第四十三話
「リュウ…本当にできたのか…!」
「うん、まぁね」
「はは…凄いなリュウは…くそ…それに比べて私は…!」
イリスが涙を流す、自分を無力さを責めているのだろう。悔しそうに唇を噛んで血が滲んでいる
泣くなよ…自分を責めるなんて俺が許さない
「…イリスは俺の恩人なんだ」
「えっ…?」
「…イリスが居なきゃこの魔法を使える事もなかった」
「それは…そうだけど…」
「俺、イリスが居ないとこんなに冒険者が楽しいなんて思わなかった。ただの鍛える為の手段で冒険者をしていたかもしれない」
イリスがこちらを静かに見つめる
「俺イリスに救われたんだよ、イリスのおかげで俺はもっと冒険できる、知らないことを知れるんだ」
さっきからボスの攻撃を防いでるけど、流石にそろそろやばいか…少しダメージが入り始めてる
「…だからもう自分を責めるなよ、イリスは自分が思ってるよりずっとずっと凄い人なんだから」
聞いていたイリスが声を出して涙を流す、初めて弱さを見せてくれたような気がした
「ううっ…うん…ごめん…ぐすっ…そうだよね…」
普段のレディッサ先生を真似た口調はなくなり、まるで子供のように弱々しく泣くイリス。多分この姿が本来のイリスなのかもしれない。
1人で生きていくのにきっと強くなる必要があったのだろう、口調を変えて自分を偽って我慢して…
でも馬鹿にされ蔑まれても笑って大丈夫だと言っても心の奥では今みたいに傷ついていたんだろうか?
「やっぱり強いよイリスは…俺にはそんな事出来そうにないや」
「え…?」
「もう大丈夫だから、今度は俺が救ってやる」
「リュウ…うん…分かった…」
「見ててイリス、俺がこんなやつぶっ飛ばすからさ」
「ぐす…うん…見てる…」
よし反撃開始だっ!
「うおおおおぉ!!!!」
「ブルルフオオオオ!?!?」
ボスの攻撃を弾く、そしてそのまま懐へ入る
「俺の拳舐めんなよぉ!」
「ブファ!!!」
顎へアッパーカットを食らわせ怯ませた、だが骨にヒビは入っていない
「くそ、どんだけ硬いんだよ…カルシウムとりすぎだろ」
なら圧縮魔弾だ、防御の構えを取り意識を体に向ける
「集中…!」
「ブルルフオオオオ!!!」
棍棒の攻撃が降り注ぐ、だめだ意識がそっちに行ってしまう
「くっ…」
もっともっと集中しろ…人間の集中力の限界を越えろじゃないとイリスも俺も死ぬ!もっとだ…
もっと…
「ブルルフオオオオ……ォ…」
コイツに勝つために…集中しろ!
…その時だった
何も聞こえない
棍棒と魔力がぶつかる音も
何も感じない
ボスの威圧も異臭も姿も
口の中の血の味も傷の痛みも
嗅覚、視覚、聴覚、触覚、味覚全てが捨て去られ、残ったのは魔力の感覚のみ
その時俺は初めて魔力という存在をはっきりと無意識ではなく意図的に感じて見る事が出来た
これが魔力…?全身に血が流れるように自然に循環している。へぇ魔力って透き通った白い色してたんだな
それと驚いた事に1度認識すると集中しなくても感じる事が出来るようになった
「はは、凄いな…!」
「ブル!」
「ああ、そういや攻撃されてたな」
なんか全てが新鮮に見える、なんでだろう不思議な感覚だ。今ならなんでも出来そうな全能感がある
「ならあれやってみるか」
前にレディッサ先生が教えてくれた魔力のコントロール、ずっと練習してたけど結局出来なかったんだよな
「まぁ今は殆ど出来てるようなものか…」
「カタカタカタ…グルルルフオオオ!!!!」
相手にされなくて怒ったのか更に攻撃が激しくなる
「リュウ…ダメ…死んじゃう…!」
死なないよイリス、今は確信できる
見ることの出来るようになった魔力を動かしてみる、そうすると案外簡単に出来た。まるで手足を動かすかの様に当たり前に
「グルフオオカタカタ…カタ…?」
「おお〜まるで手足が増えたみたいだ」
「カタ…カタ…!」
ボスが後ずさる、どうしたんだ?
「え…ボスがリュウに怯えてる…?」
「へぇ…でももう怯えても遅いな」
これなら圧縮魔弾も集中しなくても撃てるな、試してみよう
「どんくらいがいいかな…とりあえず…」
魔力を動かして手のひらではなく自分の周りに圧縮した魔弾を生み出していく
1mぐらいなら好きなところに魔力を出せそうだ
「ブルヒイイイイ!」
ボスが捨て身の攻撃をしようと突進してくる
「遅いよ全部」
終わりだ
「無属性魔法:圧縮魔弾:100連」
「グルッ…?!」
轟音が鳴り響く、膨大な数の弾丸がボスを貫通し部屋の壁まで崩して行っているようだ。余りの数の多さにボスの骨が砕け、粉々になっていく
「やばい…や、やりすぎた…」
いやさっきの圧縮魔弾より1個の貫通力と威力が桁違いに上がってますやん…!先に言っといてよ!
100連…ドヤってしなくて良かったじゃん!5連位で良かったよ!ボスさんが可哀想になってきた…!
「や、やった…?リュウが勝ったの?」
「う、うん、オーバーキルしたけど俺勝ったよ」
「う…くっ…うっ…よかったぁ…!」
傷だらけで俺に抱きつくイリス
「私…心配したんだから…!」
「いやーごめんね」
少し無理しすぎたな…身体中痛いや
「リュウのバカっ!でも…ありがとう…!」
「うん」
「…私ね…ずっと自分が弱虫で泣き虫で嫌いだったけど…でもリュウが私に救われたって言ってくれて凄く嬉しかった」
「ああ、イリスは恩人だ」
「うん…でもリュウも私の恩人だよ?だからね…その恩人に認められたんだからもう自分を嫌うのは辞める…!自分を偽るのも無し!」
「そっか、うん…本当凄いよイリスは」
イリスは涙をふいて微笑んだ
「ふふん、リュウの恩人だからね〜」
「そうだね…流石は俺の恩人だ」
きっと自分と向き合うのは相当の覚悟がいっただろう、それでも逃げずに向き合う事を選んだイリスは俺の冒険者の先生であり恩人であり自慢の仲間だ
「はは、どんなイリスでもイリスはイリスだな」
「それどういう意味かな…?」
「いてて、いい意味でだよ!」
「にひひ…ありがとうリュウ」
イリスの顔が近くなりやがて頬に何か当たる
「お礼ね、恥ずかしくて今しか出来そうにないし」
「ふぇ…う…き…す」
「顔真っ赤だ〜、この前からかわれたし仕返しにもなったかな〜?」
すみません惚れそうなんですが?俺チョロいなぁ…そうか…これが…ギャップ萌えか…ぐふ…
「あれ、リュウ?鼻血だして気を失ってる!リュウ〜!」
こうして下級ダンジョンを何とかクリアしたのであった、それにしてもこのボスは一体なんだったんだろう
…
…
「はぁ、仕留め損ねたか…まぁいい。次は…あの魔族を使うか」
一方その頃レミシアは…
「むしゃ…むしゃ…意外と生のキノコって食べられるんだね」
その辺に生えてるキノコを食べていた
レミシアとリュートが出会うまで
2ヶ月を切った
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