2-4


 ギャリギャリギャリッ!

 キャタピラが激しく回転して、ショベルカーがオレの方へ突っ込んでくる。


「それなら……『ジャンク組成ダー』!」


 両足に金属製のローラースケートを作り出す。これまたつぎはぎでボルトが丸見えだけど、簡単な仕組みなので大丈夫……だと思う。


「うぉっと!」


 空き地の中を、ローラー付きで走り出す。重機より小回りがきくので、攻撃も避けやすい。これならいけそうだ。

 オレはダンプカーの後ろに身を隠した。


「はぁ、はぁ……。どうしたら話を聞いてくれるんだろう……」


 ピーシィさんも新しい神様を目指す一人。だけどサイさんみたいに、他の人を見下している。そんな人が神様になったら大変だ。オレが説得しないと……。

 でも、すぐ攻撃してくるのが問題なんだよなぁ。


 ブルルゥン……。

 突然、ダンプカーが震えた。エンジンがかかったんだ。


『/* 処理速度を更新します*/』


 機械音声がダンプカーから聞こえると、灰色のオーラがぶわっと吹き出た。ピーシィさんが、重機の乗り換えをしたみたいだ。


「やばい、逃げないとっ!」

『=XLOOKUP(機組屋カイタ,移動範囲:建設予定地,方角:速度)』


 オレが走り出すと、ダンプカーが計算を開始。すぐにオレの行き先を割り出して発進する。


「マジかよ……!」

『Re:=XLOOKUP』


 すぐ逆方向に走り始めたけど、ダンプカーは計算し直して先回りしてくる。計算する時間が一瞬過ぎて、すぐ追いつかれてしまう。


『人間の処理速度<人間+AIの処理速度

 /*hence...だから*/

 ワタシの理想の世界=Perfectかんぺきなideaアイディア

「完璧って……」


 確かに、人間とAIを足したら怖いものなしだと思う。だけど機械と一つになったら、誤作動することもあると思う。ミスが絶対ない、なんてことはあり得ないんだから。


「――そうか、その手があった!」


 はっ、と気付いた。

 AIを組み込み機械と合体したピーシィさんにも、実は大きな弱点がある。それはとても単純で、よくあることだ。


「『ジャンク組成ダー』!」


 右腕に作るのは、ハンドルを回して使う発電機。防災用の懐中電灯と同じ作りだ。でもその先端は配線がむき出しで危ない。


「うおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」


 ハンドルを握って、全力でぐるぐる回す!

 バチバチッ、と電気が作られて火花を散らす!


「いっけえええええええええええええええっ!」


 そして、溜まった電気をダンプカーに向けて放つ!

 雷みたいな光が、灰色のオーラを消し飛ばす!


clapゴロゴロ/*thunderサンダー!?*/clapバリバリ/*lightningライトニング!?*/clapビカビカ/*blackoutていでん!?*/kaboooooooomズドーン!』


 機械にとって雷は大敵。近くに落ちれば、真っ暗停電だ。特にたくさんのデータを管理するコンピュータに落ちたら大変。


「どんなに機械と合体して強くなっても、電気に弱いのは変わらないよねっ!」


 データだけになっても、入っているコンピュータが動かないとダメ。それがピーシィさんの弱点なんだ。


「うぐぐっ……これはさすがに、hardつらいですネ……!」


 ダンプカーから出てきたピーシィさん。その体は『0』と『1』の数字から、元の人の姿に戻っていた。


I am surprised.おどろきです……今日のところは、一旦退かせてもらいますヨ……!」


 ピーシィさんはまだ体がしびれているみたい。ヨロヨロしながら、建設現場から去っていった。

 やっぱり、話は聞いてもらえなかった。





 家に帰ってきて一安心。

 今日は立て続けに二回もバトルがあった。おかげで全身くたくただ。

 オレはベッドに寝転がる。ふかふかの布団が心地いい。


「はぁ……。みんな、話を聞いてくれないなぁ」


 シズクさんもピーシィさんも、戦いに積極的だ。それにメブキさんも……。みんなそれぞれ考えが違って、けんかになってしまうんだ。

 どうしてすぐバトルになっちゃうんだろう。戦っても傷ついて、辛いだけなのに。みんな、そんなに神様になりたいんだ……。


「……うん。なりたいよね、普通」


 自分が思う、最高の世界に進化出来るんだもの。叶えたくなる気持ちは分かる。でもそれは、争った先にある。

 神様になれるのはたった一人。だからみんな必死で戦っているんだ。


「どうしたら戦いを止められるんだろう……」


 進化の方向性を探す戦いだ、って神様は言っていた。でも、オレ達は人間だ。話し合うことが出来る。だから候補者のみんなで、進化のことを話し合えばいい。

 たったそれだけのことなのに、何でこんなに難しいんだろう。

 ああ、戦わずに済む方法が知りたい。






☆キャラクター図鑑・2

草持くさもち芽吹メブキ(七番目の神様候補)

 市立箱舟南小学校に通う、十歳の女子。四月の初めに転校してきたばかりで、クラスの子とは打ち解けていない。成績は優秀で曲がったことをしない信条。人間は自然と共にあるべきと考えていて、環境を汚すことを嫌う。特に工業関係のことを『ゴミを増やしている』と思っており、カイタのことを敵視している。

 アイテム:エメラルドのヘアピン

 能力名:『草木の気持ちグリーン・ブルーム』…草木を自在に生やして操ることが出来る。生えたまま長時間維持することは出来ない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る