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 「どうしてメブキさんがここに!?」と聞こうと思ったけど、オレはその言葉を飲み込んだ。

 メブキさんの体から緑色のオーラが出ていることに気付いたからだ。それに頭の金色のヘアピンには、ブレスレットと同じ模様が……メブキさんも神様候補なんだ。


「わたくしの邪魔をするとは、どういうつもりですの?」

「あたしはただ、あなたの考えが気に入らない。それだけよ」


 メブキさんは、サイさんに真っ向から立ち向かっている。


「そうですか。それなら倒すだけですわ!『PSIテレキネシス』!」

「『草木の気持ちグリーン・ブルーム』!」


 小石が宙に浮いて、メブキさんへ一直線!それに対してメブキさんは、地面から木を生やして全部防いだ!


「植物を使う能力……それなら『PSIパイロキネシス』!」


 サイさんは木々を焼き払おうと火炎放射!


「なめないで。『草木の気持ちグリーン・ブルーム』!」


 今度は背の高い草が、辺り一面に一気に生える。メブキさんの姿は草の中に消えて、一瞬で見えなくなる。この量では焼くのも一苦労だろう。


「かくれんぼってことかしら?姑息こそくだわ……『PSIクリアボヤンス』!」


 サイさんは目を閉じる。もしかして透視……いや、はるか遠くや隠れているものを見ることが出来る、千里眼せんりがんという能力だ。


「見えた!『PSIアポート』!」


 サイさんはどこからか鉄パイプを取り寄せて構える。次の瞬間、そこへ向かってメブキさんの跳び蹴りが飛んでくる!


「ふふ、見えていましたわ……!」

「いい気にならないでよっ!」


 ポニーテールとスカートを揺らして、メブキさんは空中で一回転。そして華麗かれいに着地。そのすぐ後に足払いを繰り出す!


「きゃっ!?」


 転んだサイさんは鉄パイプを落としてしまう。メブキさんはその一瞬を見逃さず、鉄パイプを拾い上げる。そして思いっきり遠くへ投げ飛ばした。 


「『草木の気持ちグリーン・ブルーム』!」

「『PSIサイコキネシス』!」


 勢いよく生えるツタ植物と念動力がぶつかり合う。同じくらいの力なのか、バチバチとり合っていている。


「負・け・ま・せ・ん・わ~~~っ!」

「あ・た・し・も・よ~~~っ!」


 バチンッ!

 力が打ち消し合って、衝撃波が弾ける!


「きゃあっ!?」

「くぅっ……!」


 サイさんは吹き飛ばされて転がり、メブキさんは何とか踏みとどまっている。

 二人とも、肩で息をしている。

 それなのに戦いをやめそうにない。


「『PSIテレポーテーション』!」


 倒れたままサイさんは瞬間移動。現れる先はメブキさんの真上だ!


「『PSIサイコキネシス』!」

「うぐっ!?」


 頭上からの念動力で、メブキさんは地面に押さえ付けられる。その上からサイさんはのしかかって馬乗りになった。


「とりましたわっ!」

「まだよ、『草木の気持ちグリーン・ブルーム』!」


 うつぶせで動きを封じられているメブキさんは、大量の葉っぱを吹雪ふぶかせた。


「飛ばされっ……!」


 ふわりとサイさんの体が浮いた。その瞬間、メブキさんはするりと抜け出す。更に葉っぱで前が見えていないサイさんに向けて手をかざし、


「とどめよ、『草木の気持ちグリーン・ブルーム』!」


 無数の植物の種を、マシンガンみたいに発射!


「きゃあああああああああっ!!」


 種は全弾命中。

 サイさんの体が宙を舞って、どさりと倒れた。


「勝負あったわね」

「そ、そんな……わたくしが、負けるなんて……」


 制服がボロボロで、ぐったり倒れているサイさん。黄色のオーラはもう出ていない。力を使い切ってしまったみたいだ。

 よく見ると、サイさんのアンクレットにひびが入っている。


「神の力、もらうわね」


 メブキさんがアンクレットに触ると、パキンっと割れてしまう。するとアンクレットは黄色い光になり、メブキさんのヘアピンに吸い込まれていった。今のが神の力を集めたってことになるみたい。身につけているアイテムが壊れると、力を失ってしまうようだ。


「もうあなたに用はないわ。どこへでも行きなさい」

「小学生のくせに……生意気……ですわっ!」

「進化の争いに先輩も後輩もないのよ」

「うぅっ……!」


 反論出来ないまま、ボロボロなサイさんは逃げていった。

 年上相手にバトルも口げんかも勝利した。オレと同い年なのに、なんて強いんだ。


「あ、ありがとうメブキさん」


 メブキさんと一緒なら、誰が相手でも大丈夫。この戦いを止めて、平和に解決出来るはず……!


「助けたつもりはないわ」

「え……」


 と、思ったのにピシリと断られてしまった。


「あたしは自然と共生する道こそ、人間に必要だと思っているの。あなたのゴミ作りとは正反対ね」

「それって、メブキさんもこの戦いをする気ってこと……?」

「当たり前じゃない。自然を守れるなら、あたしは喜んで戦うわ」


 メブキさんは次の神様になろうとしている。このバトルに積極的なんだ。それにオレの物作りもよく思っていないみたい……。


「じゃあ、オレのことも倒すのか……?」

「ええ、もちろん」


 ウソでしょ!?

 このまま二回戦目に突入するの!?


「安心して。手負いを襲うのは、あたしの主義に反するから」


 ああ、よかった。ここでやられちゃうかと思ったよ。


「そ、そうか。なら――」

「次に会う時は、容赦なく倒すけどね」


 でも、メブキさんはそう言い切った。

 鋭い目が、いつもよりもギラギラと光っている気がした。








☆キャラクター図鑑・1

機組屋きぐみや快汰カイタ(十番目の神様候補)

 市立箱舟南小学校に通う、十歳の男子。運動はそこそこ、勉強は苦手。物作りが大好きで、簡単な仕組みの機械なら自力で作れる。けんかが嫌いで、口論も好まない。

 神様候補になってしまったが、子供同士で争うのはおかしいと考えて、戦いを止めようと奔走ほんそうする。

 アイテム:クリスタルのブレスレット

 能力名:『ジャンク組成そせいダー』…即席で武器や防具などの物作りが出来る。急いで作っているため、配線や継ぎ目が丸見えになるのが弱点。

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