7体の叡智
20分程歩き、漸く辿り着いた管理棟。
しかし全然疲れない身体だ。
「この建物のテッペンに学長がいるんだな?」
『そのようですね。約束の時間より2時間程過ぎてしまいましたね』
俺のいた世界でいうエレベーターのような乗り物。
反重力装置というこの世界では当たり前にある代物で、自由に空を浮くことが出来るらしい。
文明人が発明した偉大な物の一つ。
最上階に着くと、小ぢんまりとしたドアが一つ。
このタイプは手をかざせば開くと思うんだけど、この世界での仕来りなんか知らないのでとりあえずノックをして入る。
「遅くなりました、えーっと……ヒロ博士の紹介で……」
「いらっしゃい。久々にドアをノックする音が聞こえて懐かしくなったよ」
こんなに凄い世界の凄い学長だから、さぞかし凄い人なのかなって思ってたけど……
小太りで背が今の俺よりも小さい、普通のオジさんだ。
「どうしたんだい?」
「もっとこう、凄い偉そうな人を想像してたんで、安心してました」
『ハル様、直球過ぎますよ? もっとオブラートに包まなければ。チビでデブ等と言っては失礼です』
「言ってないからな」
「ふふっ、ヒロから聞いてるよ。日本から来たんだって? 私も君と似た世界から来たんだ」
俺みたいな人はこの世界に結構いるのかな?
「少しずつこの世界を知るといい。どうだい? その身体とこの世界は」
「女子ってのが慣れないですね。この世界は……凄いとしか言いようが無いです。技術もモラルも活気も、俺のいた世界とは段違いっていうか……いるだけでワクワクしてます」
「ふふっ、そうだよね。今日はもう授業終わっちゃったし、明日からクラスに入っておいで。分からない事があったら、いつでもここに来なさい。アレが使えるんでしょ?」
アレ……
「シュンってやつですか?」
「そうそう。他の人は使えないから、人前では控えたほうが良いかもね。それと……」
「……?」
「なるべく一人にならないように。人気のない場所は特に気をつけて。オーベイ、頼んだよ」
『言われなくてもハル様は私がお守りします。それに私はサクラ。お忘れなく』
「春に桜……いい名前だね。とても懐かしい」
一人にならないように……
俺が女の子だからかな?
確かに、これだけ可愛いと狙われるよな。
「じゃ、また明日ね。ヒロに宜しく伝えといてね」
「了解です。サクラ、探検しようよ」
『私がご案内しますね。美味しいお菓子屋が敷地内にあるみたいですよ』
……
……
「ふふっ、いい子で良かったな。ヒロ」
◇
見たことの無いお菓子をたらふく食べてまったりしている。
気がつけば外は暗くなっていた。
『ハル様、そろそろ帰りましょう』
「そうだな。せっかくだし歩いて帰ってもいい?」
『…………早いほうがいいのかもしれませんね。ではこちらから帰りましょう』
◇
気をつけて、なんて言う割には人気のない暗い夜道を案内される。
ハルちゃん襲われちゃうよ?
「なぁサクラ、なんでこんな所……」
その瞬間、目の前で轟音と共に地面から煙が立ち込めた。
爆発……違う。これは……
これは、空から人が降ってきたんだ。
「お、おい……なんだよこれ……」
『ハル様、この世界は7つの地区に分かれています。それぞれの地区が威信をかけ創り上げたアンドロイドが7体……そして目の前のアレはヤマト地区が誇る叡智、メールクリオルスです』
「…………えっ?」
【目標発見。捕獲開始】
『ハル様、戦闘準備です。初陣、ビシッと決めちゃいましょう!』
「えっ? なにコレ? バトル物なの?」
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