第八十七話

「さぁ、殺りましょうか…!」


「いやいやストップ!いきなりすぎて脳が追いつけないんですけど!」


「あら、あの魔女から何も聞かされてないの?」


「いや…聞いてますけど、…貴女が学園長ですか?」


「ええそうよ、このエルシュラ魔法学園の創設者にして学園長のロミリア・ランゼルクとは私の事ね」


桃色の髪の毛をなびかせて、髪と同じ色の瞳がこちらを見つめる。綺麗な人だけどお近付きにはなりたくないな


「なるほどー、じゃあ俺はこれから受験があるのでこれで…」


「行かせるとでも?」


「ですよねー…」


「あなたにはこれから模擬戦を申し込むわ、勿論拒否権などは無い」


「遠慮したいなー、凄く遠慮したい」


「断ったら即刻不合格にするから、そのつもりで」


「横暴過ぎる!?」


「ふふ、それが嫌なら私と戦いなさい!さぁ!」


くそっロディ先生みたいなバーサーカータイプかよ、やだな〜…絶対戦うまで付きまとってくるじゃん…


「なんだなんださっきの音は」


「あそこのに居るのって勇者様じゃない?素敵だわ〜!」


「おい学園長もいるぞ、何事だ?」


さっきの爆音で人も集まってきてる、余計面倒くさくなったな…ああ…家に帰りたい


「人も集まってきたし丁度いいわ、リュート・レギオス!改めてこの私と模擬戦をしなさい!」


「おいおい学園長と勇者様が模擬戦だってよ!」


「まじかよ!そりゃ見なければ!」


「勇者様が勝つだろうけどね!」


「戸惑う勇者様も素敵…」


『これはやるしか無さそうですね』


「はぁ…今日はついてないなぁ…分かりましたやりましょう…」


「ふっふっふっ…了承したわね、貴方が負けたら下僕としてこき使ってあげるわ。考えるだけでゾクゾクするわね!」


何ちょっと条件付け足してんのこの人…まぁ勝てばいいけど


そして俺と学園長の模擬戦が始まった、大量のギャラリーが見てる中で…




「一度、勇者とやらと戦ってみたかったの。あの冷徹の魔女の教え子と聞いたら尚更…ね」


「は、はは…」


「さぁ、貴方の実力を私に見せてみなさいリュート・レギオス」


「…ああ、なんでこうなった…」


「ルールは相手が負けを認めるまで、それ以外はなんでもありよ」


「はぁ…分かりました」


「それじゃあ…審判、頼むわ」


「は、はい!学園長」


強制的に審判にさせられた試験官の人により始まりの鐘が鳴る


「始め!」


「あまり乗り気じゃ無いみたいだし、早めに終わらせちゃいましょうか。炎魔法:神炎」


とてつもない量の魔力が試験場を包み込む


『まずいです、あれは回避出来ません』


「なんなんだよ全く…勇者の力をこんな所で使わせるなよな…纏い:剛・魔力感知・魔力瞬進」


一瞬にして炎が試験場を包む、あんなに広いのに…流石はレディッサ先生と同等と言われるだけあるな


「だけど…そんなのじゃあ俺は倒せない」


炎を受け止めると魔力瞬進で学園長の後ろに回り込む


「魔光縛り・魔力干渉」


動きを封じて魔力干渉で魔力の流れをめちゃくちゃにする


「くはっ!な、何をしたの!ま、魔力が言うことを聞かな…」


「魔力の流れをめちゃくちゃにしたんですよ、どうです?魔法撃てないでしょう」


「くっ…舐めない…事ね!」


「っ…」


魔力干渉が弾かれた、マジかよそんな事出来るのか


「ちょっと癖になりそうだったけど、甘いわね」


こちらを顔を赤めながら睨む学園長、前から気になってたけど魔力干渉って癖になるの?レミシアも言ってたし…ふ、封印した方がいいのかな


「これは避けれるかしら?複合魔法:重力操作」


複合魔法?!まさかこの人も無属性魔法を!


『リュート様!』


「ごふっ…!」


俺は地面に叩きつけられ、意識が飛かける


「んふふ、上から見下ろされる気持ちはどうかしら?屈辱的?悔しい?ああ…ゾクゾクしちゃう」


学園長は俺の頭を踏みつけ、笑みを浮かべる


『内蔵の損傷を確認、重力により肋の骨折を確認、このままだと死の危険があります』


なんで…俺試験受けに来ただけで死にかけてんだよ…

ふざけるなよ…!身体中が痛え!


