第五十話
「はぁ…はぁ…もうちょっとでミラノワだ…」
あいつは追ってきては居ない、俺はアリアを見捨てて生き残ったんだ
「…アリアを守れなかった…俺は…」
俺は今まで何のために訓練をしてきたのだろう、皆を守る為、勇者になる為に辛い訓練をして自分を鍛えてきた。なのに俺はアリアを守れなかった、恐怖で動けなくて馬鹿みたいにやられただけだ
「…俺なんて…勇者なんかじゃない…ただの大切な人を見捨てた…クソ野郎だ」
「そんな事ない…!」
「イリス…」
「リュウは私を救ってくれたでしょ!いつだって!だから自分を責めないで!」
「でも俺は…アリアを…」
「アリアは自分で選んだの…!リュウを守るために!そしてリュウを信じて託したんだよ、きっとアイツを倒してくれるって…だから残ったの!」
泣きながら走るイリス、俺を背負いながらただ、ひたすらに…
「そんな…」
俺には無理だ…5年間何の成長もしていなかった俺にアイツは倒せない
「私も信じてる」
「イリス…」
「私の恩人はきっと立ち上がってアイツを倒してくれる、どんなに辛くても、ピンチでも立ち上がって戦って。私を救ってくれた様に…それが私の…勇者様なの」
「…俺…は…」
「みいつけた…」
「なっ、追いついて…!がはっ…」
追いついた魔族がイリスを蹴り飛ばす、背負われていた俺も一緒に飛ばされる
「くっ…アリアは…」
「そんな…アリア…」
「さっきの人なら、なかなかしぶとかったけど最後の方はあっさりとくたばったよ?あははっ…!」
「ぐう…畜生…!クソ野郎め…!よくもアリアを…!私達を逃がしてくれたのにっ!」
「くっ…はぁ…はぁ…許さない…お前だけは…」
リュウはもういつ倒れてもおかしくない程傷だらけだ、今度は私が守らなきゃ…もう私は逃げないんだ
「はぁ…はぁ…」
さっきの攻撃で骨折れちゃったかな…痛い…けどリュウだけは守ってみせる…
「リュウ…逃げて」
「な…イリスまで…無理だ!俺イリスまで失いたくない!」
「お願い…今の状態じゃリュウを守れそうにないから…逃げて…?」
「うっ…うう…クソっ…クソっ!」
俺は立ち上がる…俺はなんて弱いんだ、弱くて弱くて弱くて…誰も守れない…!
「ありがとう、どうか生きて…そして私とアリアの仇よろしくね?勇者様…」
イリスは涙を流し、それでも微笑みながら俺に言った
「言いそびれちゃったけど、私リュウの事好きだよ」
「あ…イリ…ス…」
「異性としてね」
最後にそう言ってイリスは魔族に向かっていく
「悪いけどもうそれ飽きたんだよね〜、早く勇者殺したいんだけど?」
「私を舐めるなよ!リュウには触れさせねぇよ!」
「はぁ…めんどくさい…スキル:血装」
「なっ…」
魔族の腕に赤い何かが纏って剣の様になった、禍々しいオーラを出しながら…
「バイバイ」
そしてイリスの腹部にそれを向け…刺した
「イリスっ!!!!」
「ごふっ…リュ…ウ…」
「うーんスキルは使うつもり無かったんだけどな〜」
剣を引き抜くとイリスを投げ飛ばす
俺はすぐにイリスの元へ駆け寄った、だけど…もう
イリスは息をしていなかった
「う…あ…ああ…嘘だ…そんな…イリス…」
「ふふふん〜次は君の番ね〜」
「俺が弱いから…ごめん…ごめんなイリス…アリア」
自分が憎かった、何も出来ず守られるだけの俺が
「んーやっぱり首を切り落とすのが一番かな〜?」
やっぱり俺は勇者になれない、いや…もうそんなものどうでもいい。今俺がやるべき事は…
「あれ〜反応ないな〜…安心していいよ!今そこの人と一緒の様に殺してあげるから!」
俺のやるべき事は…
「お前だけは…たとえ死んででも…殺してやる」
「っ…?」
…憎いのなら殺してしまえ
また深い闇の様な声が聞こえる
お前に言われなくてもそうする、勇者になんかならなくていい。アイツを殺せるのならなんだってやる
…ふはははは!なら私に任せろ…!アイツを跡形もなく消してやる!
できるのか?
…私を誰だと思っている?私は…
「な、何…なんで、君がその魔力を持っているの?君…勇者なんでしょ…!」
「私は魔族の長にして闇をも手懐けた男…まぁ俗に言う魔王…だ、不快な異名だがな」
「は…?」
なんで俺の中に魔王が…?でもいいやどうでも
アイツを殺せるのならどうだっていい…イリス…アリア…今アイツを殺すから
待っててね
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