第百十二話

「それで?俺に傷を付けることすら出来ないお前に何が出来る?」


ニヤニヤとフードの奥で馬鹿にしたように言う邪神


「…あん時とは色々違うんだ、やれるはずだ」


「くはは…威勢はいいがどうするつもりだ?ほら…殴りたいんだろ?やってみろ」


両手を広げ無防備の状態で挑発する


「後で後悔すんなよ…ええと紙には…ふむ魔力を流し込めばいいんだな」


2つの剣に魔力を流し込む、すると刀身が輝きだし透明感の強い白から光り輝く純白の刀身へと変わった


「この感覚って…もしかしてロミリア先生から貰った素材って反魔石の事だったのか…!」


確かに魔力を流し込むほど強度が増す反魔石なら武器に持ってこいだな


「ただ光るだけの玩具で俺を切るつもりか?無駄な事を…」


「無駄かどうかはやってみなきゃな!はぁっ!」


魔力流し込んだ剣で邪神を切る


「…なんだと…?」


「くそ…やっぱ切れないか!てか切れ味すご!」


邪神に傷はつけることは出来なかったが振り下ろした先の地面が真っ二つに割れていた


「なんだその剣は…!」


「俺の友達がくれた最高の贈り物さ…!」


「ふん、だが傷はつけれないようだなぁ?」


邪神の言う通り傷はつけれない、どうする


「ニャフー!」


その時クロスケが現れ、邪神の腕に噛み付く


「クロスケ…!なんで!」


「なんだこの猫は…どけ」


「にゃっ…!にゃ…」


クロスケが邪神に殴り飛ばされる


「クロスケ…!大丈夫か!特癒回復!」


「にゃ…」


「なんで…着いてきたんだ…!」


「どうした、もうお前の悪あがきは終わりか?」


「…ちっ、刹那切り!!」


切りかかるが寸前で避けられる


「お前は何も変わっちゃいない…何も守れない所も、そうやってすぐ頭に血が上り隙だらけになる所もな」


「がは…!」


当たらない…傷を付けることが出来ない…


「はぁ…はぁ…」


「あの時は違う?一緒じゃないか…結局お前は変わることなんて出来ないのさ」


相変わらず馬鹿にしたような笑みでこちらを見下ろす


「…ぐっ…」


『リュート様、諦めてはダメです』


レア…


『貴方ならきっと邪神を倒せる、私は…レアは信じてますから』


「…まだ…信じてくれるのか…レア…」


『何度失敗してもいいんです、それでも諦めず挑戦して挑戦して…最後には勝ってくれるのが貴方でしょう?』


「…ああ…そうだな…!ここでへこたれちゃ信じてくれた皆に悪いよな…!」


「ちっ…また立ち上がるのか?諦めの悪い奴だなお前はよ…!」


『頑張ってくださいね…バーン様』


「…はは、久しぶりだな…バーン様なんて呼ばれるの」


「何をブツブツと…またおかしくなったか元魔王」


邪神が殴り掛かる


「…うっせ、前も言ったけど俺は魔族の長ってだけで魔王じゃねぇよクソ邪神」


この魔法がダメなら万事休すだ、皆が信じてくれたんだ。俺もその期待に応えようじゃないか


「…反魔球」


両手を合わせ反魔球を作り出す


「…っ!なんだ…!それは!」


「おいおいさっきまでの人を馬鹿にした笑いはどうしたよ…!まさかこれが怖いのか?」


「そ、そんなもの…!邪神スキル:ソウルプロテクション!」


「なんだよスキル使うぐらいビビってんじゃないか」


凄い慌てようだな、初めてコイツを恐れさせてやった。最高の気分だぜ邪神…!



