嫌だ。

 友達の夢は応援したい。

 だけど、こんな方法で叶えようとしてほしくないんだ。


「バカバカ、言い過ぎだーっ!」

「へぶふぉっ!?」


 ばこーんっ。

 思いっきりゲンコツを食らった。痛い。


「いったいなあ!?何するんだよ!?」

「もうちょっと言い方考えろってことだよ!」


 えぇ……そんな理由で……。それ、酷くない?オレも、「バカ」って言い過ぎたかもしれないけど。

 頭をさすりながらギンガの顔を見ると、いつの間にかいつもの元気な表情に戻っていた。


「……あれ?」

「まぁ、ありがとよ。オレっちも吹っ切れた」


 ニッと歯を見せて、ギンガは微笑んだ。


「……どゆこと?」

「オレっちも……戦いを止めるの、協力してやるってことだよ」





「人のこと疑っていたけどさ、カイタだって隠し事してたじゃねーかよ」

「うぐ……。それは、ごめん」


 近所の公園。

 オレとギンガは並んでベンチに座って、ずっと内緒にしていたことを、改めて打ち明け合っていた。

 つい先程友情の危機があったけど、今では仲直りだ。

 ギンガはオレの説得を聞いてくれて、新しい神様になるのをやめてくれた。「やっぱり自分の力で夢を叶えたい」と言ってくれた。そして、その代わりオレと一緒に、この戦いを止める協力をしてくれるのだ。


「……で、カイタはこの戦い自体を止めたいんだよな?」

「そうなんだよ。それでみんなで、一緒に進化のことを話し合って決めていきたいんだ。他の候補者の人達も分かってくれたら、きっと神様だって考え方を変えてくれるよ」


 オレは自分の気持ちと目標、それからこれまでのことを全部話した。戦いを止めようと走り回っていたこと。全然聞いてもらえず、結局バトルになってしまうことが何度もあったこと。それでも、カンブさんとメブキさんが仲間になってくれたことも。


「あのメブキが……マジか」

「大マジだよ。……まぁ最初はめちゃくちゃ怒られたんだけどね」


 ギンガはずっと前から、メブキさんとカンブさんも候補者だって知っていたみたい。でも気むずかしそうだったり先輩だったりで、ほとんど話が出来ていなかったそうだ。というより、今までバトルしたことがなくて、自分が神様候補だって知っている人がいないそうだ。


「それなら今度、二人のことを紹介するよ。きっと仲間になってくれるから」

「ああ、よろしく頼むぜ」


 オレとギンガはがしっと、力強く握手をする。

 改めて、友情の確かめ合いだ。


「そういえば、ギンガの能力って何なの?」

「ん、まぁ宇宙的なかんじかな」

「あの光の矢も?」

「あれは流れ星な」


 宇宙飛行士を目指しているだけあって、ギンガは宇宙のことが大好きだった。この前博物館に行った時も、隕石いんせきがどうたらこうたらと語っていた気がする。オレと同じで、好きなものがそのまま能力になったみたいだ。


「ってことは、ギンガは宇宙の力で進化したいってこと?」

「進化のことはどうでもいいけど、宇宙の力がスゲーって思っているのは本当だぜ?宇宙はまだまだ分からないことだらけで、太陽系の他の惑星だけじゃなくて、何万光年離れた星々のことも全部だ。日々新しい発見があって、また謎もどんどん増える。それに暗黒物質ダークマターが未来のエネルギーになるかもしれないからね!だから――……」


 あくまでも、ギンガはただの宇宙好きなようだ。オレと同じで、進化のことには興味がないらしい。

 まぁそれはそれとして、ギンガはずっと熱く語っている。だけど、勢いと熱量がすご過ぎてついていけない。

 オレの工作好きもこんなかんじに見えているのかな?


「……――ということなんだ。カイタはどう思う?」

「うんうん、なるほど……。ごめん、よく分からない」

「そうかそうか……って、ぅおいっ!?オレっちが色々教えてきたじゃんか~っ!」

「あれ、そうだっけ?」


 お互いが神様候補と分かっても、オレ達は友達同士のままだ。

 友情は永遠。

 こうして、新たな仲間として親友のギンガが加わったのだった。






☆キャラクター図鑑・7

魔品衣まじない沙羅サラ(五番目の神様候補)

 市立箱舟北小学校に通う、八歳の女子。勉強も運動もダメダメで、引っ込み思案。そのせいでクラスではいじめられている。空想をよくしており、特にファンタジー世界を好んでいる。魔法があれば自分が一番になれると思うようになり、両親に褒められるため、魔法の世界を作ろうとした。

 アイテム:ルビーの指輪

 能力名:『マジ☆マジ魔ギカ』…能力名を唱えることで、様々な魔法を使える。ただし使い過ぎると魔力切れになる。また『魔ギカル・チェンジ』と唱えると変身ヒロインになれて、身体能力が上がる。

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