「ごほ…ごほ…くっ…」


「…しかしあの魔女も落ちぶれたわね〜、あの魔女の教え子だしもうちょっとやるかと思ったけど…ふふ、私の方が強かったみたいね」


「ぐ…う…」


「本当、あの魔女は出来損ないね」


レディッサ先生が出来損ないだと…?俺の大切な人を

馬鹿にしたのかコイツは…!


「ぐぅ…はぁ…はぁ…」


「まだ、動ける元気があるのね。面白いわ!余計に貴方を壊したくなったわ…!うふふ」


「…特癒回復」


「へぇ…それが光魔法…ふむ気になるわね…この模擬戦が終わればじっくり調べてあげる」


妖艶に笑いながら炎をこちらに向ける


「ふぅ…レディッサ先生は出来損ないじゃない」


「そうかしら?私に比べたら虫けら同然よ」


「…アンタ、レディッサ先生より弱いですよ」


「は?今なんて?」


笑いが引き攣る、表情が消え怒りが顕になる


「アンタは弱いって言ったんだよ」


レディッサ先生の強さが分からないアンタは尚更な


「…殺す、調子に乗ってるんじゃないわよ…!私は強い!あの魔女よりも!ずっとね!」


炎が吹き荒れる、熱気だけで殺せる勢いだ


「複合魔法:重力玉:炎!」


炎が一点に集まり超巨大な玉へと変化した


『あれは…周りの物を全て吸い込んでいます。近ずいたら吸い寄せられてしまいますね』


吸い寄せられたら炎に巻き込まれて死ぬな、なんちゅう恐ろしい魔法を編み出してんだ?この人は


「…学園長と言うより、ヒステリックサイコパス女王様って感じだな」


「死になさい!死んで私の強さを実感するのね!」


炎の玉がこちらへと迫る


『どうしますか?』


「…聖剣・迅鈴刃流:二式:鈴静居合い」


周りが吸い込まれ、空間すらも歪んでいるように見える巨大な玉が俺の目の前まで迫りそして…


…2つに切れた


「…なんですって…?魔法を…切った…?」


「…魔力感知・圧縮追魔弾:10連」


「っ…!」


見えないのに避けるか、でもそんなのは予想がつく


「…なに?!きゃあああ!!」


魔力感知のおかげで対象を追尾出来るようになった圧縮魔弾の強化版だ


「…かは…そんな…私が…負けるなんて…今まで負けた事なんて…1度もないのに!」


「アンタの負けだよ、もう終わりだ」


「…嫌よ…まだ…負けたくない!」


「…しつこいぞ」


今レディッサ先生を侮辱されて最高潮にムカついてるんだ、これ以上怒らせないで欲しい


「ひっ…」


「…謝れよ、レディッサ先生を馬鹿にした事」


殺気をこれでもかと飛ばす


「…うう…あの魔女が…悪いのよ…うっ…うっ…」


瞳から涙がこぼれる


「ふええ…レディッサなんか…謝らないもん…!うええん…勇者が怖いよぉ…」


「なっ…」


小さい子供みたいに泣きじゃくる学園長、あの時のレミシアですらこんなに泣かなかったぞ


「ええ…ちょ…皆見てますから…」


どうすんだよこれ!なんか俺が悪いみたいじゃん!謎に罪悪感が芽生えるからやめてください!


「ちょっと威圧したのは謝りますから!泣き止んでください!学園長!」


「ふええん…いじめるんだ〜!」


「人聞きの悪いこと言わないでください!」


全くなんなんだよこの人は、あんなに女王様風の性格だったのに…今じゃ3歳位の子供みたいじゃないか


「…これどうなったんだ?」


「ゆ、勇者様の勝ちかしら?」


「あたふたする勇者様も素敵ね…」


模擬戦を見てた人たちも反応に困っている


「…え、ええと、こ、この模擬戦、リュート・レギオス様の勝利です!」


こうして俺と学園長の模擬戦は何とか俺の勝利で幕を閉じた


「うええん…レディッサなんて嫌いよぉ〜…ぐすっ…」





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