11-7
神様候補同士の戦いが終わってから、街は大騒ぎで大変だった。影の巨人が出たせいで、「地球はもうおしまいだ」「世も末だ」なんて噂もあったくらいだ。でも、あながち間違いじゃないんだけどね。
結局、次の神様は決まらなかったので、前の神様が引き続き神様をすることになった。といっても何かするということはなく、ただオレ達のことを見守るだけだ。
またいつか、大きな問題が起きた時は、オレ達のところに現れるらしい。それまでは弱った神の力を取り戻すため、ぐっすり冬眠するそうだ。今は夏だけど。
神様候補だったみんなは、それぞれの生活に戻っていった。
サイさんは相変わらずのお嬢様で、自分が一番だと思っているみたい。でも真っ先に負けたのが悔しかったらしく、「今度こそ平民に負けませんわ!」と言って、毎日鍛えている。一体何と戦うつもりなんだろう。
ピーシィさんは少しだけ、機械いじりに興味が出始めたそう。「やっぱりメカニックも大事だよネ」と言っていた。自作PCにも挑戦するらしい。感電しないよう、気を付けてやってほしい。
サラちゃんはお話作りをしていて、魔法使いの物語をたくさん書いていた。空想が大好きで、形にしたくなったみたい。「パパとママに褒められたんだ!」と嬉しそうにしていて、もう心配しなくてもよさそうだ。
シズクさんは生き物以外の海のことを勉強するようになった。メブキさんの実りの力に負けたため、「海の力を最大限引き出す」とのこと。将来は深海の調査の仕事をしたいみたいだ。
ミクさんは男嫌いが治らないまま、オレ達のことを目の敵にしている。でも排除する気はなくなったみたい。「男は私のために働きなさい!」ってかんじで、態度は変わらないままだけどね。
ヒュウマさんはこれからも、身の回りの間違いに立ち向かうつもりだ。まずは学校を正すために、他の人達の力を借りていく。「諦めずに、色んな手を尽くしていく」と話していた。オレも協力するつもりだ。
そしてオレ達は――
※
「……気が重い」
「オレっちもだぜ……」
オレとギンガはそろって、どんよりムードで登校していた。
今日から二学期。クラスのみんなと久しぶりに会って、楽しい学校生活が始まる日なんだけど……。
「学校、行きたくないね」
「絶対怒られるもんな」
開始一日目からこの調子だ。
というのもオレ達、夏休みの宿題が終わっていないのだ。
この一ヶ月強、戦いと特訓の日々で、勉強をする暇なんて全然なかった。そのせいで半分ちょっとしか終わっていなかった。
このまま提出したら、めちゃくちゃ叱られそうだ。ああ、嫌だ。行きたくない。
「先に終わらせなかった、あなた達が悪いのよ」
そこにメブキさんの、鋭い正論が一撃。グサッと胸に突き刺さった。
「お前はいいよなー、頭いいからすぐ出来ちゃうもんなー」
「夏休み初日……かかっても一週間でやり切ってしまえばいいじゃない。それならおバカなギンガでも、なんとかなるでしょ?」
「何だと、こンの~~っ!」
ギンガはメブキさんのことを追い回すけど、適当にあしらわれている。やっぱり口は悪いけど、メブキさんも丸くなったと思う。
「別に、あたしは仲良しごっこなんて、するつもりはないからね?」
ジロッと見られてびっくりした。心の声がもれていたのだろうか。
っていうか、仲良しごっこって……。何だかんだ一緒にいてくれるだけで、友達みたいなものだと思うんだけどなぁ……。
「そうか、二人とも宿題が終わらなかったんだね」
「うぅ……追い打ちかけないで下さいよ」
後ろからやってきたのはカンブさんだ。先輩だし頭良いし、オレ達とは違って宿題もきっちり終わらせている。
「間違いなく、今日は居残りだなぁ……」
「良かったら、分からないところを教えてあげようか?」
「ぜひ、お願いします!」
「ついでに答えも教えてくれ~っ!」
「調子に乗るな」
すぱこーんっ。
ギンガの頭が、メブキさんのチョップで叩かれていた。
つい数日前まで戦い合っていたとは思えない。とっても平和で、穏やかな時間だ。
この時間を大切にしていきたい。
そう思いながら、オレは学校に向かって歩いていった。
おわり
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