第四十四話
「んあ…ここは…知ってる天井だ」
というかマリン姉ちゃんの家だ、あの後俺気絶したのか。イリスが運んできてくれたのだろうか?
「いやイリスも傷だらけだったじゃないか」
俺を運ぶのなんて無理だろ…じゃあ誰が…
「失礼します」
あれなんかデジャブ
「…!お目覚めになられましたか!リュート様!心配したのですよ!」
うんあの時と全く一緒だね、もしかしてアリアがここまで運んできてくれたのかな?
そしてアリアに抱きしめられる、心なしか前より抱きしめる力が強い
ちなみにあの時は窒素しそうになったけど今は成長して身長も伸びてるからその心配はないぜ、
…ちょっと悲しい
「良かったです…目覚めてくれて…」
「ああ、また心配かけちゃったね」
「全く、リュート様は無茶しすぎです!でもそんな所も素敵ですから私はどうすれば…?」
うーむと悩むアリア、ま、まぁ心配してくれたのは嬉しいな
「ありがとう、心配してくれて。アリアが運んできてくれたの?」
「はい、あっ…えっとその…」
「なんでダンジョンにいたのか説明…してくれるよね?」
「いや…それは…うう…分かりました」
「まず、ダンジョンは冒険者ランクD級以上しか入れないはずだよね?」
「はい…その…私実は聖騎士になる前は冒険者でして…それで入れるんです」
そうなの?!アリアが冒険者…想像できるような…できないような…?
「なるほど、ちなみにランクはどのくらいなの?」
「その…お恥ずかしながらA級です…」
「うぇぇ?!めちゃくちゃ強えじゃん!」
「いえいえ、そんなそれほどでも…えへ」
照れながら顔を赤らめる
「そうだったんだね…凄いよアリア」
「ふへへ…」
うん
なんか女性がしてはいけない顔になってきてるから褒めるのはここまでにしておこう
「えっとそれで、なんで俺達の後をずっとつけてたの?」
「うっ…そ、それは…」
「城を出て2日目ぐらいから居たよね?」
「ば、バレてましたか」
「うん、結構簡単に」
「うう…だってリュート様が心配だったんですもん…」
頬を膨らめさせ、いじけるアリア。いやなんでいじけるねん
「ロディ先生には許可とってるの?」
「一応は…書類仕事など溜まってた仕事は全部終わらせて来ましたから」
有能だけど理由が個人的理由すぎるよ…まぁ俺にも責任があるし多くは言うまい
「そっか、ごめんね心配かけて」
「そんな、リュート様さえご無事なら私はそれで…」
どうしてアリアはここまで俺にしてくれるのだろうか
「ねぇ、ずっと聞きたかったんだけどさ」
「はい」
「どうして俺をそんなに慕ってくれてるの?」
「どうして…とは?」
何当たり前の事を聞いてるんだと言わんばかりの顔をする
「俺と会った最初の頃からずっと気にかけて俺を心配してくれてるからさ、なんでかなって」
「…それは」
顔を真っ赤にして気まずそうにこちらを見ているアリア、えっそんな恥ずかしがる理由なんですか?
「べ、別に言いにくいならいいんだよ?」
「いえ…リュート様を慕っている理由ですよね」
深呼吸をしてアリアは静かに語り出した
「私、大人が大嫌いなんです」
「えっ…?」
「強欲で、人を蔑むことを何とも思わない。ただ見た目が少し違うだけで化け物扱い…」
その表情は嫌悪感が現れていた
「私、実はエルフなんです」
「…え?」
アリアが耳に手を当て何かを唱えると、耳が尖ってエルフの象徴的な耳に変わった
「ずっと隠してたんですけど、ふふ、リュート様にだけバラしちゃいました」
私の秘密…と言い小悪魔な笑みを浮かべる
「最近の人族は他の種族を差別するようになってるのはご存知ですよね?」
「うん…」
イリスがそうだ、そのせいで辛い目にあってきた
「だから隠してたんです、ずっと…前はそんな事は無かったんですけどね?魔族との戦争では協力して戦ったというのに…」
「そうだね…」
「エルフは長命ですからずっと生きてると色々なものが目に入るんです、美しいものから…嫌なものまで」
「…」
「辛い目にも沢山あってきました、そしてその中心には必ず大人が居るんです…だからいつからか疲れちゃったのかもしれませんね、大人と接する事が」
アリア…きっとイリスと同じ様な目にあったのだろう。しかしなぜ人族は他の種族を差別しだしたのだろう…?
