第百十四話
「どうして…カナリーが…」
「いや〜折角の休みで昼寝してたらね?街が大変な事になってたからびっくりして建物の上で見てたらルシュ達が見えてさ〜」
よく見たらいつも見慣れた制服ではなく、腰には短剣を…そして冒険者が来てるような防御性能の高い服を着ていた
「危なそうだったから来たんだよ!」
「あ、ああ助かったよ…」
「…君は…どこかで見た事あるような…」
ロディ先生がカナリーを見てそう言った
「ん?まぁ知ってる人は知ってるかな〜」
そういえば何故カナリーは特級クラスだったんだ?カナリーの詳しい事は俺も他の皆も知らない
「ああ!思い出した!確か君は…」
「スイイイイ…!」
「また来そうだね、防御は任せて!」
「君は…カナリー・ランペルだね」
「いや〜フルネームは恥ずかしいからあんま言わないで欲しいな〜…」
「ランペル…?何処かで聞いた事あるような?」
アリア副団長が呟く
「…ランペル…ランペル…あ…!」
俺がいつも読んでた本に書いてたじゃないか!
「もしかして…ウール・ランペル?!」
200年前の勇者パーティーの1人であるウール・ランペルと苗字が同じだ…!
「そうだよ、私ウール・ランペルの子孫なの」
にひひと笑うカナリー
「噂には聞いていたけど、やはり防御魔法の強度が桁違いだね…」
「あはは〜…まぁね〜」
「そうか…だから特級クラスなのか…」
「さ、アイツ倒すんでしょ?」
「ああ…!力貸してもらうぜ!カナリー!」
「うん!任せて!」
…
…
「ふぅ…残りの魔物も何とか倒したな」
「ガルル…」
「うん、助かったよガルスケ」
『本当わざとでしょうそのネーミングセンス』
「うるさい」
「にゃふ!」
「クロスケも助かったよ」
頭を撫でてやる
「にゃふう…」
「それにしてもクロスケとガルスケは親子かなんかなのかな?」
「ガル…」
『そうだと言ってるようですね』
「そっか、ごめんね。勝手に連れてったりして…」
「ガルガル」
『気にしなくていいと言ってます』
「ありがとう」
クロスケと同じく頭を撫でる
「ガフウ…」
「…確かに親子だね…」
一緒の表情してるよ…
「じゃあ俺は街に戻るから、君達とはお別れだね」
「にゃふ…?」
「クロスケもだよ…君の居場所はガルスケの所だろ?」
「にゃ…」
『嫌だと言ってますね…どうしますか?』
「ダメだよ…ここでお別れだ」
「にゃ…にゃ!」
「…大丈夫…例え離れていてもクロスケとは友達だ」
「にゃあ…」
「ガルスケ、頼む」
「ガルル…」
「にゃー!」
クロスケを咥えると去っていった
「…」
『良かったのですか?』
「うん…親子の仲は引き裂けないよ、寂しいけど仕方ない事だ」
『なら泣くのをやめたらどうですか?』
「ぐす…クロスケぇ…会いたいよ…うああん…!」
『全く…すぐ強がるんですから』
俺はしばらく1人で泣くのであった
…
…
「リュート君…大丈夫かな…」
「あいつなら大丈夫でしょ」
ミナはそう言うが表情は暗い
「大丈夫ですわよ、きっと」
「エリスさん…」
「リュートならきっと…救ってくれますわ」
「そうよ、信じましょう」
「うん」
ふと他の避難してきた街の人々の声が耳に入る
「勇者様なら大丈夫だよな?」
「ああ、俺たちの希望だ。やってくれる」
「はぁ…勇者様…まさか前世が魔王だったなんて…でもそんな勇者様も…いいかも」
「俺…魔王になろうかな…」
「魔王になったからって勇者様と同じになる訳じゃないからやめとけ」
「勇者様ファンクラブの私達が勇者様を支えるのよ!」
「「「おー!」」」
「…リュート君のファンクラブあるんだね…」
「…ま、まぁ恐れられるよりはマシですわね」
「勇者!勇者!」
人々は勇者コールで盛り上がっていた
…
…
「はぁ…はぁ…コイツ…体力無限にあるのかよ!」
「全然…倒れない…」
「…流石の私もあと1回防ぐのが限界だよ…」
「…あれからかなり時間が経ってる、そろそろ決着をつけないと不味いね」
「…キキ…」
「なら…切り札使うしかねぇな!」
