第八十九話
「ふんふん〜」
「随分上機嫌ですのね、リュート」
「まぁね〜、なんたって学園に合格してたんだ!喜ばずには居られないよ」
俺とエリスは庭園で花の手入れをしながら学園について話していた
「でも不思議だよなぁ〜…筆記めちゃくちゃ悪かったはずだし、何より学園長をあんな事に…」
「きっと実技が素晴らしかったのですわよ」
「そうなのかな…?そういえば、エリスも合格したんでしょ?」
「ええ、実技で少し緊張しましたけど。無事受かって良かったですわ」
「ルシュも受かったし、皆で通えるから良かったよ…危うく1人で過ごさなきゃ行けない所だった」
「ふふ、リュートならいけると信じていましたわ」
「はは、ありがとう」
この時間が1番のんびりできて幸せだな、最近は邪神対策や学園の事で考えすぎてたし。気を休められるよ
「あら…お邪魔だったかしら?」
「お母様!べ、別に邪魔じゃないですわ!」
「セレナ王妃…身体は大丈夫なんですか?」
「ええ、リュート君のおかげでかなりいい調子よ」
微笑みながら頭を撫でる
勇者として覚醒した後、俺の回復魔法は特癒回復まで強化され。それをエリスとルシュのお母さん…セレナ王妃に使ったら完全とは言えないけどたまに出歩く位には回復出来た
「完全には治りきってはいないんですから無茶はダメですよ?」
「そうね…気をつけますわ、ありがとうリュート君」
エリスも大人になったらセレナ王妃みたいに綺麗になるんだろうな〜
「お母様とこうして一緒に話せるのもリュートのおかげですわね」
少し距離を詰め、微笑むエリス
「あらあら、やっぱりお邪魔のようですわね…オホホ」
ニヤニヤとこちらを見ながらセレナ王妃は去っていった、それでいいのかセレナ王妃…
「全く、お母様ったら…さ、続きをしましょうか」
「あはは…そうだね」
俺はエリスと穏やかな時間を楽しんだ
…
…
「マリン姉ちゃんこんにちは」
「リュート君!こんにちは、どうしたの?」
俺はマリン姉ちゃんとイリスに会いにギルドへと来ていた
「もうすぐ学園に通うからさ、会える時間がへりそうだから伝えにきたんだ」
「そうなのね…残念だけど仕方ないわ、本当あの魔法学園に合格するなんてやっぱりリュート君は凄いわ」
「ふふん、そんな事ないよ」
『鼻が伸びてますよ』
「ふふ、でもたまには会いに来てね?私もイリスちゃんも待ってるから」
「うん、必ず。そういえばイリスは…」
「イリスちゃんならもうすぐ来るんじゃないかしら」
「ふぁぁ…眠い…」
「噂をすればね」
「おーリュート!どうしたんだよ今日は、クエストでも受ける?」
「それもいいけど、今日は学園に入学するから会う頻度が減る事を言いに来たんだ」
「ええー…そんなー、ただでさえこの前久しぶりに会ったばっかりだってのにー」
「まぁもう会えない訳じゃないからさ、暇が出来たら会いに行くよ」
「…分かった」
イリスは少し拗ねてるようだ
「はは…」
「…そうだ、今度リュート君の入学祝いに一緒にご飯でも食べましょうか!」
「本当?いいね!久しぶりにマリン姉ちゃんの料理が食べたいよ」
「うん、気合い入れて作るわ!」
「マリンの料理は美味しからなぁ…私も楽しみだ」
「イリスは毎日食べてるでしょ…」
「それもそうか」
「ふふ、何の料理を作ろうかしら…?ハンバーグ…?シチューに…そうだ、前にレディッサさんが美味しいって言ってくれたビーフシチューでも良いわね」
「…マリン姉ちゃんってレディッサ先生と面識あったっけ…?」
「…あ」
「そ、そそりゃあるだろ!なんたってレディッサ様なんだから!」
焦りすぎて訳分からないこと言ってらっしゃる
「た、たまに魔法のお、お話を聞かせてもらってるだけどうん、そうだわ」
「…なるほど?」
「そ、それよりクエスト受けないか!久しぶりにやろうぜ!」
「久しぶりって…つい2日前に一緒にクエストを受けたと思うけど…」
「そ、そうだっけ…?と、とにかく良いじゃないか。ほらほら!」
「わっと…じゃあマリン姉ちゃん行ってくるよ」
「き、気をつけてね〜」
「ふぅ…」
マリン姉ちゃんとイリスはお互いサムズアップをする
「いやそういうのは隠れてしなよ…」
何をそんなに隠してるんだろ?レディッサ先生もそうだし、全く…話してくれても良さそうなのに…
『知らない方がいい事もあるかもですね』
ステさんは知ってるの?
