第百十三話

「…ちっ…なんだこいつ…全然攻撃が通らねぇ」


「キエエエ…」


歪に蠢くキメラには傷1つついてはいない


「はは…流石の僕でもこれは楽しくないな…」


「だけどやるしかないっすよ、リュート1人に任せっぱなしじゃ親友失格だ…!」


「そうだね、来るよ!」


「スイイイイ…!」


無数よ触手が伸び、目に見えないスピードで襲いかかってくる


「おら!炎魔法:炎纏い!」


「迅鈴刃流:二式:鈴静居合い…!」


参ったな…触手の数が多すぎて守るだけで精一杯だ


「2人だけでこれは厳しいな…!」


「そら!…クソ!数が多すぎる!」


ここで負けられねぇのに!


「水魔法:激流砲!」


「風魔法:風刃!」


「スイイイイ…?」


「あんた達は…!」


「大丈夫ですか!」


「なんだコイツ!気持ち悪?!」


「アリア副団長とイリスさん!」


「加勢に来たぜ!」


「団長、住人はあらかた避難し終わりました」


「ありがとう、助かるよ」


「4人なら勝てる…!」


「スイイイイ…キヒ…キヒヒ…」


「うわ笑いだしたぞアイツ…!」


「キイイイイ…!」


突然キメラの体がボコボコと蠢く


「私あれ生理的に無理ぃ…!」


「どうやらそんなこと言ってる場合じゃないみたいだ…」


キメラの影がブレる…


「マジかよ…そんなのありか…」


「「「スイイイイ…」」」


まさか分裂したのか…!


「…中には分裂する魔物も居るって聞いてたけど何でこいつがその能力持ってんだよ!」


「どうやらあらゆる魔物の能力を使えると見て良さそうですね」


「絶望的だな…」


「…リュート…」


ダメだ…へこたれるな俺!リュートの横に立つんだろ!ここで負けたら一生アイツの横には立てない!


「だからどうした!分裂しようがまとめてぶっ倒せばいいだけだ!」


「…そうですね、やりましょう。私達で!」


「「「ゴォォォ…」」」


「来るぜ!」


「「ズー…」」


キメラの数体が散らばって逃げる


「なんだ…何体か逃げてったぞ」


「まさか私達以外を狙うんじゃ…!」


「なっ…追わなきゃ!」


「いや…追った所で返り討ちになるだけだよ」


「ならどうすりゃ…!」


「…この街には僕達以外にも強い人たちは居る、その人たちに任せよう」


「俺達以外って…」


その時、キメラが向かった方向から雷鳴が鳴り響く


「ほらね、さぁ…僕達はコイツらを何とかして倒そう!」


「あ、ああ…てかあれって…」




「で、何なのかしらコイツは?」


「シイイイ…」


「私の学園に無断で入ってくるなんていい度胸じゃない」


「…リュートを酷い目に合わせたの…コイツ?」


「来る場所を間違えたみたいね」


キメラの一体が向かった先は魔法学園、そこには学園長ロミリア、生徒会長サラ、副会長のノエラが居た


「私の最愛の弟によくも…許さない」


目のハイライトが消えたサラ


「ご愁傷さまね…まぁ…私も勇者様のファンだから今最高に怒ってるんだけどね…!」


「私の生徒に手を出したこと、後悔しなさい!」


「ス、スイイイイ…」


キメラは初めて恐怖を覚えた




「スイイイ…」


「…!」


(何なんですかあなた…!)


「キイイイイ…!」


「…?!」


ユーナは防御魔法を展開する


「…」


(なるほど…あなたが街を襲った魔物ですね)


「フウウウウ…!」


無駄ですよ、エルシュラ様の魔法の前では悪しきものは皆等しく無力なのです!


「…」


しかし、私攻撃方法持ってないんですよね…どうしましょう…?


「ウチの店の前で何やってんだい…?」


「スイ…?」


「迅雷魔法:雷神纏い」


「スッ…?!」


キメラが吹き飛ぶ


「ふぅ…全く…無駄な労力使わせるんじゃないよ」


「…!」


(助かりました!)


「良いってことさ…っ…まだ来るみたいだよ!」


「キエエエ…!」


「…!」


(サポートします!)


「よし…行くよ!」




「冒険者のみなさーん!特別依頼が出されました!」


「なんだなんだ?」


「街が大変な事になってるじゃねぇか」


「皆さんは街の防衛と避難の補助をお願いします!」


「よし!やるか!」


「熊殺しのベアー様の出番の様だな!」


「無事に終わった際は国から報酬が貰えますよ〜!」


「「うおおおおぉ!!」」


「…ふぅ…頑張ってね…リュート君、私には何も出来ないけど…きっと勝つと信じてるわ」




「国王陛下…!前に出ては危険です!」


「国がこんな事になってるのに呑気に座ってられるか!」


「どうかお逃げ下さい!」


「離せ!俺はまだ現役だ!」


「ルーデルク、兵を困らせちゃダメよ」


「セレナ…だが…」


「この国には優秀な者ばかりよ、それとも貴方は国の者たちを信じられない?」


「そんな訳ないだろ…!」


「ならここは逃げるべきですわ、貴方が死んでしまったら国そのものの死と同じ事ですもの」


「くっ…分かった」


「それに…私達には勇者がいますわ」


セレナはそう言ってルーデルクの手を握る


「…!ああ…そうだな…!」


任せたぞ…リュート…!




「お前が…全部の元凶か?」


「シイイイ…!」


「…エリーも…リュートも…2人を苦しめたのはお前か?」


「キイイイイ…!!」


「…複合魔法:天地雷鳴」


「ギ…!」


キメラの動きが止まる


「覚悟しろよ…オレは今最高潮にキレてんだ」




「おら!」


「風魔法:纏い!」


「水魔法:激流砲!」


「迅鈴刃流:三式:迅風一突」


「キイアアア!」


「効いてるぞ!」


「多分アイツはデスギガントゴブリンの特性と同じで他人の魔力を自分の強度に変換する事が出来るんでしょう」


「なら今はアイツの変換速度を上回ってるって事か!これなら勝てるぞ!」


「キイイイイ…キイアアア!!!」


キメラが叫び、口を全開に開く


「なんだ…何かするつもりか?」


「…!あれは!」


「何かしてくるぞ!」


口から巨大な魔力の玉が生まれる、そして徐々に収束していき…衝撃波として放たれた


「しまっ…」


「避けて!」


全てを飲み込みながらルシュ達の方向へ向かってくる


「…ああ…」


俺…死ぬんだ…ごめんリュート、俺一緒に旅出来ないみたいだ…


「土魔法:絶壁!」


その時、寸前で巨大な壁が現れ、衝撃波を防ぐ


「…お前は…」


「大丈夫?平気だった?」


「か、カナリー?!」




現れたのはカナリーだった

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