第九章:強襲!?最凶の神様候補!?
9-1
特訓を始めてから一週間くらいたった。
あれから『マルチタスク』という戦い方を練習していて、カンブさんに負けないくらいに強くなった。
作り出した盾や工具は壊れにくくなってきたし、もし壊れても少しずつ直すことが出来る。
そう簡単にやられなくなってきたんだ。いっぱい特訓してきたかいがある。
でも、その代わり毎日へとへとだ。家に帰ってきたら、すぐにグースカ眠っちゃうくらい。
それと、大きな問題が一つある。
あと四、五日で夏休みも終わるのに、宿題がまだ終わっていないんだ。本当は早めにやらないといけないんだけど、疲れて勉強どころじゃない。ちなみに、カンブさんとメブキさんはとっくに終わらせているそうだ。一体、いつやっているんだろう。すごいなぁ。
「あとはギンガだけなんだよねー……」
オレの親友のギンガは、きっと終わっていないと思う。毎年夏休みの宿題を残していて、最終日に一気にやる仲間なんだ。全然いいことじゃないけど。
でもそろそろ、本腰を入れて宿題をしないと、始業式までに間に合わなくなっちゃいそうだ。どこかで、勉強をする時間を作らないといけないなぁ。
……まぁ、今日も特訓なんだけどね。
オレは今まさに、特訓の場所――広い空き地に走って向かっているところだ。
朝の早い時間から、体力作り&技の練習。熱中症には気を付けて取り組もう、ということで、みんなで早起きをする。
なのに、オレは寝坊してしまった。
早く行かないと、特訓の時間に遅れてしまう。
オレは小走りで、朝の街並みを走り抜ける。まだ早い時間なので、人は全然いない。
と思ったその時、
「……――えっ」
道の向こうから、巨大なオーラがやってくる。人影は見えないのに、オーラだけが遠くからでも分かる。
とんでもない量を出しているんだ。
そのオーラの色は紫……ということは、神様候補最後の一人。素手で戦うあの人が、こっちに向かってきているんだ。
「……ジャ、『ジャンク組成ダー』!」
オレはじっくり時間をかけて、両手に盾を作る。普段の即席物とは違う、ガチガチに硬い盾だ。
道の向こうに人影が、段々と見えてくる。
ゆったりと歩いてくる、フードを被ったお兄さん。腰に巻いた銀色のチェーンが、ギラギラと輝いている。
ひゅんっ。
突然、お兄さんの姿が消えた。
「フンッ」
次の瞬間、お兄さんは目の前。
ボッ!
拳が風を切り、重たいパンチが繰り出される!
――ズガンッ!
「がっ!?」
とっさに両腕の盾をバッテン印に構えて、パンチを防いだ。けど、盾はすでに半壊状態だ。
時間をかけて作ったのに、一撃でこのダメージ。やっぱりこの人、けた違いに強い!
「でも……負けられない……『ジャンク組成ダー』!」
オレは右手にハンマーを作り出す。でも、これは武器にするためじゃない。左手で作り直している盾から、目をそらすために持つんだ。
「どう、
「……」
しかし、紫色のオーラの人は全然気にしていない。それにフードで目元が隠れていて、どこを見ているのか分からない。
「なっ……なんであなたは戦うんですか!?」
「……」
「そんなに神様になりたいんですか!?」
「……」
「それとも、叶えたい願いがあるんですか!?」
「……」
「いや、ちょっと何か答えて下さいよ……」
「……」
何を聞いても、答えは全て無言だ。反応がなさ過ぎて悲しくなる。せめてどんな理由で戦っているかくらい、教えてくれたっていいのに。
でも、時間稼ぎにはちょうどよかった。おかげで左手の盾の修理は完了だ。さっきよりも硬く作ることが出来た。
「……フッ!」
紫色のオーラの人が、今度は回し蹴りを放つ。その一撃が、オレのハンマーに直撃。粉々に砕いていってしまう。
「ぐぅっ!?」
急いで作ったはりぼてなので、簡単に壊されてしまった。でも、オレにはまだ盾がある。今のうちに、右腕にも新しい武器を作ろう。
「ハッ、フンッ!」
「ちょっ、うわっ!?」
だけど息つく暇もなく、次々にパンチとキックが飛んでくる!
オレは攻撃を受け流し、避けられないものは左手の盾で防ぐ。だけど、それでも限界がある。止めきれない……!
「がはっ、ぐぅっ!?」
防ぎそこねて、ひざ蹴りが脇腹にめり込んだ。お腹の中がひっくり返るような、気持ち悪さが込み上げてきた。
「ヌンッ」
ガスッ!
よろけたオレに、更にパンチ一発。身をよじって避けようとするけど、間に合わない。左肩を殴られてしまった。
「ぐぅぅっ……!」
オレはアスファルトの上に倒れ込む。痛みをこらえて立ち上がろうとしたその時、
――ドスンッ!
「ぐはっ!?」
お腹のど真ん中に、きれいに蹴りが入った。まるでサッカーボールを蹴るみたいな一撃。オレは誰かの家の
「げほっ……はぁ……はぁ……」
一発一発が、ただのパンチやキックじゃない。ほとんど必殺技のレベルだ。ピーシィさんとサラちゃんを、一撃で倒しただけある。まだ無事な自分を褒めたいくらいだ。
「う……ぐ……」
よろよろと立ち上がるけど、すぐにひざから崩れ落ちてしまう。家の塀によっかかっていないとダメなくらい、オレの体はボロボロだった。
「これは……ホントに、負けかも……」
紫のオーラの人は、もう目の前にいる。このまま攻撃を食らったら、オレの神の力が奪われてしまう。
振り上げられた拳。オレを倒すためのパンチ。
もう、ダメだ……!
「『オレノイデス・ミメティクス』!」
ガギィンッ!
拳と岩がぶつかり、小石が飛び散る。
パンチはオレに当たらず、突然出てきた岩を殴っていた。
その理由はカンブさんがやってきたから。岩のシャッターを作り出して、オレをパンチから守ってくれたんだ。
「間に合ってよかった……!」
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