「切り札…?」
「…これで終わらせる…!獄炎魔法:炎神纏い!!!」
ルシュの体が炎に包まれる
「…それは…!はは…成長したね…ルシュ君」
まれに才能をもつ者が辿り着けるという魔法の次元を超える魔法…!ルシュ君は既にそこに到達したのか
「はぁぁ…!!!」
「キイイイイ?!」
キメラもルシュの圧に怯む
「消えろぉぉ!!!獄炎魔法:炎神切り!!!」
「キイイイイ!」
キメラが身を守ろうと防御する
「させませんよ…!水魔法:水流縛り!」
「私も…!てりゃ!」
アリアの魔法とカナリーの短剣でキメラの隙ができる
「なら私は風魔法:纏い!」
イリスは自分ではなく、ルシュに風を纏わせる
「体が軽い…!サンキューですイリスさん!」
「へっ…こんなもんよ」
「キイイイイ…ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!」
「くっ…長くは持ちません!ルシュ王子!」
「分かった…!これで終いだああ!!」
「フアア…!アア!」
触手で抵抗するキメラ
「させないよ…!迅鈴刃流:一式:刹那切り!」
「キャアアア!」
「うおおおおぉりゃあ!!!!」
「ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!」
ルシュの攻撃は命中し、キメラは塵となって消えた
「はぁ…はぁ…やった…!やったぞおお!!!」
「ふぅ…お疲れ様…ルシュ君」
「ナイスだぜ王子」
「やりましたね」
「ルシュやる〜!」
「はは…もうヘトヘトだ…リュート…俺やったぜ…」
「さぁ…残りのキメラも気になりますし、私達は見に行きましょう」
「あい…はぁ…皆無事だといいけど…」
「ルシュ君は休んでていいからね」
「うっ…俺も行きたいけど…流石にそうしてもらう…」
「よし、じゃあいく…か…」
それぞれ向かおうとした瞬間、それぞれの場所で戦っていたはずのキメラが現れた
「キイイイイ!!」
「フウウウウ!」
「ツウツウウ!」
「…は…?嘘だろ…」
…
…
「逃げてったわね」
「お姉ちゃんパワーの大勝利…!」
「…勝ったの…?」
…
…
「なんだい、急に逃げて」
「…」
(何か嫌な予感がします…)
…
…
「何で…ここに集まって…!」
「や、やばくない…?これ…」
「くっ…一体であれだけ苦労したのに…」
「は、はは…もう笑うしかねぇ…」
「「「クウウウ…!」」」
「自分達を倒す危険性がある奴を同時に倒すつもりか…!くっ…僕もここまでか…」
「…まだだ」
俺は力の入らない足を引きずりながら立ち上がる
「ルシュ君…」
「…まだ諦めねぇ…」
リュート…俺の仇…取ってくれよ
「行くぞ、化け物共…!」
「「キイイイイ!」」
「はぁぁ!」
「…光魔法:拡散矢・氷魔法:氷付与」
「…あ…?」
突然空から無数の矢が降ってきてキメラ達に刺さる
「キイイ…イイ…」
そして矢が刺さったキメラ達は…
凍った
「なんだ…凍ったぞ…?てか矢が降って…」
「ごめんルシュ、待たせたね」
「あ…ああ…はは…遅せぇよ…全部俺が倒す所だったぜ?」
「マジか、そりゃ横取りしちゃったかな」
現れたのはリュートだった
「…ありがとうな…リュート」
「それはこっちのセリフさ、俺を信じてくれてありがとう…ルシュ」
「へっ…当たり前…だろ…」
ルシュが倒れそうになる
「おっと…後は任せて」
「リュート様…!」
「リュート君!」
「アリアにロディ先生…ルシュを頼んだ」
「リュート君は…」
「俺はあいつらを倒さなきゃ」
「1人でかい?それは無茶だ」
「そうですよ、私達もまだ戦えます」
「大丈夫大丈夫、なんたって俺勇者だし?」
「キイイイイ!」
「流石に覚えたての魔法じゃ長時間凍らかせるのは無理か」
「リュート…その魔法は…」
「ふふんイリス気になる?これはね…」
氷魔法なんだぜ!
戦いは終盤へと差し掛かった
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