第七話 軍事演習そして帰還

荒野 ユートside


「こ、これは……」

そう言ったのは国王陛下だ。そのほかにも新しく任命された騎士団担当、近衛団担当、その他の担当の大臣も目を見開いている。

観客席の左前には10式戦車部隊が並んでいる。

「では、これから演習を行います」

俺はそう言って、通信機で開始の合図を出した。

すぐに観客席の左前から10式戦車が走り出し、射撃位置についた。

-こちら10部隊ヒトマル部隊目標、500m先の敵車両、全車撃て!-

そうスピーカーから聞こえ、その直後10式戦車から爆音が聞こえ、数秒もたたないうちに敵車両(一般車両とバイク)に着弾した。

「な、何だ!?」

「ッく」

「うっわお」

「「「「「………」」」」」

騎士団長、近衛団担当、愛花がそう呟き、他の人たちは驚愕していた。

10式戦車が撤退している時もスラローム射撃を行なっていた。

「動いてるのに正確に当ててる……何という精密さだ……」

そう言ったのは、騎士団担当大臣のエレス・サマンダだ。

「すごい!あれどうやって動いてるの?」

研究長のメレン・アースファクトがそう質問してきた。

「あれはエンジンというもので動いています。簡単に言うとあなた方でお持ちである魔力駆動の性能を大幅に高くし、かつ魔力を使わないものです」

俺がそう言うとメレンは目を光らせ

「ねえ、そのエンジンっていう奴後で見せてくれない?できれば提供もお願い!」

と言ってきた。

「後で見るのはいいですが、提供は少し……」

「むう……わかったわ」

俺がやんわりと断ると、メレンは不貞腐れながら言った。

10式戦車が撤退した後19式武輸自走155mm榴弾砲が配置につき、射撃を開始した。発射された榴弾砲は映像で映し出された(場所がここから15km付近にあるため)的に正確に着弾した。

「こんな遠くから……」

そう言ったのは近衛騎士団長だ。

「(まあ、もっと遠くに撃てるんでね……)」

俺はそう思っていた。

-次弾装填完了!撃て!-

ドォン!

「は、早い!」

エレスがそう言った。この世界の大砲は臼砲が使われており最新式でも前装砲式カノン砲、装填速度は現代兵器と比べると物凄く遅い。エレス達に19式が砲だということは教えているので、装填速度なども遅いだろうと考えていたのだろう。

「本当はミサイル攻撃も見せたかったのですが、今回無誘導ミサイル(ロケット弾)しか持ち合わせておらず、それを撃つのは危険と判断したためやむ終えずミサイル発射は取りやめになりました」

俺はみんなにそう言う。実は人工衛星は宇宙空間に到着したが、2機すべてをこの星の調査に使っており、GPSが使えないのだ。本格的にやるには発射基地が必要なため、それまではお預けである。

