11-6


「年下で頼りないかもしれないけど、オレがヒュウマさんの仲間になる。それに神様候補のみんなだって、きっと分かってくれるはず。……まぁ、説得に時間はかかるかもしれないけど」


 気むずかしい人やキャラが濃い人がいるけど、思いをぶつけ合った仲なんだ。理解し合える、協力し合える。オレはそう信じている。


「それにさ……。物作りと同じで、壊すのは簡単だけど、作るのは大変なんだ」

「……つまり?」

「つまり………………うん、オレも分かんない」

「締まらないヤツだな」


 ふっ。と笑みがこぼれる。

 悲しみで固まっていたヒュウマさんの顔が、少しだけ緩んだ。


「今まで……すまなかった」

「ううん、こちらこそ」


 ぴしぴしっ……。


 暗闇だけだった空間にひびが入る。

 ギザギザの割れ目から、光が差し込んでいる。


「行こう、ヒュウマさん」

「……ああ」


 ヒュウマさんが、オレの手を取ってくれる。

 力強く、でもとても優しい。

 きっと、これがヒュウマさんの、本当の姿なんだ。


 パリーンッ!

 ガラスが割れるような音がして、闇が砕け散る。

 差し込んでいた光が一気に広がって、オレ達を包み込んだ。


「……あれ?」


 そして、ふわっとした浮遊感。

 足が地面に付いていない、妙な感覚。絶叫マシンに乗っているような気分だ。

 下を見ると、オレ達がいるのは空中。地面は遠い遠い遙か下にある。

 これはもしかして、スカイダイビング的な――


「うわぁぁあああああああああっ!?」

「おおおぉぉぉぉぉぉおおおおおおっ!?」


 オレとヒュウマさんは、地面に向かって落ち始める。

 影の巨人が消えたことで、オレ達は空中に放り出されてしまったみたいだ。


「ちょ、ちょちょちょちょちょぉぉおおおっ!?な、なな何であの巨人消しちゃったんですか!?」

「わっ、我にも分からん!勝手に神の力がなくなったんだ!」


 ヒュウマさんの体からは、もうオーラが出ていない。それに神の力が宿るアイテム、銀色のチェーンもなくなっている。本当に神様じゃなくなってしまったらしい。


「もしかして、ヒュウマさんが人類滅亡を願わなくなったから……」

「そうか、そういうことならあり得るな。うむ」

「って、そんなこと冷静に考えている場合じゃないぃぃぃぃぃぃっ!?」


 地面にどんどん近づいている。このままだと、オレ達は二人まとめて地面に激突してしまう。


「ジ……『ジャンク組成ダー・レインボー』!」


 オレは急いで、背中にロケットブースターを作り直す。だけど背中に出来上がったのは、つぎはぎ&配線丸見え。しかも虹色に光っていない。


「ウソ、もしかして効果が切れた!?」


 みんなからもらった思いの力は、もう底を突いてしまったみたい。いつものその場しのぎな品質しか作れないんだ。


「もうしょうがないっ、これで頑張ろう!」


 オレはヒュウマさんと手を繋いだまま、ブースターを点火。空を飛びながら、少しずつ地面に降りる。

 まぁでも、ブースターが出てきただけ良かった……と思ったのも束の間、


 ガタガタガタガタ……ぶすんっ。


 黒い煙を上げて、ブースターが止まってしまった。


「……は?」


 まさかのタイミングで故障したみたい。『ジャンク組成ダー』を使うための、神の力が足りなかったのか?


「え、待って待って待って待って。せめてあともうちょっと、ホントあとちょっとだけ頼むよ!?」


 そんな願いも虚しく、


 パキンッ。


 オレの腕輪が、きれいに真っ二つに割れた。


「こっちもぉぉおおおおおっ!?」


 半分だけもらった神の力も、限界だったようです。


「うわぁぁああああ……――げぶふっ!」

「おおぉぉおおおお……――ぶふぉっ!」


 そして、二人同時に地面に激突――――しなかった。

 オレとヒュウマさんの体は、光に包まれている。そのおかげか、死なずに済んでいる。ちょっと顔面を、地面に強打してしまったくらいだ。

 一体、どうして無事なんだろう?そう思って下に視線を向けると、


『ま……間に合ったようじゃ……な……』


 石版が地面に埋まっていた。オレ達の下敷きになったせいで、ガッツリめり込んでいた。

 どうやら、前神様がギリギリのところで助けてくれたみたいだ。あ、もう『前』じゃなくなったのか。


「ありがとう、神様。ホント、危ないところだったよ……」

『す……少しは、役に立たんとな……』


 神様にも、それなりに責任を感じていたみたいだ。ダメ神様かと思ったけど、思ったよりまともで良かった。


『そ、それよりどうするつもりじゃ!?二人とも神の力を失いよって……』


 半分もらった力も限界で、集めた十人分の神の力も消えてしまった。残っているのは石版に残った、二十二分の一の力だけだ。


「じゃあ、引き分けってことで」

『はぁ!?何を言っているのじゃ、意味が分からんぞ!?』

「神の力はなくなったんだから、そういうことじゃない?」


 戦いに勝ち残ったのはヒュウマさん。でもそのヒュウマさんが、神様になることを望まなくった。だから力は消えてしまった。

 それなら勝者は誰もいないってことだ。


「進化は行き詰まっているかもしれないけど……もうちょっとだけ、オレ達のことを見守っていてよ。ね、神様?」

『ううむ……まぁ、力を失ってしまった以上仕方ないかのぅ……』


 きっとまた、人間には進化が必要になる時が来る。だけどそれを、争って決める必要なんてない。

 オレはみんなで、全員が納得出来る道を決めたい。

 それはとっても難しいことかもしれない。

 でも、諦めたくない。信じ抜きたい。成し遂げたいんだ。

 





☆キャラクター図鑑・11

恵殿えでん神社の神様(真名:世碑呂徒せひろと

 人間の進化を見守ってきた、正真正銘の神様。人間の進化を促すため、新しい神様を子供達の中から選ぼうとした。

 偉そうなことを言うが、その中身はいい加減。責任は基本取らない主義。

 普段は石版の姿で現れるが、真の姿は不明であり、本体がどこにいるのかは分からない。

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