第五十一話
「魔王…?嘘、そんなのありえない!魔王は200年前に死んだの!」
「私が本当に死んだとでも?はは、私は死なない。勇者が死のうと私は生きる…そういう運命なんだ」
「おかしい…!確かにお前は死んだはずだ!はは!そうか仲間をやられて気がおしくなっちゃったんだ!あはは」
「ふっ、そう思うならそれでいい…だが私は同族だろうと容赦はしないぞ?」
「っ…なんなの…その魔力…不愉快!スキル:血装」
この男はなんなのだ、魔王と同じ黒い魔力を身にまとい。姿も黒髪から白髪に変わり髪も伸びている
何よりも魔族の証である黒目と金色の瞳が魔王である証拠と言わんばかりに輝いている
ちっ!予定が狂ってしまう!何とかして奴を殺さねば
「なるほど、子供にしてはやるようだな」
「その舐めた態度が余計にムカつくの!」
クソっ!当たらない!私は強い!魔族の中でも上位の速さを持っているのに!何故コイツには当たらないの!
「はぁ…鈍いな」
「は…?」
「今の魔族はお前程度の雑魚しかいないのか?」
「ふざけるな…ふざけるなぁ!!!」
「最早スキルすら使う必要もない…そうだな特別に魔法でお前を消し炭にしてやろう」
「はああああ!!」
「聞いてはいないか、哀れな…闇魔法:
「え…」
一瞬にして黒い炎が森を焼き尽くす、その範囲は8kmにも及ぶ。まさに地獄の炎のように全てを飲み込む魔法だ
そしてその中心にいたレミシアは…
「あ…が…」
「なんだ、まだ息があるのか。生命力はゴキブリ並だな?」
全身を焼かれても尚、生きていた
「まぁいい、今日はここまでだ。久しぶりの生きた心地…良かったぞ、後はどうにでもするがいい」
そうして魔王は俺の中から消えた
「これ…俺が…やったのか?」
違うやったのは魔王か…なんだったんだろうかあれは…
「とりあえずこいつの息の根を止めなきゃ……いや…このまま生きて痛みを味あわせて死んでいってもらおう」
「ひ…あ…た、す…けて…」
「助けるわけないだろ?じゃあな、せいぜい苦しんで死んでくれ」
「う、うう…お…か…さ…お…と…さ…」
「…」
イリス…アリア…仇取ったからな
でもごめん、俺、勇者になれそうにないや…
帰らなきゃ…マリン姉ちゃんの所へ戻ろう
帰る途中イリスやアリアの思い出が溢れてくる、イリスとの冒険の事、俺を好きだと言ってくれたアリアの事、どれも幸せで今の俺にはどれも辛かった
2人が死んだ事を認めたくない、認めたくないのに涙が止まらない。どうして…死ぬんだよ…
街へ着いた、人々が俺を見て避けていく。きっとボロボロで血だらけだからだろう、だけどそれよりも早くマリン姉ちゃんに会いたい…会って俺を叱って欲しかった
2人を救えなかった俺を…
ギルドに着いた
「おかえ…り…リュウ君?!どうしたの!」
「マリン…姉ちゃん…俺…俺…」
マリン姉ちゃんの姿を見ると気持ちが溢れてきた、言葉が詰まる
マリン姉ちゃんはこちらに駆け寄るとそっと抱きしめてくれた
「もう大丈夫よ…!もう大丈夫だから!」
「俺…2人を救えなかった…弱くて…弱くて…」
「そんな…でもきっと貴方のせいじゃないわ…!」
「違う、俺のせいだ…俺が弱いせいなんだ!」
「…貴方は強いわ、私は分かるわ」
「うう…ああ…うわああああああ!」
涙が止まらない、感情がぐちゃぐちゃになって溢れてくる。
「ごめんなさい…ごめんなさい…!弱くて…守れなくて!」
「いいのよ…よしよし…」
マリン姉ちゃんは優しく頭を撫でてくれる。それが堪らなく心地よくて、堪らなく辛かった
「魔族が街に来たぞーーー!!!」
えっ…?
「キャー!!」
「助けっ…ぐわぁ!…」
外から悲鳴が聞こえる
なんで、アイツは瀕死じゃ…やめろ…違う…
「魔族…?リュウ君逃げましょう!」
「あ、ああ…どう…やって…?嘘だ…」
「リュウ君!」
「…俺が行かなきゃ…」
今度こそ息の根を止めなきゃ…俺が…!
「ダメ…!危険だわ!」
「俺が行かなきゃなんないんだ…」
「リュウ君…!」
マリン姉ちゃんの手を跳ね除け、俺は外へ向かう
「や…っとみつ…けた…!」
そこには右半身を血の鎧で纏った魔族がいた
「おま…えは!ゆ…るさ…ない!私…をこんな…目に…合わせ…た報い…を…受け…させて…やる」
「…そうか、なら今度こそ地獄に落としてやる」
体の感覚がない、短剣を握ってるのかすら分からない…くそ…ここまで来るのが限界だったか
いや別にいいか…こいつさえ殺せれば死んでもいい
「死…ね!」
魔族が俺を剣で突き刺そうと向かってくる
「無属性魔法:圧縮魔弾:100連」
ありったけの魔力をつぎ込んだ魔弾をアイツに味あわせてやる
「ゴホッ…ゴホッ…」
ああ…血が…魔力がマイナスにでもなったのかな…
魔弾が消えてしまった…結局コイツは倒せないまま死ぬのか
…目を瞑ると幸せだった思い出が蘇る、あの世で2人に謝らなくちゃな…
でも剣は俺には刺さらなかった
「かはっ…」
「えっ…?」
目を開けると目の前にはマリン姉ちゃんがいた
「あ…マ…姉ちゃん…どう…して…」
「ごめんね…体が…勝手に動い…ちゃった」
「嫌だよ…マリン姉ちゃんまで居なくならないでよ…!」
やめてくれ…嫌だ…こんなの…もう…お願いだから…
「大丈夫…だから…いつも見守って…るから…」
マリン姉ちゃんが死んだ
また俺は過ちを犯したのか?
あの時トドメを刺しておけば
街に来なければ
マリン姉ちゃんと一緒に逃げていれば
「あ…ああ…ああああああああぁぁぁ!!!!」
もう限界だった、俺の心は壊れてしまった
「つ…ぎは…おま…えだ!」
「…」
目の前に剣が迫る
ああ…いっその事楽になるのならそれでいいや
そうして俺は、2度目の人生を終えた
はずだった
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