第百二話

「へぇ〜リュートは実家に戻るんだね」


「うん、カナリーは実家には帰らないの?」


「私は実家暮らしだから、常に実家に帰ってるよ〜」


「そうなんだ、じゃあ俺以外皆ミラノワに残るのか」


「そだね〜…ふふ、リュート以外で色々楽しんじゃうかもしれないね」


ニヤニヤと悪い笑みを浮かべるカナリー


「そこは秒で行くから誘ってよ…」


「へへ、冗談だよ!」


「うおおおおぉ!!!!実家に帰るぞぉぉ!!」


相変わらず暑いなぁ…ホットがいるだけで周りの気温10度くらい上がってるよ


「というかホットも実家に帰るの?」


「そうだな!!我が実家がレギオス領にあるから父に会いに行くのだ!!!」


「へぇ〜…え?レギオス領?」


「そうか!確か君のお父上の領だったな!!!」


まさかのホットはレギオス領出身だったとは…故郷が同じなんて幼なじみじゃんか


「レギオス領で…暑苦しい人…あれなんか見覚えが」


まさかな…そんな偶然あるか…?


「ねぇ…君のお父さんって魔石採掘してる?」


「ああ!してるぞ!よく分かったな!!!」


はい確定、アックナルーヨさんですね


「あー…多分会ったことあるかなー」


「そうなのか!それは偶然だな!」


「うん、とても暑い人だったよ」


精神的にも体温的にも…


「そうだろう!!俺の自慢の父だ!」


鼻を高くして自慢げに語るホット


「そっか、確かにいい人だったからな、それじゃあホットとはレギオス領で会うかもしれないね」


「そうだな!その時は共に語り合おう!!!」


暑い…ホットが1番青春してるんじゃなかろうか




そしてすぐに夏休みが始まった


「ふぁ…レギオス領までもう少しかな」


「ニャー…」


クロスケも一緒に実家に帰る事になった、今は俺の膝の上でお昼寝中だ


「そうだね〜、ふふ…眠いなら膝枕してあげよっか」


「だ、大丈夫だよ。というか何故前が空いているのにわざわざ隣に…」


「そりゃ…リュートの隣がいいからだよ…」


耳元で囁く


「うう…」


「ふふ、本当耳弱いねリュート」


「分かってるならやめてくれよ…」


「ごめんごめん〜膝枕するから許して〜」


「結局姉上の得じゃないか」


「ニャフニャフ」


姉上となんでもないやり取りをしながら俺達はレギオス領へと着いた


「ただいま〜」


「おかえりなさいませ、リュート坊っちゃま、サラお嬢様」


「うん、ただいまカレン」


「…お兄ちゃん!お姉ちゃん!おかえりなさい!」


走ってこちらにやってくるミリシャ、ミリシャも8歳になりかなり大きくなってきたな…妹の成長が早くて兄としては嬉しいけど寂しくもある


「…ミリシャも好きな人が出来るんだろなぁ…」


その時は応援してあげよう


「…お兄ちゃん…す、す、」


「す…?」


「…なんでもない」


最近唐突に告白する事が恥ずかしくなってきたようで顔を赤くしながら言うのやめちゃうんだよなぁ…


その姿は控えめに言って天使だな、抱きしめてお持ち帰りしたくなっちゃう


『お巡りさんこの人です』


冗談だからお巡りさん呼ぶのやめてください


「ミリシャただいま〜お姉ちゃん寂しかったよ〜」


「…お姉ちゃん…好き」


「私も〜」


何故姉上にはちゃんと言えるのだろうか、お兄ちゃん寂しいよ


「おかえりなさい、2人とも」


「母上、ただいま」


「お母様ただいま〜」


母上を見るとなんだか安心するな…気が抜けるというか何と言うか、家に帰ってきたって感じがする


「父上は仕事?」


「アルトならセバスチャンに稽古を付けてもらってるわ、2年前で腕が鈍ってたのがショックだったらしくてね…しょうがないと思うのだけどね〜」


「なるほど…」


確か父上はロミリア先生の次に強いんだっけ、そう考えるとめちゃくちゃ強いな父上


「俺も今度父上と手合わせしてもらおうかな」


「全く…男の子はすぐ戦いたがるのだから」


困ったような笑みを浮かべる母上


「さ、今日は疲れてるでしょう?ご飯食べて休むといいわ」


「ありがとう、そうするよ」


「ふふん…今日はリュートの隣で寝れる…」


「…私もお兄ちゃんの隣で寝る」


「「むむ…」」


「…さぁ行こっと」


その場からササッと退散して体を休めるのであった、



そういや今度試したい事があったんだっけ…試すか




1週間後


「暇だ…」


実家に帰ってきたはいいものの…やる事がない、最近学園で勉強やら部活やらで忙しくていざ休みになると

余計暇に感じる


『魔物討伐でもすればいいじゃないですか』


昨日やったんだよねぇ…というか城に戻るまではずっと魔物ばかり狩ってたから流石に飽きたというか疲れたというか


『わがままな勇者様ですこと、もう少し勇者らしい振る舞いをしたらどうです?』


どっかの誰かさんみたいな事を言うな〜?


『誰のことでしょう』


…ねぇ、暇だからステさんがモノマネしてよ


『私にそんな芸当が出来るとでも?』


…まぁ補助しか出来ないステさんには無理か


『…自分で言っておいて何ですが、なんかムカつきますね…勇者の称号没収します』


そんな!ただでさえ最近勇者らしい事してないのに称号まで無くなったら俺ただの学生だよ!


『ふふ…それもいいかも知れませんよ?』


勘弁してください…って懐かしいね…


『…なんの事ですか』


こんなやり取り、前にもしたよね


『…!気のせいですよ』


そうかな…?この胸の苦しさが証拠だ


『病気ですか?殴ったら治りますよ』


そんな昔の人の治し方みたいな…なぁ…ステさんって

精霊になる前はどんな人だったんだ?


『…精霊になるまえなんて無いですよ、私はリュート様をサポートする補助精霊。それだけです』


…そうか…今はそう思っておくよ


『ええ、それでいいんですよ』


でもいつかは話してくれよな


「レア」


『っ…』


…喋り方も主人を煽るのもそっくりだ、少し前から似てるなって思っててさ。カマかけてみた


『…ずるいご主人様ですね』


案外そういう所は詰めが甘いからなレアは


『…』


今はステさんか、まぁ何があったかは知らないけどさ

話すつもりは無いんだろ?


『ええ、それが…私の償いですから』


…そっか、ならこの話は終わり!今の事は忘れるよ


『いいのですか…?』


うん、ステさんが話してくれるまで待つよ


『ありがとうございます…やはりお優しい方ですね』


…っ、悪い…でも一つだけ言わせてくれ…


「…また話せてよかった…レア…!」


涙がこぼれる、予想はしてたけどレアだと分かったら気持ちが抑えられなくなってしまった


『転生しても泣き虫は変わらないのですね…全く』


「ああ、でもこれっきりだから安心してくれ」




何故レアが精霊になってるなんて分からないけど、それでもまたレアと話せる事に胸が一杯になったんだ

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