第百話

「楽しいねリュート!」


「うん、そうだね」


俺と姉上は学園を見回りという名のデートを楽しんでいた、いやもちろん俺は見回りもちゃんとしてます


「おい…あれって勇者様と生徒会長だよな」


「ホントだわ!確か2人は姉弟なのよね…!」


「氷のお姉様も普段とは違って笑顔よ!あの氷のお姉様が!」


「そんな…俺の勇者様が…」


「安心しろお前のじゃないぞ」


「お2人が並んで歩いてるなんて…尊い…うっ…」


「誰か!また先輩が鼻血を出して気絶しました!」


騒がしいなぁ…あまり耳を傾けたくない内容だろうな


「次はどこ行く?」


「うーん…そうだ俺の入ってる部活の出し物見に行こうよ」


「えっ…リュート部活入ってるの…?」


「うん、魔道具研究部にね」


「…お姉ちゃんも入る…」


「えっ…?」


「お姉ちゃんもリュートと一緒の部活に入るわ!」


「ええ…?でも姉上は生徒会なんじゃ」


「そんなもの辞めてやる!」


「うん、それはやめようね…絶対ダメなやつだから」


「うう…リュートと一緒に学園生活を送りたいのに…」


涙目でこちらを見る姉上、ああ周りが騒がしくなるからやめてくれぇ…


「まぁまぁ、なんなら俺が会いに行くから」


「本当…?」


「うん、暇が出来たら必ず」


「えへへ…ならいいわ」


「きゃー勇者様の愛の告白よ!尊すぎる!」


「ああ…俺今の目覚ましにする」


「うっ…」


「くっ…先輩達が皆気絶してる?!」


何故そうなるんだよ…というか反応がオーバー過ぎるだろ、そんな調子じゃ出血多量で死んでしまうぞ


「さ、行こう」


「うん!ふふ…」


上機嫌な姉上…まぁいっか、姉上も楽しそうだし


「あそこがリュートの部室?」


「そうだよ」


「やめてって言ってるでしょ!」


「あぁ?先輩に舐めた口聞いてんじゃねぇよ」


「おいおい、喧嘩か?」


「何かしら?」


「おいアイツらって…」


おっと…?何かヤバい雰囲気が


「魔道具を壊すのをやめて!」


「はっ、そんなガラクタ壊してもなんて事ないだろ」


「くっ…!これはガラクタなんかじゃないわ!私達が一生懸命に作った作品なの!バカにしないで!」


「…くそ、人混みで近づけない…!」


なんとか近くに行ってみるとそこにはボロボロの魔道具達が床に転がっていた


「なっ…!」


俺達が作った魔道具が…!


「ここの奴らには借りがあるんだよ、あのクソ野郎、勇者だとかもてはやされて余計にイラつくからよ…恨むならそいつ等を恨め」


アイツは入学試験の時にシノンに絡んだ奴だ…人を集めて復讐をしに来たのか…!


