第五十八話

レディッサ先生との訓練が終わって次の日、今日はロディ先生の訓練の日だ。


今の俺は前までの1日中訓練では無くなった。朝からは冒険者として活動したり自主練を行って、午後からはロディ先生かレディッサ先生の訓練を行っている


今日の朝は光魔法を使って自主練して、今からロディ先生の訓練が始まる所だ


「よっ、リュート」


「やぁルシュ、今日も元気いっぱいだね」


「まぁな、勉強勉強で体を動かしてないからうずうずしてんだ」


ルシュも今年で10歳、結構大きくなったな〜。俺も成長したけどルシュの方が身長高いな…むむ…負けてられんぞ…


「でもルシュはもうそんなに訓練しなくてもいいんじゃない?」


「まぁな…でも鈍っちまうと旅する時迷惑かけちまうからな!」


「ロディ先生に勝つぐらいだしそんなに心配しなくてもいいと思うけど…」


そう、ルシュは半年前ロディ先生に勝ったのだ。流石に国王陛下も約束を取り消すわけにはいかず、晴れてルシュは俺の勇者パーティーの仲間第1号となった


「ふっ、お前を護るぐらい強くなるって決めてるからな。のんびりなんてしてられないな」


「はは、頼もしいな」


「準備は良さそうだね」


「ロディ先生!はい!」


「よしよし、それじゃあ今日の訓練は…ルシュ君は大剣と魔法を組み合わせた戦い方の訓練で、リュート君は僕と手合わせしよっか」


ロディ先生と手合わせ…!そういや全然手合わせしてないな…多分冒険者になる前あたりからしてないはず。これは楽しみだ、あの時の俺より今の俺がどれくらい成長してるか分かるだろう


「へぇ〜リュートとロディ先生の手合わせか…俺も見学していい?ロディ先生」


「君は訓練があるでしょ…と言いたいけど見ることも訓練だし見終わったらちゃんと自分の訓練をするんだよ?」


「分かったぜ!」


ルシュに見られるのか…ちょっと緊張する


「さぁ、早速始めようか…武器は…あの時と同じダガーにしよう」


「分かりました、ルールはどうします?」


「そうだね…流石にあの時の様に手加減なんかしてたらすぐやられちゃいそうだし…なんでもありの相手に参ったと言わせたら勝ちでいいかな」


一撃食らわせたら勝ちじゃなかったか、まぁそれでも俺が勝つけど


「今回も俺が勝たせてもらいますよ」


「ふふ…それはどうかな?今回は僕も本気を出させてもらうよ」


ロディ先生の顔つきが変わる、獲物を狩る者の目だ。さすが戦闘狂…!でも…あの時の様に怯えたりはしない。むしろ俺は今、心の底からこの戦いを待ち望んでいる!


「ふふ…いい目をする様になったねリュート君…ルシュ君、合図をお願い出来るかな?」


「あいよ〜、それじゃあ…始め!!」


「炎魔法:大炎上」


始まった瞬間ロディ先生が炎魔法を使い、視界を炎で埋め尽くす


「くっ…熱い上に視界が遮られた」


ロディ先生は…右か!


「無属性魔法:圧縮魔弾」


俺は右手に威力を極限にまで下げた魔弾を作り放つ


「残念、左だ」


「…!」


俺が撃った場所には人型を模した炎が揺らいでいた


「引っかかったね」


ロディ先生が距離を詰める、だが


「引っかかったのはロディ先生ですよ」


俺は最初に左手に作っておいた魔弾をロディ先生に撃った


「なにっ!くっ…!」


凄い、見えないはずの圧縮魔弾をダガーで逸らした


「はは、やっぱりこんなんじゃ無理か」


「…ふふ…なんで僕が左から来ると分かったんだい?」


「こんなに視界を遮っておいて、馬鹿正直に来るとは思わなかったので」


「なるほど…読まれたか…じゃあ次だ!」


ロディ先生が再び炎の中へと消えた


「それ厄介だなぁ…」


こうなりゃ全部吹き飛ばすか


「無属性魔法:魔力衝破」


俺の周りを魔力で吹き飛ばす、もちろん炎も掻き消えた。


「全く、やる事がいちいち凄いな君は!」


「えへ…それ程でも」


「ただ、僕も負けられないよ!炎魔法:爆炎龍破」


ロディ先生の手から巨大な炎の龍が現れ俺を狙う


「何それめちゃくちゃかっこよ?!」


見た目がしょぼい無属性魔法と交換してくれませんか!


はっ…レディッサ先生の怒った顔が浮かぶ、ち、違うんです冗談です!


「油断は禁物だよ!」


レディッサ先生の幻影に謝っていたら目の前まで龍が迫っていた。これは避けれないな


「無属性魔法:纏い」


俺は巨大な炎の龍に飲み込まれてしまった



「リュート!おい先生やべぇって!」


「…まだだ」


「え…」


「こんなものでは倒せないよリュート君は」


「いや結構暑いんですけど」


俺はロディ先生の炎の龍を魔力で防ぎダガーを構える


「暑いで済んでるならいいじゃないか」


「まぁそれもそうですね」


「ははは…ここまで防がれたのは一体何年ぶりだろう…実に楽しい…最高だリュート君」


あーあまたハイテンションになってるよこの人、だから裏でサイコパス団長って呼ばれるんですからね?


「ここからは本当に本気を出さなきゃならないようだ…」


「今の本気じゃなかったんですか…」


「まぁね…いくよ…」


「っ…!」


雰囲気が変わった、ヤバい…なにか来る!


迅鈴刃流じんれいじんりゅう:一式:刹那切り」


「無属性魔法:魔力超速:3倍速!」


俺は咄嗟に魔力超速を使うとその場から離れた


「ぐっ…」


それなのに俺は肩を斬られ、ロディ先生は後ろに居たのだ。纏いと魔力超速を使ったのにも関わらず


「は、はやいっていうレベルじゃない…」


斬られた瞬間すら分からなかった


「ふふ、驚いたかい?これは技術を極限にまで高めると出来るようになる、一種の芸術さ」


「こんなの俺の時は使ってなかったじゃないかロディ先生…!」


ルシュが怒る、確かにこれはルシュの時は見なかったな…でもこれは多分無闇に人に使ってはダメなものだ


「流石に王子を殺す訳には行かないだろう…?」


ゾクッ…。濃密な殺気が俺を襲う、ロディ先生…俺を殺す気で来てるな、いや勇者は殺していいんですかね


「だけど…!」


「安心していいよ、ルシュ君の時もちゃんと本気は出したから。あの強さなら魔族とだって渡り合えるはずさ」


ルシュは納得がいってない様子だ、変な所で真面目だなルシュは。勉強はサボるのに…


「さぁ続きを殺ろう、リュート君」


とんでもない殺気がビシビシと伝わる




これは…俺ヤバいかもしれない

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