「えー、見れないのー?」

そう言ったのは愛花だった。てか思ったけど

「なんかミリタリーにハマってない?前までミリタリー?ナニソレオイシイノ?状態だったじゃん」

そう、愛花は前世ミリタリーのミの字も知らない子だったのだ。

「実は先輩の趣味を知るために調べたんですよ。そしたらどっぷり沼ってしまって……」

あははと笑って言う愛花。俺は愛花の両肩に手をおき

「現代兵器はいいぞ、マジで」

と言い

「先輩……そうですね!」

愛花は笑顔でそう言った。その時

「……兄さん?」

レーナに笑顔で呼ばれた……目に光がなく

「「ごめんなさい!」」

俺らはレーナに即謝罪した。いやだってこのままだったら間違いなくやばいことになるのはわかってたし。

その頃陛下達は16式戦闘車や87式自走高射機関砲(通称ハエ叩き)の射撃を見ていた。


王室 ユートside


「いかがでしたか?我が軍の演習は。あれはまだ陸軍の一部でまだ空軍や召喚していないですが海軍も見せていないので演習とは名ばかりですが……」

俺がそう苦笑いしながら言うと

「あれで一部か……」

「あれでも我々の全軍を潰せるのに」

「あれと戦ったら近衛団も簡単に潰される」

陛下と騎士団大臣、近衛団長がそう言った。

「(やっぱそうなりますか)」

一部でも王国側からしたら全軍で戦っても潰されるからな

「さて、我々は帰還いたします。島への上陸準備もしなくてはなりませんから」

俺がそう言い、立とうとすると

「君は……君達はこの国の味方か?敵か?」

国王陛下がそう言う

「……我々はあなた方が裏切らない限り味方ですよ」


オリビア領 家


あの後、俺らが帰ろうとすると愛花が俺について行くと言い、少し騒がしくなったが、国王陛下、王妃殿下が許可を出し愛花も同行しながら帰還した。

「ふぃー、疲れた」

俺がベットで伸びていると、レーナと愛花がそばに寄ってきた。

「お疲れ様、兄さん」

レーナは俺の頭を撫で

「本当にね」

愛花は手を握りながらそう言う。

「……兄さんは、王立中等高等学園に通う?」

レーナがそう言う

王立中等高等学園(通称王立学園)とは地球で言う中高一貫校である。普通の子ならば王立学園に通うのだが、俺は普通じゃないからな

「うーん……どうしようか迷ってるんだよな。一応俺は貴族だし、愛花達とも結婚するから行ったほうがいいんだけど、国家を建国する時に足枷にならないかわからないし」

俺が迷っていると、ドアからノック音が聞こえ、開いた。

「失礼します、総司令官」

来たのは黒崎だ。……2人とも?黒いオーラを出さないで?

「どうした?」

俺がそう言うと

「僭越ながら、私達現代軍からお願いがありまして」

一回間を置き

「総司令官には国家元首になり、かつ王立学園に通っていただきたいのです」

と言った。

「……それはなぜ?」

俺がそう言うと

「この世界のことを総司令官直々に学んでいただき、かつ王国内での地位を高めていただきたいためです。地位を高める理由は、現在の総司令官の地位はこの世界で低く、それを払拭ふっしょくするためであり、それによってマナ様や多重結婚を容易にかつ将来的に国家を建国するにあたって、反対勢力を抑える口実にもなります」

と黒崎が言った。

「(なるほど、確かにな、メリットは多々あるし、俺やレーナ、愛花達の護衛も特戦群か第一空挺団の隊員にして貰えばいい)」

俺そう思い

「よしわかった、俺は王立学園に入学し国家元首にもなる」

俺はそう決める。

「ありがとうございます!」

黒崎は深く礼をし、退出した。

「「やったーー!!!」」

レーナと愛花は俺に抱きついてきた。

「ちょ!?いきなり抱きつくな!?」

「「だって!一緒に通えるんだよ!」」

「君ら仲良いな!?」

ここまでハモるものなのか

「……まあ、俺も嬉しいが」

俺がそう照れていると、愛花の抱き締めている手がどんどん強くなってきた。

「ちょ、愛花さん?痛いんですけど」

俺がそう言うと

「……そういえば、あの人ダレ?」

愛花が笑顔で言う。

「えっと……」

道を踏み外すな俺!殺されるぞ!

「ふ、副官です」

俺が震えた声で言うと

「にしては王国に行く前も後も仲良いですよね?に い さ ん ?」

レーナがハイライトを消しながらそう言う。そりゃあ副官ですもん!仲良くなくちゃ逆に問題でしょう!

「「どいう関係かきっちり教えてもらいますね?先輩(兄さん)?」」

おーまいがー


家 廊下 黒崎side


「総司令官達、あんなにイチャついて」

廊下を歩きながらそう言う。

「さてと、島への上陸のための編成や総司令官達の護衛員の厳選……いろいろあるわね、だけど、すべては総司令官のため」

愛する人総司令官……もしあなたが王立学院でいじめられたら……

「私は、総司令官の手となり足となる……総司令官……あなた様の邪魔になるものはすべて潰します、破壊します……あなた様のためならば、どんなことだって行います……どんなことだって……」

私は頬を赤くしながら月を見る

「全ては……あなた様のために」


続く

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