第2話 アミちゃん、町?へ行く

「アミちゃん、今日は町に一緒に行かんね?」

「ん?町┅┅おお、行く行くう」

 悪魔の少女アミちゃんが村に住み始めて一ヶ月が過ぎた。夜の魔力増幅の儀式がきつくて、このところ昼間は老夫婦の家でだらだら過ごしているアミちゃんだった。


 シゲユキ爺ちゃんとヨシエ婆ちゃんは、一週間に一度、軽トラックで買い出しに出かける。今日はその日にたまたまアミちゃんが居合わせたというわけだった。

「ええっと、服は┅┅うん、これでいいかな┅┅」

 スマホでこの世界の人間についていろいろ調べたアミちゃんは、八歳くらいの女の子がどんな服を着ているか、だいたい分かっていた。二組の老夫婦から子供のお下がりの服をたくさんもらっていたアミちゃんは、いくつかの組み合わせの中からジーパンと白いブラウスにオレンジ色のカーディガンというコーデにした。


「まあ、可愛かねえ┅┅お人形さんのごたるよ」

 ヨシエ婆ちゃんは、まるで自分が産んだかのように、自慢げにアミちゃんを膝に抱いて軽トラックの助手席に乗った。アミちゃんもまんざらではなく、しきりに自分の髪に手ぐしを入れながらややにやけた顔をしていた。


 シゲユキ爺ちゃんは割と過激な運転をする。誰も通らないことを良いことに、狭く曲がりくねった山道を五十キロ平均のスピードで飛ばした。婆ちゃんはもう慣れっこだったが、アミちゃんは途中で酔ってしまい、道端の草むらにかがみ込んだ。


「あらあ、どこの外人さんの子ね?可愛かねえ┅┅」

 近くの町は、町と言っても県道沿いに商店街が百メートルほど続いているだけだった。ただ、割と大きなスーパーがあったので、たいていのものはここで買うことができた。

「外人?」

「ああ、外国人のことたい┅┅ふふ┅┅アミちゃんは、ほら金髪に青か目だけんね」

 そのとき、初めてアミちゃんは周囲に自分と同じ髪や目の色をした人間がいないことに気づいた。村では白髪の爺ちゃん婆ちゃんしかいなかったので、意識したことがなかったのだ。


「爺ちゃんたち、婆ちゃんたち、話がある┅┅」

 町から帰った次の日、アミちゃんは一大決心をして四人の老人たちを集めた。

「うんうん、なんね?」

「なんか欲しかもんがあるなら、買うてやるけん」

「なんでん言うてごらん」

「ふがふが┅┅」

 二組の老夫婦は可愛くて仕方が無い孫を見るようにアミちゃんを見ていた。


「┅┅あの、実は┅┅実は、わたし┅┅」

「うんうん」

「わたしは、悪魔なのっ!」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る