第八十五話

魔法学園とは、首都ミラノワにある魔法の才能を持つ子供達が通う最難関の学校である。


一つ、入学試験は筆記と実技の2種目の点数により合否が決まる


二つ、学園は中等部と高等部に別れ、中等部は3年、高等部は4年を魔法学園で過ごさなければならない


三つ、実力が無いものは即退学とする


毎年の合格者は受験者の約20分の1である



「これが君がこれから受ける魔法学園の大まかな説明だよ」


ロディ先生はニコリと微笑む


「…うん、無理ですね。俺帰ってもいいですか?」


いや想像の500倍キツそうじゃん!なんか誰でも入れるのかな〜なんて思ってたらとんだ超超高難易度学園だったよ!


「大丈夫君ならできるできる」


「不安でしかないんですけど…」


「とりあえず実技は余裕の満点だと思うよ?」


「筆記は?」


「君…魔法の勉強してたっけ?」


「レディッサ先生から少し聞いた程度ですね」


「…リュート君、学園に通うことが全てじゃない。落ち込んじゃダメだ」


「ロディ先生が諦めた?!」


あの君ならやれるマシーンのロディ先生が…


「もうダメだ…おしまいだ…」


「ま、まだ今から勉強すれば間に合うかも…」


「明日ですよ?試験」


「…勇者の試練について話そうか」


「とうとう現実逃避までしちゃったよロディ先生」


ええ〜誰か学園の入学試験は筆記試験もあるからって教えて欲しかったよ!前日に知ってどうするよ!