『さて、どうでしょう』
この反応…知ってるな
『ただいま、ステは留守にしております。ご要件は後ほどお伝えください』
嘘が下手か!はぁ…まぁいずれ聞いてみるか
…
…
「それで、何のクエスト受けたの?」
「うーんとね、これかな」
「ふむふむ…黒き魔物の討伐…?名前、見た目不明…目撃者によると黒き姿が去っていったとの事…」
なんじゃこりゃ、凄いヤバい匂いがする
「これ…明らかにヤバいよね」
「そ、そうかな…?私達なら平気でしょ…うん…」
「平気かなぁ…何事も無いことを祈ろう」
「うん、大丈夫大丈夫…!じゃあ目撃があった所まで行こっか…?」
「おっけ」
そうして目撃があった場所を探すこと数時間、未だに見つからず諦めて帰ろうとした時だった
「はぁ…いない…」
「黒色のくの字も無いよ…こりゃ無理だな」
「そうだね…今回は帰ろっか…?」
「そうし…よ…」
『前方、3m先。小型の魔物を発見、見た目は…黒いです!』
「いた!黒い魔物だ!」
「え…どこどこ…?」
「魔力感知・魔力瞬進・魔光縛り!」
「ピニャ!」
魔光縛りで動きを封じ、姿を見てみる
「…これが…魔物…?」
「…そうだね…多分」
そこに居たのは、黒い猫のような魔物だった
「…これを討伐しなきゃならんのか…?」
流石に良心が痛みすぎる
「わ、私も…無理そう…」
「ニャー…」
「なんだ怪我をしてるじゃないか」
治すか?いや魔物だし…でもなぁ…
「ニャー」
「くっ…そんな目で見つめないでくれ…特癒回復」
「ニャフゥ…」
「…治しちゃったね…」
「うん…しょうがない、俺達には無理だった…逃がしてあげよう」
魔光縛りを解く
「…帰ろっか…」
「うん」
俺達はギルドへと帰った、初めてのクエスト失敗だな
「…ただいまぁー」
「あら、随分遅かったわね」
「…それが…」
「…ん?可愛い猫ちゃんね、その子どうしたの?」
「えっ…」
後ろを振り返るとそこには、先程の魔物がいた
「ちょっ!ヤバい、着いてきちゃったよ!」
「あわあわ…ど、どうしよう…」
「ニャー!」
「ふふ、随分リュート君に懐いてるわね〜、可愛いわ〜よしよし」
「ニャフゥ…」
「ど、どうする…?」
「うーんと…どうしよう…」
「もしかしてこの子が黒い魔物の正体?」
「え…ああ…うん…」
「なるほど、多分依頼主はこの子を魔物と勘違いしちゃったのね…いいわ私から依頼主に伝えておくわね」
「ああ…うん、ありがとう」
本当に猫なのか…?
『100%魔物ですね、害は無さそうですけど』
ですよねぇ…でも俺が生み出しといてあれだけどこんな奴いたっけか?
『多分変異種なんじゃないですかね?』
そうか…まぁ害が無いならいいか
「それで、この子はリュート君が飼うの?」
「え、うーん…俺学園があるからなぁ…連れては行けないだろうし」
「お城で飼えないの?」
「どうだろう?聞いて見なきゃ分かんないかな」
「じゃあそれ次第って事だな、ダメだったらまた考えよう」
「そうだね」
「ふふ、いい子ね」
「ニャフニャフ…」
それにしても変異種か…何の変異種なんだろ?
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