球を右手に纏わせる



「とりあえず1発ぶん殴ってやっからな!!!」


「やめろ…やめ…!」


「俺とレアの痛みを思い知れ!しゃらっああ!!!」


「ごぶっ!があああ!!!!」


邪神の顔に完璧に入り、邪神が物凄い勢いで好き飛ぶ


「まだまだぁ!」


2つの剣の内1つを邪神の方向へ投げる


「影変転!」


投げた剣と自分を入れ替える


「がっ…!あ…」


「サービスしてもう1発!」


「ごぶっ…!」


地面がえぐれる、邪神の顔はボロボロになっていた


「…200年かかったけどよ、邪神ベル…宣言通りお前をぶん殴ってやったよ」


ここまで長かった…あの時…コイツに敗北してから俺は成長したんだ


「…ぐ…ぐふ…」


「俺を甘く見たな」


「はぁ…はぁ…ふざげ…るな…!ああ…あああ!」


邪神から黒い霧が溢れ出てくる


「…なんだ…」


急いで距離をとる


「…あの女の…下僕如きが俺に傷をつけただと…ふざげるなよ…そんなのあってたまるか…!ありえない!有り得てはならない!」


顔を歪めながら睨みつける邪神、さっきまでの余裕の表情は消え去り。あるのは憎悪のみだ


「くそっくそっ!俺がこの世界を支配するにふさわしいんだ!こんな下等な虫ごときに邪魔されてたまるか!!!邪神スキル:マインドコントロール!」


邪神から出ている霧が辺りに広がる


「…なんだこの霧」


『気を付けてください、この霧はどうやら触れたものを支配するスキルのようです』


「…ヤバすぎるだろ…だって…」


この霧森全体を覆ってるぞ…!


「ひひ…くははは…!例えお前でも森全体の魔物共が同時に襲ってきたら一溜りもないだろう!くはは!」


「くそ…!200年前魔物なんて呼び出したばかりにバチが当たったな…!」


「じゃあな憎きエルシュラの下僕…俺を怒らせた事を後悔するんだな…!」


邪神が霧に紛れて逃げる


「まて!逃げんな!クソ邪神!」


『…残念ながら逃げられたようです』


「くそ!あと少しだったのに…!」


『落ち込むのは後にした方が良さそうです』


「…っ…大量の気配がこっちに来る」


「「「ゴブゴブ!」」」


「「「スネ!」」」


「「「ブフオオ…」」」


木をなぎ倒しながら何百という魔物達が波のようにこちらに押し寄せてくる


「…ヤバい…あれはやばい!あんな量無理だよ!」


『ですがここで倒さなければ街に雪崩のように押し寄せてくるでしょう』


「…ただでさてキメラがいるのに…!」


「にゃ…!」


「クロスケ…お前だけでも逃げろ」


「にゃ!」


逃げないと言いたげのようだ


「どうしてそこまで…」


「にゃにゃ!」


『来ます!』


「くそっ!もうどうにでもなれ!」


「にゃ…ニャーーー!!!!」


突然クロスケが叫ぶ


「ぐっ…耳が…うるさ…!」


「ニャー!!にゃふ…」


力尽きたのか、パタッと倒れるクロスケ


「クロスケ…!」


『上空から魔物の反応があります!あれは…』


上を見上げると10m以上はある巨大な影が空から降ってくる


「まだ魔物が来るのか…!ああ…諦めちゃダメなんだけど泣きそう!」


『いえ…どうやら味方のようです』


「え…?」


「ガルルル…!ガァッ!」


目の前に降り立ったのは巨大な黒い虎だった、角が生えて中々かっこいい見た目をしている


「おお…強そう…!じゃなくて…もしかしてクロスケが呼んでくれたのか?」


「にゃふ…」


「ガルっ…」


「えっと…よろしくお願いします…?」


「ガルル…」


『そろそろこちらに魔物が到着します!構えてください!』


「よし!こんな強い味方がいるなら百人力だな!よーし久しぶりに使うぞ!大地獄…」


「ガオオオオン!」


黒い虎が口から巨大な炎の球を作り出すと、それを魔物の大軍に放つ


「ガルル…!」


今まで聞いた事がないような爆発音と共に気づいたら大軍のほぼ半数近い数がチリになっていた


「…え…?」


「ガルっ!」


凄いだろと言わんばかりにドヤ顔でこちらを見る黒い虎


「俺の…出番…大地獄炎…使いたかったのに…え?」






俺の出番は殆どなく、ただ哀愁漂う背中で佇んでいた

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