第九十二話
「ぺろぺろ…ニャー…」
「んあ…くすぐったいよクロスケ…ふぁ…あれ…いつ俺部屋に戻ってきたんだっけ」
この前拾った魔物のクロスケに舐められ起こされる
『リュート様のネーミングセンスはどうなってるんですか?わざとなんですか?』
至って真剣に考えております
「えっと…昨日は…」
学園生活初日から死ぬほどハードなテストを受けてた筈なんだけどな、そこからの記憶が無い
「むにゃ…リュート様…」
「何故アリアは俺と寝てるんだ…?」
最早隣に寝ていても驚かない自分にビックリだよ
「さ、今日も学園だ〜」
「…ふふ…リュート様…むにゃ…」
とりあえずアリアを起こすか
…
…
「初日からキツかったな…」
「ああ…」
「そうですわね…」
「「「はぁ…」」」「ニャー…」
俺達は学園へ向かう馬車の中でため息をついていた
ん?ニャー?
「クロスケ!なんで着いてきてるんだよ!」
「ニャー」
「おいおい学園はペット連れてくるの禁止だろ、どうすんだよ」
「クロスケは可愛いですわね〜よしよし」
「にゃふぅ…」
「うーん…まだ馬車の中だし置いて行くしかないな」
「まぁ…それしか無いよな…本当、お前に懐いてるよな〜こいつ」
「ニャ〜」
クロスケは俺の膝の上でくつろいでいる
「着いたようですわ」
「いい子にしてるんだぞ〜?」
「ニャー…」
クロスケを膝から降ろし、俺は教室へと向かった
「…おはよー…」
「…カナリーは元気無いみたいだな」
「そりゃもう…初日からあんなハードとは思わなくてさ…」
「おはよう!皆!!!朝は気持ちがいいな!!!」
「ホットは相変わらずで凄いな〜…」
「なんだ元気がないぞ皆!!さぁ気合を入れて!!」
「暑さでこっちが溶けちまいそうだ…」
ルシュは席に着くと倒れるように眠った
「…私も昨日の疲れが取れてないですわね…はぁ…」
エリスもいつもの凛とした雰囲気は無く、どこか気だるげだ
「…おはよう…」
「シノン…おはよう、やっぱり疲れは取れてないみたいだね」
「うん…こんなにキツいとは思わなかったよ」
「…〜」
フラフラとユーナも教室へ入ってきた
「皆既に限界だな…」
俺も疲れが取れてないし、今日も昨日のテストみたいな訓練をするのだろうか…
「体持つかなー…」
「随分お疲れのようじゃない」
ロミリア先生が小悪魔的な笑みを浮かべながら入ってきた
「ふふ、昨日は頑張ったわね。貴方達の実力も分かった事だし、上々ね」
「でも…俺傷をつけることが出来なかった…」
「あれに傷をつけるなんて無理よ、そもそもあれは傷をつけるためのテストじゃないし」
「「「えー?!」」」
「じゃあ何のためにあんな事を…」
「言ったでしょう?貴方達の実力を知るためだって」
「そんな〜…うう…」
カナリーが項垂れる
「まぁまぁ、頑張ったご褒美として今日は訓練は無しにするから。そう落ち込まないで」
「わーい訓練無しー!」
さっきまで元気が無かったカナリーに生気が戻った
「よかった…訓練はなしなんだね…」
シノンもホッとしてるようだ
「という事で、授業を始めるわよ」
「ええ〜…授業はあるのかよー」
ルシュが不貞腐れる
「当たり前でしょう?私が休ませる程優しいと思うかしら?」
「…いや…思わないっす」
「分かってるならよろしい」
こうして魔法の知識から歴史までみっちり勉強をしたのであった
「…ああ…頭使いすぎて死ぬ…」
「そんなに使ってないじゃないですの」
「俺は使ったんだよー…」
ルシュが机に突っ伏す
「私も頭使いすぎでボロボロだよ〜…」
カナリーもか…
「ううむ!!!やはり頭を使うより体を動かした方がいいな!!!」
うん、それはホットだけだと思うよ
