第八十六話

「これより筆記試験を始める!」


謎の俺ヨイショに心が既にボロボロの状態でいよいよ

筆記試験が始まった。最難関と言うだけあって問題の内容は殆ど専門的な問題ばかりだった


「…ちっ、さっきので殆ど覚えたものぶっ飛んでる」


なんなんだあの歓迎は、まずなんで見た目と名前と俺が神父を倒した事が広まってるんだよ


あの時は黒いオーラのせいでほぼ夜の状態だったし、顔や見た目は分かりにくかったはずなんだけどなぁ…


「これからはマスクとサングラスでもするか…」


そんなものこの世界にはないけど


そうして四苦八苦しながら筆記試験は終わりを迎えた

結果は見なくても分かるぐらいボロボロでした


「…ああ…死んだ…絶対不合格だ…俺社会的に死んだ…表歩けない…」


「だ、大丈夫ですのリュート…?」


「エリス〜…俺ダメだったよ…」


「よしよし、それなら私が王女として養ってあげますわよ〜」


「うん…ありが…いやそれは遠慮します」


王女に養われる勇者とか本当に社会的に死亡するから


「ちっ…流れでいけると思ったのですけど」


君エリスだよね?あの純粋な目をしたエリスだよね?

2年でここまで人は変わるのか…俺は震えた


「…ふぅ…何とか乗り切ったぜ…」


「ルシュ…筆記どうだった?」


「難しかったけど、合格点は取れてると思うぜ」


「ちくしょう…薄情者…!俺1人落ちるんだ…」


「まぁまぁ、まだ実技があるじゃないか!まぁ俺は実技も合格するけどな!」


「ちっ…髪の毛燃えればいいのに」


「酷いな?!」


「冗談だよ…はぁ…そういやエリスも筆記大丈夫だった?」


「ええ、手応えはありましたわ」


「そっか…よし!何とか実技で挽回しよう!」


「その調子だぜリュート、お前ならいける」


「ふふ、リュートはこうでなくちゃね」


「「勇者様素敵…!」」


「ひい…また大量の視線を感じる…俺先に試験場に向かってるね」


「私はまだ時間がありますしここで休んでいますわ」


「俺も〜…頭使いすぎた…」


「了解、先に待ってるよ」


「おうよ〜」


「気をつけてくださいね?変な虫に絡まれないように…」


「は、はい…」


俺は視線を避けるように実技試験場へ向かう


「はぁ…あの大量の尊敬の眼差しに慣れなきゃならないのか…キツい…」


『リュート様の苦痛の顔、面白かったですよ』


相変わらず煽りよる、ほっとけ!


『それにしても筆記は散々でしたね、私を使えば良かったのに』


ステさんを?


『私は精霊と言ってもほぼ機械のようなものですし、記憶する事ぐらい朝飯前ですよ』


ええ…それをもっと早く言ってくれれば…


『ふふ、慌てるリュート様を見てたらついつい言いそびれたのです』


性格悪すぎて俺びっくりだよ!まぁ聞いてても頼みはしなかっただろうけどな


『何故です?』


だって、ズルじゃんそんなの。必死に勉強して挑んでる人に申し訳ないし、ズルはしたくない


『…全く変な所で真面目なんですから』


変な所ではなく、いつも真面目です


『ハイハイソウデスネ』


本当1回ぶん殴っていいかな?いいよね?


