第二章:激戦!バトルがいっぱいの一日!

2-1


 昨日は色々あり過ぎた。

 いきなり神様な石版に会って、次の神様候補にさせられて。超能力者のサイさんに襲われたと思ったら、メブキさんが倒しちゃって。しかもメブキさん、オレのことを敵扱いしてくるし。あの調子だと、今も他の候補者と戦っているのだろうか。


「戦いなんて、してほしくないんだけどなぁ……」


 夏休み初日。街には休日を楽しむ子供でいっぱいだ。もしかしたら、この中にも神様候補がいるのかもしれない……と思って目をらすけど、オーラが出ている子はいなかった。


「うんうん、平和が一番だよね」


 オレは争いごとが嫌いだ。テレビのヒーロー物は好きだけど、現実の戦いは好きじゃない。けんかなんてしたって、誰も気分が良くならないんだもの。


「おぅコラ、このクソガキ。てめぇ何様だ!」


 と、思ったそばから野太いがなり声が聞こえた。すごく怒っているし、汚い言葉だ。嫌な気分になる。

 声は路地裏の方から聞こえてくる。日当たりの悪い、薄暗い場所だ。

 オレは何事かと思って、そ~っと近づいてみる。するとそこには、


「ゴミはちゃんと捨てなさいって言っているの。聞こえなかった?」

「あぁん!?オレ様に指図すんのか、オォン!?」


 メブキさんがいた。しかも口げんかをしている相手は、高校生くらいの不良男子だ。体格差が大きいのに、全然怖がらずに意見していた。


「空き缶の一つや二つ、大して変わらねーんだよ!」

「そうやって捨てていくから、どんどん地球が汚れていくのよ」

「ンなこと、オレ様が知ったことか!」


 ああ、マズイ。不良男子がイライラしているみたい。このままじゃ、メブキさんが危ない。殴られちゃいそう。

 でも、メブキさんは神の力――植物を操る技を使わない。どうして?


「あたしの話が分からないなんて、あなた本当に高校生なのかしら?」

「てめぇ、ぶん殴ってやるっ!」


 不良男子が拳を振り上げる!


 ――ファンファンファン……。


「げっ、パトカーかよ!くそっ!」


 だけど不良男子は、サイレン音を聞いて急いで逃げ出していった。

 でも、この音は偽物にせもの。パトカーは来ていない。オレの『ジャンク組成ダー』で作った、即席のスピーカーが出した音なんだよね。


「何よ。昨日の借りでも返しに来たの?」

「別にそういう訳じゃないけど……。っていうか、昨日みたいに植物を出せば勝てたのに、どうしてしなかったんだ?」

「この力は神様になるためのもの。普通の人を倒すためにあるんじゃないのよ?」


 意外なことに、メブキさんはちゃんと考えていたみたいだ。あんなに怖い顔をして戦っていたから、てっきり誰でもボコボコにしちゃうかと思っていた。


「よかった。メブキさんも少しは平和に――」

「『海・友マリンメイト―メガマウス―』」


 目の前に突然、巨大なサメが姿を現した。目玉をギョロギョロさせて、大きな口をあんぐり開けている。


「危ない!」

「うぉわっ!?」


 サメが突撃してくる!でもメブキさんが突き飛ばしてくれたので、なんとか避けることが出来た。


「一体何なんだ……!?」


 サメは空中を泳いで、浮いている大きな泡の中に入っていく。どうやらそこが住処すみかみたいだ。


「その子はメガマウス。ボクの友達」


 そこにやってきたのは、中学生くらいのお姉さん。ボブカットヘアーで、海の生物の図鑑を読んでいた。


「ボクは深海ふかみシズク。君達と同じ、神の候補の一人」


 そう名乗ったお姉さん――シズクさんの首には金色のペンダント。神の力が宿やどったアクセサリーだ。それに体からは青いオーラ……あのサメはシズクさんが呼び出したんだ。


「つまり、あたしの敵ってことね」

「うん。そうなる」


 シズクさんは全然表情を崩さないまま答えている。

 このピリピリした感じ。またバトルが始まりそうだ。


「『草木の気持ちグリーン・ブルーム』!」


 泡の中のサメに、ツタ植物がいっぱい絡みつく。大きな体が相手なのに、あっという間に包み込んで倒してしまう。

 サメは細かい泡になって消えていった。


「『海・友マリンメイト―デヅルモヅル―』」


 シズクさんが名前を呼ぶと、ぽんっと泡が空中に浮かんだ。中にいるのはモジャモジャしたヒトデ。その一本一本がうねうね動いていて、正直気持ち悪い。


「やっちゃって」

「なっ!?」


 そのモジャモジャヒトデが、無数に枝分かれした腕をメブキさんへと伸ばす。さっきのお返しに絡め取るつもりだ。


「させない!『草木の気持ちグリーン・ブルーム』!」


 メブキさんは対抗して鋭い木の枝を生やす。それを手に取ると、迫り来るうねうね触手をなぎ払う!


「やるね」

「植物の力、見せてあげるわ!」


 二人はにらみ合っている。戦いはもう、止まりそうにない。


「捕まえて」

「二度も同じ手は食らわないわよ!」


 触手と木の枝がぶつかり合う。すごいスピードで襲いかかるうねうねの中を、メブキさんは駆け抜けていく!

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