第七十七話

「…バーンの力を貰ったからか…?」


本当に1人に戻ったんだな…俺は元魔王で今は勇者なんだよな、まさか見た目まで変化するなんて驚きだ


「さ、行こリュート」


「うん、そうだね」


「でもどうやって探すの?もう3日も経ってるしこの辺には居なさそうだけど…」


「それは…いや、秘密」


姉上に闇魔法なんて説明したらとんでもない事になる

ここは適当に誤魔化そう


「ええ〜教えてくれたっていいじゃん〜!」


「うーん…そうだな〜…あっ!あそこに俺とミリシャの特性ぬいぐるみが!」


「なんだって?!どこどこ!私にくれ〜!」


今のうちに…



「闇魔法:影探り」


影探りは自分の影を使って影のある場所を広範囲に探ることの出来る魔法であり、どんなに遠く離れた場所でもそこに影さえあれば調べる事が出来る。


「でも手当り次第に探したら流石に時間がかかる…何か手がかりがあれば…」


アイツらの特徴は…黒いフードで顔を隠していて珍しい形のナイフを持っていた。後は…


「匂い…」


そうだアイツらからは独特の薬品と香水が混ざったような匂いがした…何処かで嗅いだことがあったはず


確か冒険者をしていた時だ、どこで嗅いだ?思い出せ



「独特の匂いをさせ俺たちを襲う理由があって冒険者時代に会ったことがある奴」



そんなの1つしかないじゃないか、まさか本当に襲ってくるなんて…本当腐りきってるな


「教会か…!」






「…どこ…?助けて…お兄ちゃん…お姉ちゃん…」


「勇者の妹を連れてきました」


「ありがとう、同士よ」


「はっ…神父様…」


「これで勇者は私の元へ来るでしょう…その時が我が神の計画が進む時…彼女にはその生贄となってもらいましょう。くは…くはは!はははっ!」


「お兄…ちゃん…」


ミラノワに教会を構える女神エルシュラを信仰する教団、エルシュラ教会


しかしそれは表向きの肩書きに過ぎなかった…彼らが本当に信仰していたのは…


邪神ベル・ブランであった




「…よし影を教会の方へ」


俺の影がとてつもないスピードで教会の方へ向かう


「当たってるといいけど…」


そろそろ着くか…


その時、前世で感じたアイツの黒いオーラの気配を影が察知する。そしてミリシャの気配も


「っ…!」


アイツの気配!くそ今回もアイツの仕業か!操るのは魔族だけじゃ無かったのか


「このままじゃミリシャが危ない…」


レアの様にはさせてたまるか…!


「姉上!ミリシャを見つけた!行くよ!」


「リュートのぬいぐるみ…ミリシャのぬいぐるみ…ぐへへ…えっ?見つけたの?!分かった!」


「全速力で行くから!追いつけなさそうなら皆と城の人達に教会の仕業だって伝えて!」


「えっ!ちょっ…リュート!?はや?!」


「無属性魔法:魔力瞬進!」


あの時の感覚で使ってみたけど、やっぱり速いな。何も考えずに…か、セバスチャンの言ったことが何となく分かった気がする


…そういや今のステータスはどうなってるんだろう


「ステータス」


名前 リュート・レギオス


職業 A級冒険者


称号 転生者・強欲の化身・元魔王


適性 光・闇


体力 凄い


魔力 超凄い


力 中々凄い


防御力 凄い


速さ 凄く速い


うん…色々ツッコミどころ満載だね、まずステータスさんイメチェンしました?めちゃくちゃアバウトになってますよね?数字で教えてくださいよ、数字で


なんなの凄いとか超凄いって、どのくらい凄いか分からないのよ。もしかしてステータス上がりすぎてやる気無くしちゃったの?それとも出番が少なかったからなの?


まぁ…別にあんまり見ないからいいか…


称号 転生者・強欲の化身・元魔王・New:薄情者


ステータスさん俺の心の声聞こえてんの?!てか前から気になってたけどステータスさん生きてるの!?


「はぁ…これからはステータスについては余計な事は言っちゃダメだな…」


これ以上変な称号増やされたらたまったもんじゃない



そうして俺はステータスさんと戯れながらも教会へと着くのであった。



「久しぶりだな…まさかこんな泥棒みたいな形で来るとは思わなかったよ」


俺は裏口から気配を消しながら潜入していた


「…相変わらず趣味の悪い内装だこと…」


見てるだけで胸焼け起こしそうだ、城より豪華ってどういう事だよ


「…」


「あ、どうも」


俺はあの時の金髪の薄汚れた少女に挨拶をして潜入を続ける…


「…いやバレた?!」


「…?!」


「あ、ごめん大声出しちゃって」


「誰かいるのかい?」


やばっ!大声で気づかれた


「…!」


少女は後ろの柱を指さす


「えっ…見逃してくれるの?ありがとう…!」


俺はすぐさま柱へと隠れる


「なんだアンタかい、こんな所でサボってるんじゃないよ!さっさと床を綺麗にしな!」


現れたのは教会のシスターだった


「…」


少女は頷き床を雑巾で拭いていく


「全く、誰がアンタみたいなゴミを養ってあげてると思ってるんだい?私達エルシュラ教会の恩を仇で返すなんて…本当ゴミは困るね」


「…」


「なんだい?その目は!喋る事も出来ないゴミが私をそんな目で見るな!」


シスターが少女を叩こうと手を振りかざす


「…!」


「今何をしようとした…あんた」


寸前の所で俺はシスターの手を掴む


「な…誰だ!お前は!」


「誰って…?俺の名は勇者リュート・レギオス!その腐った脳で覚えておけテンプレ悪役シスター!」


「…!ぁ…ゅ…」


掠れた声で何かを伝える少女


「…話せないんだろ?いいよ無理に話さなくても、こんなテンプレ悪者は俺が倒してやるからさ」


「…」


少女は涙を流し頷く


そんなに辛かったのか、これはミリシャ助けて終わりじゃ済まないな。他にも子供達がいるなら助けなきゃ


「な…ゆ…勇者だと!何故ここに勇者がいるんだい」


「お前たちから妹を助けに来たんだよ」


「なに…?…なるほど…でも無駄だね…私達は神の御加護があるんだ、お前如きにやられはしないよ」


「御加護ねぇ…光魔法:魔光縛り」


「ぐぅう?!」


シスターは口と体を縛られ床に倒れた


「そんな加護、俺がぶち壊してやるよ」



ミリシャ…今助けに行くからな

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