「〜」
ユーナはノートに授業のまとめを書いていた
「ユーナは真面目だなー…」
俺はざっと書いて終わりだからな、見習わなければ
「…!」
ドヤ顔でまぁねとジェスチャーする
「…今気づいたけど、紙とペンがあるなら筆談でいいのでは?」
「…」
ユーナがペンを落とす、その顔は驚きに満ちていた
「ユーナも今気づいたのか…」
「…」
ペンで文字を書いていく
(今気づきました、てへっ)
「ユーナらしいな…はは」
「さて…今日はこれで終わりにしましょうか」
「やったー終わったー…帰って寝るぞー!」
「…今日覚えた事を復習しなきゃ…」
「よし!!家まで走って帰ろう!!!」
「皆お疲れ様、ああリュート君はこのまま残ってね」
「俺ですか…?」
「ええ、少し話したいことがあるの」
「じゃあ俺達は先に帰ってるぞ?」
「了解、じゃあ馬車の人に伝えといて。じゃあねルシュ、エリス」
「ええ、さよならですわリュート」
「おう〜」
皆が帰ったあと、俺は学園長室へ向かった
「失礼します」
「どうぞ、そこら辺に座っていいわよ」
「では失礼して、それで話ってのは…」
「この前の模擬戦の謝罪をしたいと思ってね、いきなり襲いかかったりしてごめんなさい…反省してるわ」
「い、いえ別に全然気にしてないというか…逆にやりすぎたというか」
「ふふ、私ね気づいたの…貴方が弱いって言ってくれて、自分が強がってただけだということを」
「ロミリア…先生…」
「ずっとレディッサに嫉妬してんだわ、天才でなんでも出来るし。私はそれが羨ましかった」
ロミリア先生は自虐気味に笑った
「本当は…ただ追いつきたかった…追い付けなきゃまたあの時のように話せないと思っていたの」
「そんな事…レディッサ先生は気にしないですよ、きっと」
「そうね…ようやく気づいたわ、数百年掛けてね」
こちらを向き真剣な眼差しで見る
「だから…その…お願いなんだけど…わ、私がレディッサが会いたいと…そ、その伝えて…欲しいの!」
モジモジと照れながら言うロミリア先生、まるで恋した中学生みたいだな…
「別に構いませんよ」
「ほ、ほんと?」
「ええ」
「そ、そう!ありがとう!良かったわ…」
見るからにテンションが上がっているロミリア先生、実はレディッサ先生とは凄く仲が良かったのかもしれないな
「…あ、そ、それと…もう1つお願いがあるんだけど…」
「なんでしょう?」
「模擬戦の時にした魔力を流れを変えるあれ…もう一度して欲しいの」
「…ええ?!いや…あれはもう封印したというか」
「そ、そこを何とか!もうあれを体験したら戻れないの!」
中毒になっておられる!や、やっぱりヤバい奴だったんだあの魔力干渉で魔力をぐちゃぐちゃにするのは…
「い、いやあれは封印したので無理です!」
「お願い…!何でもするから!」
「ダメです!」
そんな事で何でもしないでください
「あれを味わいたくて、手が震えてきたの…!」
それあかん症状や!
「…こうなったら…無理やりにでも…!」
ロミリア先生がこちらに飛びかかる
「うわあ!ちょ…やめ…!」
ロミリア先生が上に乗ってきて身動きが取れない
「ぐへへ…あの感覚を…さぁ…さぁ…!」
「ひいい…やっぱりレディッサ先生の友人だ…?!」
「失礼します、生徒の資料についておはな…し…」
「…あっ」
「…し、失礼しました」
「ち、違うの!これは…とにかく違うの!」
「…」
きっと噂…広まるんだろうな…はぁ…学園生活ってこんなにキツイんだなぁ…
リュートは静かに目を閉じ、泣くのであった
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