マモル 7

 娘達が成人して僕達親が干渉出来なくなると、日々の変化はなくなった。それでも、サツキがいてくれるなら僕は構わなかった。サツキはいつでも僕の呼び出しに答え、何時間でも会ってくれた。

 だけど、ゆっくりとした変化は、僕の体に積もっていった。

 ある日、転んで足を怪我してしまった。ロボ子は治るまでベッドから出るなとうるさく言うけれど、僕はどうしても大きな画面でサツキと会いたかった。その結果、リビングに布団を敷き、リビングで生活するようになった。

 足を怪我してから、僕の体は弱っていった。食欲がなくなり、少し動くのも辛くなった。昼間でも、寝てしまう時間が増えた。

「君はいつまでも、若くてきれいだね」

『マモルだって、若いわよ』

「僕の手はしわしわなのに、君の手はすべすべだ」

 腕を伸ばして画面に手を付けると、サツキも腕を伸ばして、手を重ねてくれる。掌に画面の冷たさを感じながら、ぽつりと呟く。

「一度でいいから、君と手を繋ぎたいよ」

『今、繋いでるじゃない』

「そうだね……」

 腕を戻して目を瞑る。少し腕を上げただけで、こんなにも疲れてしまう。

『おやすみなさい、マモル』

「おやすみ、サツキ」




 夢を見た。

 サツキが画面に手を付いて立っていた。サツキの手に重ねて手を置くと、いつもと違う感触がした。驚く僕の手を、サツキは指を曲げてそっと握った。

 初めて握ったサツキの手は、柔らかくて温かくて、とても気持ちが良かった。

「サツキ。僕はずっと、君と触れ合いたかったんだ」

 たとえそれが危険な行為だとしても、僕は君と、触れ合いたかった。

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