「…恨むわけないでしょ!シノンは魔道具に魂をかけて作って尊敬するし、リュートも真剣に魔道具に向き合ってる!悪いのはアンタ達よ!」


「ちっ…うぜぇな…おいこの女やっちまおうぜ」


「ああ…よく見りゃ中々いい顔してんじゃねぇか」


「ひっ…や、やめて!」


男達がミナの手を乱暴に掴む


「誰か…!た、助け…」


「助けなんて誰もしねぇよ、俺らを知ってる奴はな」


「おい…アイツらって暴龍魔団だよな…」


暴龍魔団?そいつ等がこれをしたのか


「なんでそんな奴らがこんな所に…」


「だ、誰かあの子を助けなきゃ…!」


「でも狙われたら死ぬまで追われるって聞いたぞ…」


「くっ…俺生徒会呼んでくる!」


「私も探してくるわ!」


生徒たちがそれぞれ生徒会を探そうとする


「その必要はないわ」


「あ、生徒会長…!」


「良かった、生徒会長よ…!」


「氷のお姉様…」


「道をあけなさい!」


「はい…!」


生徒たち退いて、道が開ける


「さ、リュート。道が出来たよ!」


「…ありがとう姉上、助かる」


「ふふん、リュートの為ならこんなもの余裕よ」


「あぁん?!お前あの時の奴じゃねぇか!あん時はよくも…」


「お前は後だ」


「くっ…また速い…!」


「ごめんミナ…俺のせいで酷い目にあってしまった…」


「リュート…ふ、ふん別に気にしてないわ!こんなのへっちゃらよ!」


涙を流して、震えてるじゃないか…


「優しいなミナは…ありがとう」


ハンカチで涙を拭いてあげる


「…な、や、優しい…私が」


顔を赤らめて驚いた表情を浮かべる


「…おい、ここじゃ迷惑がかかるから移動するぞ」


「…こいつ…調子に乗ってんじゃねぇぞ、ああ?」


「俺に用があるんだろ、来ないのか?」


「ちっ…ここでボコしてやるよ!」


後ろから殴りかかってきたか、それなら手加減なんかしなくていいな


「なっ…」


拳を避け、足を崩し転ばせる


「…暴龍魔団なんか知らんが、お前達こそ調子にのってるとどうなるか分かって無いらしいな」


「…くっ…おいコイツをやれ!」


周りにいた奴らが一斉に襲ってくる


「…これ以上ここを汚すなよ」


「ぐふっ…」


「はやっ…がはっ」


「ぎゃっ!」


「うっ…」


テキパキと周りの奴らをなるべく周りを壊さないように処理する


「くそっ!ふざけるなよ…!」


アイツ…魔法を使うつもりか


「おい!魔法を使うつもりだぞ!」


「そんな!学園では授業以外での魔法の使用は禁止されてるのに…!」


「逃げろ!巻き込まれるぞ!」


「後悔するといい!炎魔法:炎玉!」


「…それぐらいなら手刀でいいな」


「リュート…だ、大丈夫なの?」


ミナが心配そうにこちらを見つめる


「大丈夫大丈夫、俺勇者だし」


「くらえええ!」


炎の玉がこちらに迫る


「ロミリア先生に比べると子供だましだな…」


手を振ると魔法は2つに切れた


「はっ?」


「こんな小さい炎の玉なら魔法を使わなくてもステータスでゴリ押せるんでね」


「ば、化物かよ…!」


「さて、覚悟は出来てるんだろうなぁ?!」


「ひ、ひいい…お、俺は暴龍魔団だぞ!いいのか!」


「そんなもの知らん!アリア式調教術で地獄を見るといい!」


「い、いやあああ!!!」




あの後騒ぎを聞きつけて来たシノンに説明した


「そんな事が…僕のせいだね…ごめんね…」


涙を流し謝るシノン


「シノンのせいじゃ無いって」


「…僕が弱虫で…あの人達に絡まれたから…」


「…言ったろ?シノンは凄いって、それに悪いのは暴龍なんとかって奴らだから気にしなくていい」


「…でも」


「あんな奴、シノンの敵じゃないさ」


「えっ…?」


「シノンなら余裕で倒せたはずさ」


「…そんな事…僕には」


「出来る、俺の目を舐めるなよ?シノンは自分が思ってるよりずっと強いから」


シノンの魔力量は多分ルシュ並だ、あの訓練したルシュと同等。魔力感知で見たから分かる


「…どうしてリュート君はそこまで言ってくれるの?こんな弱い僕に…」


「だって本当に強いと思うからな?それに…前の俺みたいだから」


「前のリュート君…?」


「…無力で自分を弱いと思い込んでいた前の俺みたいなんだ、だからほっとけない!俺が気づかせてやるよ、シノンが自分を凄いと気づくまで」


「リュート君…」


「覚悟しろよ、俺しつこいぜ」


「うん…ありがとう…リュート君」


「…話は終わったかしら」


「ああ、悪いねミナ」


「全く、部長と副部長がこれじゃ不安しかないわね」


「…ごめんねミナ」


「でもそれもいいかもね」


「ミナ…?」


「案外楽しいもの、この部で過ごす日々…だからもっと自分に自信を持つことね。あっ…べ、別にアンタの為に言ったわけじゃないんだからね!」


忘れてたかのようにツンデレを発揮するミナ


「…ありがとう2人とも…うん部長がしっかりしないとダメだよね!」


いつもの調子に戻ってきたな


「頑張れよ部長」


そこに学園長にアイツらを引き渡してきた姉上がやってきた


「ぶー…せっかくのリュートとのデートが…」


「姉上…ごめんね…今度埋め合わせするよ」


「本当?ならいいよ!ふふん〜」


「「「勇者様!勇者様!」」」


あぁ…また勇者コールが始まっちゃったよ


「…勇者様か…リュート…」


…優しいなミナは…


「…っ…何思い出してんのよ私は」


顔を真っ赤にするミナに気づく者は居なかった




こうして予想外の出来事もありながら何とか学園祭を終えることが出来たのである

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