第5話   和解と新たな生活

 部屋に戻って、傷を覗き込み、「大した事ない、血も止まってるし、消毒して絆創膏で大丈夫だろう。」ほっとした。

 リオは、「じゃお風呂だよ、一緒に、本当に興奮しちゃった。ほら濡れてるし。」ニコニコしながら、哲也の服を脱がし始めた。一緒に浴室に入って、男の物を、離さない、

「アレ、どうしたのかなぁ、今日大きくなんないの?じゃ、リオ頑張るから大丈夫だよ!」

 哲也は、「こんな事、してる場合じゃないよ」と言いながらも、反応していた。

 ベットに入って、いつものように体を求め合った。

 「今日は、やっぱすごく気持ち良かった、いつもだけど、それより興奮しちゃった。」リオは布団で顔を隠した。

 翌日、店から連絡があり、もう来ないでくれと言われたらしく、「どうしよう、てっちゃん」と尋ねた。

 哲也は、分かっていた、必ずこうなると。

進藤の戦略だ、もうどの風俗店でも、働く事は出来なくなったのだ。さすがに、手回しが早いな、たぶん、この地域の店は、全てダメだろう。すでに、関東、関西、九州も手が回っているかもなぁと考えながら、リオの顔を見ていた。そして、リオ「よく聞いて、もう働けないよ、進藤だよ」たぶん、アパレル関係の仕事もできないだろう。

 リオは「解った、貯金あるから大丈夫。」

しばらくは、心配ない、何か考えようと思った。

 確かに、リオにはかなりの、貯金があった、

3年や4年は、二人で生活出来る。しかし、それ以上は無理だ。俺の年金じゃあとても生活出来ないだろう。

 哲也は、状況を話し、リオにわかるように話した。「だから、進藤に連絡して謝って面倒見てもらってくれ、俺は、大丈夫だよ、一人なら年金で生活出来るから」数ヶ月にわたって、同じ話しの繰り返しだった。

 リオは、「大丈夫、必ず、仕事探すから。」

さすがに、リオもわかっていた。無駄な努力だって事を。しかし、祖父の進藤には、謝りたくなかった。謝らなけば、ならないことはしていない、むしろ、進藤の方が、償わなくてはならないはずであった。リオの母親に、対してだ。

 もちろん、その母親からも、リオは責められていた。哲也の事でだ。普段は、仲のいい親子だが、哲也の事となると、何かに取り憑かれた様に、かたくなに誰の忠告も聞かない。父親とも、男としても、違う優しさ、言葉で話せないものを感じているからだった。

 何もすることない二人だったが、リオは毎日楽しかった。テレビを見て、くだらない話し、

哲也の笑顔そんな日々だったが、もちろん長く続く訳がない。

 毎度の話しになる、ある時、哲也が苦しみ出した、救急車を呼び、隊員と話しているのは、哲也だった。「意識は、クリアだ、ただ痛みだけだ、心臓だよ、病院に早く、ニトロ用意してもらってくれ、楽になるから。」

リオは、泣きながら、救急車に乗り、病院に行った。

 「先生、ありがとう、楽になった。帰るよ。リオ帰ろう。」

 リオは、唖然として、「入院して、治療しなきゃダメだよ。」必死に訴えた。

 「帰ったらちゃんと話す、とにかく帰ろう」

こんな、哲也の頑固さは、始めてだった。

家に帰ると、リオは「なんで、治療しないの?」

興奮している。哲也は、「まぁ、落ち着いてくれ、ちゃんと話すから。」「コーヒー飲みたいなぁ、入れてくれるか?」何事もなかったかのよう言った。

 コーヒーを飲みながら哲也は、話し出した。

「リオ、みての通り病気だよ。治らないよ、治療出来ないんだ、痛みを取る以外ないんだ。」

 突然の話しに、リオは呆然としながら、後の話しは、まったく入って来なかった。

 そして、哲也がいなくなる、考えただけで

 涙が出てきた、声も出せない。

全身の力が抜けてしまう。パニックになり、思考が止まる、息もできないぐらいだ。

 そんな、哲也がいない世界なんて考えられない。

 かなりの時間沈黙が続き、リオは、哲也が見た事のない様な厳しい顔で、哲也に詰め寄って言う、「どうして、身体の事言わないの!」

哲也は、困ってしまい黙り込んで、静かに答えた。

「心臓だぞ、移植以外方法は無いから」

「どうしてって、話したってどうしようもないだろう、最後まで知らずにいて欲しかったけどな」哲也は言った。

 リオが、いくらわがままでも、どうにもならない。ふと思った、「彼のためなら、進藤に頼もう、和解の条件にしよう。」心に固く誓った。すぐ、進藤に連絡した、進藤家の条件を話し合うためにだ。

 次の日、さっそく進藤の部屋に向かった。

進藤の都合など、すべて無視して。リオは、すぐに、確認した、約束が全て実行された時にと、次々と条件を出した。そして最後にこれだけと、言った。交渉はしないと。

 進藤は、「バカな、結婚だと、何を考えてるだ。」しかし、数ヶ月ぶりに連絡があり、籍に入ってもいいと言ってきた。奴も先がないだろう、しょうがない、リオの条件を受け入れた。

 リオこと、本当の名前は、由香だ。

孫娘のため、すぐ用意させ、もう準備がてきた。彼女の条件を確認実行して行った。

 先ず、九条の治療だった、アメリカでの心臓移植。すぐに実行された、費用は、一億、次に、

祖父母の、高級有料老人ホームへの入所だった。そして、母親と弟の生活費と仕事の確保だった。九条が無事に、手術が成功してアメリカでリハビリ中にリオは嬉しくて、アメリカに飛んだ。日本に戻れば進藤に、邪魔されるのは、わかっているからだった。

 約束通り、九条は元気になり、そのまま、アメリカで結婚した。

 一方で進藤は、末期ガンで、病院に入院していた。全身に転移して、生きているのが奇跡的な事らしい。ただ、リオこと、由香がアメリカから戻るのを、待っていた。

 由香の、本当の父親は、9.11の犠牲者で亡くなっていた。リオは、進藤から聞かされていたが、顔も知らない人だ、なんとも思わなかったし、悲しみも湧かない。

 ただ、今は、進藤に感謝していた。一度は顔を出して、お礼しないと思っていた。

哲也は、完全に回復して、結婚生活も幸せだった。妊娠した為、帰国を遅らせる事にした。

 進藤との約束、籍を進藤の籍にした、手続きは、元弁護士の哲也が行った。

 日本の役所も、進藤の意向を受けてなんの問題もなく、履行された。

 由香は、アメリカで可愛い赤ちゃんを産んだ。

 そして、哲也に「もう一人欲しいなと、」と笑いながら言った。

 哲也は、「何を、バカなこと言ってる、俺がどうなってもいいのか」優しく頭を撫でた。

 由香は、「でも、体調もいいし、心臓も、問題ないって先生も言ってた。」赤ちゃん産んだばっかりなのに嬉しそに言った。

 赤ちゃんが、落ち着いた頃、三人で日本に戻った。

 進藤は、意識はあるが、もう数日だろうと言ってる。

 ひ孫には、会えた。

由香は、お礼を言ってひ孫の顔を見せた。

 数日後、安心した様子で、息を引き取った。




 



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