『…前方、同じ受験者と思われる方が絡まれています。どうしますか?』


話をそらしたな、でも絡まれてるのはほっとけないし。久しぶりのテンプレ展開に俺感激だね


「おいおい、俺にぶつかっておいて謝罪で済まされるとでも思ってんのか?おお?」


「す、すみません…!わざとじゃ…!」


行ってみると学園の生徒と思われる男子生徒達が受験者の男の子に絡んでいた


「へっ、そんなのどうでもいいんだよ!おら金だよ金、金さえやりゃ穏便に済ませてやるって言ってるんだよ!」


「そんな…僕お金持ってないです…!」


「嘘をつくなよ?んん?その持ってるガラクタはなんだ?」


「や、やめて!それを返してください!」


「けっ、汚ねぇゴミじゃねぇかよ。これじゃ売れねぇな」


生徒は男の子が抱えていた物を取ると地面に落とし、足で踏もうと足を上げる


「いや…やめて…!」


「はいそこまで」


「なに…?」


俺は地面に落ちた物を取ると男の子に返す


「はい、これ。ちょっと汚れちゃったね…」


「えっ…あっ、ありがとうこざいます…」


「お前…いつの間にそこに居た…?」


「見えなかったぞ… !」


「まぁまぁ彼も謝ってますしここはこの辺で許してやってくださいよ」


冒険者になる時に絡まれた経験がここで活きるとは、

穏便に済ませるのが一番だと言う事は経験済みだ


「ああ…?許せるわけねぇだろ?ならお前が金を払えよ…」


あれぇ…穏便に済ませられない?どしてぇ?


「俺も今日は持ち合わせてなくて…謝罪ならいくらでもしますから…靴舐めます?」


「なんだこいつ気持ち悪いな!靴なんて舐めなくていいわ!金だ!持ってねぇならボコすしか無いようだなぁ!?」


あら残念、俺の靴舐めスキルが役に立つ日が来たと思ったのに。そんなの持ってないけど


「あ、あの…逃げた方が…僕大丈夫です…!」


「そんな震えながら言われても説得力ないよ…」


「うう…でも助けてくれた貴方に迷惑はかけたくないです…!」


「おら!サンドバッグになれ!」


「大丈夫大丈夫…俺、勇者だし」


「えっ…?」


俺は殴りかかった生徒Aの拳を避けると、生徒Aの顔に向かってデコピンを放つ


「ぎゃっ!!」


生徒Aは遠くへ吹き飛んだ


「なに…なんだこいつは…!」


「えっ、予想より結構吹き飛んだけど大丈夫?頭蓋骨粉砕してない?」


彼が綿あめのように軽かったと信じておこう


「くそっ…行くぞ!」


生徒達は気絶しているAを引きずりながら去っていった、…その持ち方だと生徒Aさんの髪の毛にダメージが入りそうだなぁ


「あ、あのありがとうございました!」


「いいよ、これくらい。怪我は無かった?」


「はい、何とか」


「それなら良かった、じゃ、俺は行くよ」


「あっ、あの!」


「ん?」


「もしかして貴方も受験者…ですか?」


「うん、そうだよ」


「やっぱり…!が、頑張ってくださいね!」


「ん、君もね」


「は、はい!」


そうして俺はドヤ顔をしながら試験場へ向かったのであった


『なんでドヤ顔してるんです?』


いやーまさかテンプレの様なシチュに出会えるとは思わなかったからさ、カッコつけちゃった。最後はドヤ顔が隠しきれなかったけど


『…あの子が見たら幻滅間違いなしですね』


ば、バレてないはず!多分…


そうこうしている内に実技試験場へと着いた


「おお〜広いな〜…」


てか広すぎる、試験場だけで俺の屋敷5個分位あるんだが?学園全体の広さどうなっとんねん


ちなみに東京ドームに換算すると3個分位の広さです


うんよく分からないね


「…へぇ、もう来たの?あの魔女の教え子にしては真面目じゃない」


『背後から炎魔法、かなりの大きさです』


ああ…なるほどー…確かにレディッサ先生の言った通りだー…


『現実逃避は後ですよ』


「魔力瞬進」


俺はその場を離れると距離を離す。爆音が聞こえたと思ったら、俺が居た場所にはクレーターができていた


「…そうでなくてはねぇ…ふふ、殺りがいがあるわ」


「…はぁ…なんで俺の所にはイカれた奴しか集まんないんだよ!」




俺の悲痛な叫びが広い試験場へ響いた

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