第八章:鍛錬!新しい技を磨け!

8-1


「ふぅん、あなたも神様候補だったのね」

「いやぁ、僕も気付かなかったよ」


 次の日、オレの部屋に全員集合。狭い部屋にみっちり四人入っている。

 そこでカンブさんとメブキさんに、ギンガのことを紹介した。


「ふふん、ま~ね。ずっとバレないようにしてきたからなっ」

「どや顔やめなさい。なんか腹が立つわ」


 案の定、メブキさんの態度は冷たい。やっぱり素直に歓迎してくれなかった。元々クラスでもよく言い合いになっていたし、当然と言えば当然なんだけど。


「でもこれで、神様候補が全員出そろったってことだね」

「あ~、言われてみれば確かにそうか」


 ギンガと昨日出会ったミクさんを足せば、候補者全員に会ったことになる。夏休みも残り半分で、ようやくコンプリート。ここまで来るのに長かったなぁ。


「ちょうどいい機会だし、神様候補について情報をまとめてみないかい?」

「あ、いいですね」

「色々知りたいしな」

「あたしも」


 カンブさんの意見に、みんな賛成だった。


「まずは僕、古石ふるいしカンブ。能力は『バージェス・ミメティクス』。バージェス動物群を石で再現出来るよ」

「オレは機組屋きぐみやカイタ。『ジャンク組成ダー』で、色んな物をその場で作れるんだ」

「で、その親友の星宙ほしぞらギンガだ。能力は宇宙系がいっぱい……まとめて『宇宙コスモ』って名前でいいや」

「あたしは草持くさもちメブキ。植物を自由に生やせる『草木の気持ちグリーン・ブルーム』が能力よ」


 改めて四人の名前と能力を教え合う。こうして能力を並べて見ると、みんな個性が溢れている。それぞれの夢や願いが形になっているから、色んな能力が生まれたんだろう。


「次は今まで戦ってきた他の候補者を……とりあえず、脱落した人から挙げてみようか」

「最初の脱落者は、あたしが倒したエスパーの女かしら」

思念堂しねんどうサイさんだね。確か『PSIサイコキネシス』とか『PSIテレポーテーション』とか、たくさん技を持っていたなぁ」


 オレが神様候補に選ばれて、すぐに襲いかかってきたのがサイさんだった。選ばれた人だけが進化すればいいって考えていた、恐ろしいお嬢様だったと思う。


「二度もオレを狙ってきた、電乃裏でんのうらピーシィさんって人もいたよ」

「そいつって、どんな能力だったんだ?」

「えっと、『Cord:Cybersコード:サイバース』って名前で、機械の中に入ることが出来たんだ」


 ピーシィさんはオレとコンビを組んで、他の候補者を倒そうとたくらんでいた。でもオレの発明品『データ吸引ダー』で撃退したんだよね。


「あとは、魔品衣まじないサラって子がいたわ」

「『マジ☆マジ魔ギカ』って魔法を使う子だったね。……あれから元気にやっているかな」


 褒められたい一心で戦っていたサラちゃん。力をなくしちゃったけど、立ち直っているだろうか。心配になる。


「今のところ脱落したのは三人。僕達以外で残っているのも、あと三人だね」

「あたしと何回も戦っているのに、決着がつかない深海ふかみシズクが、まず一番に出てくるわね」

「深海生物を呼び出してくる人だよね」

「そう、『海・友マリンメイト』って言っていたわ」


 いつも図鑑を読んでいるシズクさん。手加減なしで攻めてくる、とっても怖いお姉さんだ。メブキさんとはライバル関係みたい。


「オレらの前にやってきたのは飴端あめばミク……だったよな?」

「うん。『原生げんせいのリバイバル』ってアメーバの能力を持っていたんだ」

「そうそう。しかもそいつ、男子はこの世にいらないとか言うんだぜ?」

「何それ、面倒臭そうな人ね」


 つい昨日会ったばかりのミクさん。プールでは大人の人に絡んでいたし、考え方もかなり歪んでいるし。メブキさんが言う通り、面倒臭い人だと思う。


「そして最後に……紫色のオーラを出していた男だね」

「……すごく強い人だった」


 名前は分からない、フードを被った中学生くらいのお兄さん。どんな能力を持っているかは謎。でもピーシィさんとサラちゃんを一発で倒している。他の候補者とは、強さが段違いだ。


「あいつ、全然しゃべらないのよね」

「おかげでどんな願いで戦っているのかも分からない。説得しようにも何から話していいのやら、ってかんじだね」


 カンブさんが言ったことが、一番の問題だった。オレ達は戦いを止めたい。そのためには話し合いをするのが大切。なのにあの人は何も話してくれない。それどころか、一撃で勝負を決めてくる。


「オレ達も負けないくらい、強くならないとダメってことだな!」

「それに、倒すつもりで戦わないと、きっと負けるわね」


 メブキさんの言い方は厳しいけど、当たっていると思う。戦いを止めたいからって手を抜いたら、あっという間にやられてしまうだろう。紫色のオーラの人は、それくらいに別格の強さなんだ。


「とは言え、対抗策が全然見つからないんだよね」

「単純に強くなるしかないんじゃない?」

「お前結構、脳みそ筋肉なんだな」

「うるさいわね、あなたに言われたくわないわよ」

「まぁまぁ」


 カンブさん達がわいわい言い合っているけど、オレはそんな気になれなかった。

 仲間がこんなにいる。戦いを止めるために頑張っている。

 それでも、紫色のオーラの人が怖かった。

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