「いや〜学園の事はすっかり頭から抜けていたよ、勇者として鍛えることばかり考えていてね。はは…」


1回ぶん殴って良いでしょうか、最初の優しそうな人のイメージが今じゃサイコパスクソ野郎に早変わりだ


「と、とりあえず試験範囲の資料は全部図書室にあるから見てくるといいよ。ぼ、僕はちょっと団長としての仕事があるから…これで!頑張って!」


「あ、逃げやがった!待て!サイコパス団長め!」


「おい、また団長とリュートが遊んでるぞ」


「本当仲良いよな、しかしリュートが来てもう何年も経つのか…早いものだ」


「ああ、最初はあんな子供が勇者なんて信じられなかったが今ではあの子以外に勇者は考えられないな」


「うんうん、リュートになら世界を任せられるな」


「まぁ、俺たちがどうこうできる話じゃないんだがな」


「それもそうだ、はっはっはっ!」


「何訓練中に呑気に話しているのです?」


「ふ、副団長!こ、これは別に」


「あなた達はどうやら私自ら調き…訓練をしなければならないようですね」


「ひいい…」


「お助けを…!」


「「ぎゃーーー!!」」


こうして団員たちの日常は続く




「お前…筆記の勉強してなかったのか…」


俺は図書室で筆記の勉強をしていた、その場にいたルシュにも手伝って貰いながら


「知らなかったんだよ…誰か教えてくれたっていいのにさ…」


「確かにお前体を鍛えてる所は常に見てたけど、机で勉強してる所は1度も見なかったな」


「…そういうこと、まぁ俺も勇者の事で頭いっぱいで勉強なんて1ミリも考えなかったんだけどさ」


「それで?資料見た感じいけそう?」


「微妙」


魔法の専門的知識が多くて覚えるのは困難だな…それでもやるしかないけど


「大体量がおかしいだろ、分厚い本が6冊位あるぞ」


「歴史や魔法の基礎、応用全部範囲だからな〜俺も覚えるのに苦労したぜ…」


「ルシュは全部覚えてるの…これ」


「まぁな〜、俺にかかればこんなもの余裕よ」


「くそう…何とか覚えなければ!」


今まで死線を越えて来ましたが勉強が1番の難敵でした。誰かヘルプ〜




次の日


「いよいよだね〜」


「そうだねー」


「緊張するなー!」


受験者達が学園へと集まる、そこに…


「おい、あの馬車って王族の…」


「やべぇ、今年は王子と王女も受けるのか」


「噂によれば勇者様も受けるらしいぜ?」


「マジかよ!こりゃ今年の1年はとんでもないメンバーになるぞ」


「さ、着きましたわよ、行きましょう?お兄様、リュート」


「あれってエリス王女だよな」


「えっめちゃくちゃ綺麗、本当に同い歳か?」


「俺…死ぬ気で合格しよう…」


「エリス待ってくれよ〜、俺ちょっと腹痛くなってきた…!」


「全く、お兄様は相変わらず本番に弱いんですから」


「あれってルシュ王子よね!かっこいいわ〜」


「心無しか光るオーラが見えるわ!眩しい…!」


「ルシュ王子様見れただけでもう悔いはないわ…」


「…魔法の基礎である魔力が…ぶつぶつ…」


「おい…だ、大丈夫かリュート?」


「ぶつぶつ…うん…ぶつぶつ」


「こ、これはかなり重症ですわね…」


俺は1日で頭に叩き込んだ内容を繰り返し呟く、他人から見たらただのヤバいやつだろう


「目にクマが出来てるし…ゾンビみたいだぞ…」


「おい…あれが、勇者様か…!」


「ええ、噂と同じ容姿だわ!」


「ぶつぶつ…ん?」


俺が馬車を出ると雰囲気が変わった?まぁ今の俺はヤバいやつだろうし仕方ないか


「「「勇者様〜!」」」


「…?!」


「きゃー勇者様よー!あの天才で勇敢なリュート様だわ〜!」


「勇者様がこちらを見ていらっしゃいますわ!わ、わ、私のことかしら!」


「何言ってるのよ私の事を見ていらっしゃるのよ!」


「勇者様だー!俺!勇者様に憧れて短剣使いになりました!」


「あの街の危機を救ってくださった勇者様と同じ空気を吸えるなんて…俺ここで死んでもいい…」


え…なんかルシュ達の時よりめちゃくちゃ慌ただしくない?


「「勇者様!勇者様!」」


勇者様コールまで始まったんだけど、いやおかしいおかしい王子と王女をもっと称えてあげて。一応勇者でも一般市民みたいなものですよ?


ほらルシュ達だって困惑して…


「ま、こうなるわな」


「流石リュートですわね」


困惑してなかった、いいのかそれで。君たちいずれ国のトップになるんだぞ?


「何故こんな事に…」


「お前、本当何も知らないよなぁ…リュートは今や街の…いや国の人気者なんだぞ?教会の医療技術の独占を解決したり魔物から街救ったりな」


「そうですわ、街の危機を救ってるんですもの。当然ですわ、まぁ…余計な虫がつく心配は増えますけど」


エリスがドス黒いオーラを出しながら受験しに来た子達を睨む、や、やめてあげて皆震え上がってるから


「はぁ…覚えてた内容全部吹き飛びそう」


「勇者様なら必ず合格でしょうし私達も頑張りましょう!」


「そうだな!勇者様なら最難関でも余裕だよな!」


「「勇者様!勇者様!」」


プレッシャーやめてぇ…!死んじゃう!俺プレッシャーで死んじゃうから!


「いやあああ!誰か俺を殺してくれぇ!」


人見知りな俺には最大級の拷問であった


「…ふふん、リュートならこれぐらいの歓迎じゃなきゃダメよね!」


学園のある教室で、全てを見ていたある人物…それは


「でも…まだまだリュートの凄さを伝えなきゃ!待っててねリュート!お姉ちゃんがリュートの為に頑張るから!」


サラ・レギオス、この騒ぎの大体の犯人である


「とりあえず勇者としての凄さは広めたから次は何を広めよっかな〜、リュートのいい所がありすぎて困っちゃうな〜」




リュートの苦労は続く

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