「ある時、子供に助けられたんです。道に迷っていた時に道を教えて貰って…何の変哲もない善意でしたけど、確かにその時救われたんです」
「そうか、そんな事が」
「はい…だからいつからか子供だけが私の心の支えでした。そしてリュート様に出会ったのです」
「俺に…」
「最初は一目惚れだったんです、私を救ってくれた子にとても似てて。慕う様になりました」
「でも俺はそんな良い奴じゃないよ…?」
「そんな事ありません、最初は一目惚れでしたけどずっとリュート様と過ごしていくと優しくて、私を大事にしてくれて…勇者の重荷に屈さず努力して…そして…」
アリアが真剣な眼差しで俺を見る
「そして…リュート様自身を好きになったんです。子供だからという理由ではなく貴方自身を…」
純粋な好意だった、ここまで素直な好意を向けられたのは初めてだ。俺は…
「ふふ、気持ちを伝えたらなんだかスッキリしちゃいました。今言ったことがリュート様を慕う理由です」
「…俺ダメダメだよ?アリアの様な素敵な人に慕われるような男じゃないと思うんだ…」
「むー…リュート様は御自身を過小評価する癖でもあるんですか?リュート様がなんと言おうと私はリュート様がこの世で1番素敵だと胸を張って言います!」
ドンッと胸を叩いて断言するアリア、はは断言されたら否定も出来ないな…それにイリスに言っておいて俺が自分を否定しちゃダメか
「ありがとうアリア、でも返事は少し待って欲しいな」
「ええ、いいですよ」
「け、結構あっさりだね」
「リュート様の事ですから、魔王を倒すまでは〜って言いたいのですよね?」
見透かされてた、アリアには敵わないな…
「うん、まさにその通りだよ」
死ぬかもしれないのに安易に気持ちに応えたら相手が辛い目にあうだけだ
「全くお優しすぎるのが仇になるとは…でもずっと待ってます、リュート様が魔王を倒すまで」
「ありがとう、必ず倒して帰ってくるからその時にちゃんと応えるよ」
「じゃあそれまで我慢するご褒美として…」
アリアが再び抱きつき頬にキスをする
「ふぁ…き…す」
「その時まではこれで我慢します!」
ま、まさか2人の女性から頬にキスをされるとは…初めて転生してよかったと思ったかもしれない
「ああ、あと」
アリアが耳元で囁く
「私、一夫多妻でも良いですからね…?」
「なっ、そ、そんな」
「ふふ、リュート様は男性として魅力的ですし…きっとこれからリュート様を好きになる女性が現れるでしょうから」
「そんな事…」
「ありますよ、ただ…出来ればその時は私の事も平等に愛して欲しいです」
「アリア…うんそうなるか分からないけど絶対に平等に愛する事を誓うよ」
「ふふ、嬉しいです!」
これじゃあ殆ど気持ちに応えたようなものだけど…まぁいいか、こんな素敵な女性に慕われるなんて俺は幸せ者だな
だから早くアリアの気持ちに応えるためにも魔王倒して必ず生きて帰ろう
俺は再度決意を新たにする
今回はアリアとの話を書いてたらちょっと長くなってしまいました
それではここまで読んで頂きありがとうございます、応援、フォローしてくれたらめちゃくちゃ嬉しいです!
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