1-4
「どうしてメブキさんがここに!?」と聞こうと思ったけど、オレはその言葉を飲み込んだ。
メブキさんの体から緑色のオーラが出ていることに気付いたからだ。それに頭の金色のヘアピンには、ブレスレットと同じ模様が……メブキさんも神様候補なんだ。
「わたくしの邪魔をするとは、どういうつもりですの?」
「あたしはただ、あなたの考えが気に入らない。それだけよ」
メブキさんは、サイさんに真っ向から立ち向かっている。
「そうですか。それなら倒すだけですわ!『
「『
小石が宙に浮いて、メブキさんへ一直線!それに対してメブキさんは、地面から木を生やして全部防いだ!
「植物を使う能力……それなら『
サイさんは木々を焼き払おうと火炎放射!
「なめないで。『
今度は背の高い草が、辺り一面に一気に生える。メブキさんの姿は草の中に消えて、一瞬で見えなくなる。この量では焼くのも一苦労だろう。
「かくれんぼってことかしら?
サイさんは目を閉じる。もしかして透視……いや、
「見えた!『
サイさんはどこからか鉄パイプを取り寄せて構える。次の瞬間、そこへ向かってメブキさんの跳び蹴りが飛んでくる!
「ふふ、見えていましたわ……!」
「いい気にならないでよっ!」
ポニーテールとスカートを揺らして、メブキさんは空中で一回転。そして
「きゃっ!?」
転んだサイさんは鉄パイプを落としてしまう。メブキさんはその一瞬を見逃さず、鉄パイプを拾い上げる。そして思いっきり遠くへ投げ飛ばした。
「『
「『
勢いよく生えるツタ植物と念動力がぶつかり合う。同じくらいの力なのか、バチバチと
「負・け・ま・せ・ん・わ~~~っ!」
「あ・た・し・も・よ~~~っ!」
バチンッ!
力が打ち消し合って、衝撃波が弾ける!
「きゃあっ!?」
「くぅっ……!」
サイさんは吹き飛ばされて転がり、メブキさんは何とか踏みとどまっている。
二人とも、肩で息をしている。
それなのに戦いをやめそうにない。
「『
倒れたままサイさんは瞬間移動。現れる先はメブキさんの真上だ!
「『
「うぐっ!?」
頭上からの念動力で、メブキさんは地面に押さえ付けられる。その上からサイさんはのしかかって馬乗りになった。
「とりましたわっ!」
「まだよ、『
うつぶせで動きを封じられているメブキさんは、大量の葉っぱを
「飛ばされっ……!」
ふわりとサイさんの体が浮いた。その瞬間、メブキさんはするりと抜け出す。更に葉っぱで前が見えていないサイさんに向けて手をかざし、
「とどめよ、『
無数の植物の種を、マシンガンみたいに発射!
「きゃあああああああああっ!!」
種は全弾命中。
サイさんの体が宙を舞って、どさりと倒れた。
「勝負あったわね」
「そ、そんな……わたくしが、負けるなんて……」
制服がボロボロで、ぐったり倒れているサイさん。黄色のオーラはもう出ていない。力を使い切ってしまったみたいだ。
よく見ると、サイさんのアンクレットにひびが入っている。
「神の力、もらうわね」
メブキさんがアンクレットに触ると、パキンっと割れてしまう。するとアンクレットは黄色い光になり、メブキさんのヘアピンに吸い込まれていった。今のが神の力を集めたってことになるみたい。身につけているアイテムが壊れると、力を失ってしまうようだ。
「もうあなたに用はないわ。どこへでも行きなさい」
「小学生のくせに……生意気……ですわっ!」
「進化の争いに先輩も後輩もないのよ」
「うぅっ……!」
反論出来ないまま、ボロボロなサイさんは逃げていった。
年上相手にバトルも口げんかも勝利した。オレと同い年なのに、なんて強いんだ。
「あ、ありがとうメブキさん」
メブキさんと一緒なら、誰が相手でも大丈夫。この戦いを止めて、平和に解決出来るはず……!
「助けたつもりはないわ」
「え……」
と、思ったのにピシリと断られてしまった。
「あたしは自然と共生する道こそ、人間に必要だと思っているの。あなたのゴミ作りとは正反対ね」
「それって、メブキさんもこの戦いをする気ってこと……?」
「当たり前じゃない。自然を守れるなら、あたしは喜んで戦うわ」
メブキさんは次の神様になろうとしている。このバトルに積極的なんだ。それにオレの物作りもよく思っていないみたい……。
「じゃあ、オレのことも倒すのか……?」
「ええ、もちろん」
ウソでしょ!?
このまま二回戦目に突入するの!?
「安心して。手負いを襲うのは、あたしの主義に反するから」
ああ、よかった。ここでやられちゃうかと思ったよ。
「そ、そうか。なら――」
「次に会う時は、容赦なく倒すけどね」
でも、メブキさんはそう言い切った。
鋭い目が、いつもよりもギラギラと光っている気がした。
☆キャラクター図鑑・1
・
市立箱舟南小学校に通う、十歳の男子。運動はそこそこ、勉強は苦手。物作りが大好きで、簡単な仕組みの機械なら自力で作れる。けんかが嫌いで、口論も好まない。
神様候補になってしまったが、子供同士で争うのはおかしいと考えて、戦いを止めようと
アイテム:クリスタルのブレスレット
能力名:『ジャンク
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