第四十二話

「ブルルフオオオオカタカタカタ!!!」


「こんなやつ見た事ねぇよ!」


「逃げよう!」


あれはヤバい!俺の直感がそう言ってる


「ダメだ…!ボス部屋に入っちまうとボスを倒すまで出られないんだよ!」


「な、くそっ…!」


あれを倒せだと?明らかにレベルが違う、俺の今のステータスでも勝てるか分からない…!


「ブルフォ!」


「ぐっ…!」


ボスは右手に持つ巨大な棍棒で俺達を狙ってきた


「っ!なんて速さだよ!その巨体にあった速さをしろよ!」


巨大な体に見合わず機敏な動きをしてくる、これじゃあ避けるのが精一杯だ


「なんなんだ…アイツは」


イリスは絶望していた、勝てるわけないと。膝をついしまった


イリスの実力はかなりのものだ、ソロでC級のクエスをこなせると言うのはB級の上位かA級の者しか出来ないであろう芸当である。


だがリュートのステータスには到底及ばない、経験はあっても実力が足りないのだ。今戦っているボスは経験だけでは絶対に倒せない、イリスはそう悟った


「くそっ…ここまでか…私は結局A級にもなれず惨めにコイツに殺されるのか…」


「イリス!何諦めてんだよ!」


「え…?」


「こんな所で死なせるわけないだろ!俺達はA級になるって決めてるじゃないか!だから一緒にコイツを倒そう!」


「リュウ…でも…私はお前を危険な目に…」


私がもっとちゃんとしていれば…この事態を予想していれば、こんな事にはならなかった。私の不注意のせいなんだ


「いつもはガサツで呑気で馬鹿な癖に何弱気になってんだよ!イリスはそんなんじゃねぇだろ…!」


「私は…」


ボスの一撃が掠める


「ぐっ…つう…いてぇ!掠っただけでこれかよ!」


ステータスを見る


体力 4800/6500


「どんだけだよ…」


今まで俺は敵にダメージを与えられる事がなかった、ホースの突進もゴブリンの攻撃も。服は燃やされたが体は無傷だった


だがアイツはダメージを与えた、それも掠っただけでこれだ


「はは…今回ばかりは本当にヤバそうだ」


「リュウ…!わ、私は…」


「…怖いなら守ってやるよ」


「リュウ…?」


「言ったろ、パーティー組む時。どんな事があろうと守るって」


小さい背中だった、まだ子供だ。でも今はその背中がとても大きく、そして頼もしく見えた


「うん…」


「でも俺弱いからさ…1人じゃ倒せなさそうなんだ、だから力を貸してくれ」


リュウが私を必要してくれている、私はやるんだ…!もうあの時の私じゃない!今はリュウのパーティーメンバーのイリスだから


「…ああ、わかった…!悪いな迷惑かけちまった」


「いいさ、それもそん時言ったじゃないか」


「そうだな…お互い様か」


「うん、俺もイリスに迷惑かけるからお互い様だ」


「全く、私が居ないとダメなんだなリュウは」


「それはこっちのセリフだね」


「ふふ」


「ははっ…」


「さぁ2人で倒すぞ」


「よっし!全力で倒す!」


「ブルルフオオオオカタカタカタ!!!」


「風魔法:纏い!」


「こっちだ!骨っ子野郎!」


イリスの経験と俺の強さ、足りないもの同士を補うんだ。それがアイツを倒す為の方法だ!


「オラッ!私の速さに追いつけないか?」


「ブルル…!カタカタカタ!」


「よそ見してんなよ…!」


短剣で切りつける、くそっ…めちゃくちゃ硬ぇ!金属並の硬さだぞ!こうなりゃ圧縮魔弾を使うしか…


「イリス!少しだけアイツの気をそらすことって出来るか?」


「ああ、やってやるよ!」


よし、なら早速集中だ。手に集中させろ…魔力を圧縮させるんだ


「ブルルフオ!」


「お前の相手は私だ!」


「カタカタ…!」


「くっ、風魔法:風刃!」


「ブルル!」


「へっ、ざまぁねぇぜ!」


「フゥゥゥ…!」


「ちっ、全然効いちゃいねぇ」


余裕そうな顔しやがって、ムカつく野郎だ…だけどリュウの準備は終わったみたいだな


「無属性魔法:圧縮魔弾:10連」


「ブル?!」


圧縮魔弾は腕に命中し、骨が砕けた音が部屋に響き渡った


「はっ、モロに食らったな」


俺が今出せる最大数の10連を食らったんだ、頼むから効いてくれよ


「ブル…ブルルフオオオオ!?!?」


片腕は砕けたが、倒していはいなかった。それどころかボスは怒ってしまったようだ


「くそ…効いてはいるが致命傷にはなってねぇ…!」


まだ魔力は残ってるが圧縮魔弾は時間がかかりすぎる!どうすりゃいいんだよ!


「ブルン!カタカタ!」


「はっ、危ない!イリス!」


「ぐあっ…!」


ボスがイリスを攻撃し吹き飛ばされる、さっきよりスピードが上がってる


「イリス!!!」


「くっ…」


何とか壁に激突する前に受け止めた


「わ、悪いな…リュウ…」


くそっ…今の攻撃でほとんど瀕死じゃないか、急いで回復しないと


「待ってて、光魔法:小癒回復」


「これは…?」


イリスを回復する、だがまだ光魔法は鍛錬不足で少ししか回復しない


くそっ…ここからは俺一人だ、やれるか…俺に


「くそっ!くそっ…!」


「足手…まといで…ごめんな…」


「何言ってんだよ…!イリスが居なきゃここまで来れなかった…!足手まといなんかじゃないよ」


「もういいんだ…私達頑張ったよ…」


「まだだ!まだ戦える!」


「もう絶望的だ…はは、案外…リュウの横で死ねるならいいかもな…」


「イリス…!」


ボスがそこまで迫ってきている、顔は動かないが俺たちが必死に足掻いてるのを楽しんでやがる


どうすりゃいいんだよ…ここで死ぬのか俺は…



「いや!俺は諦めねぇ!絶対にだ!」


勇者になるんだろ!魔王を倒すんだろ!ここで諦めちゃ皆を守れない!


頭を使え!俺は天才だろ!ロディ先生との初めての訓練を思い出せ!思い込むんだ、俺は天才だと!


弱いのなら今強くなればいい…!


「イリス!風魔法:纏いのコツ教えてくれ!」


「あ…?今かよ…?」


「早く!」


もうアイツは目の前だ


「…纏いは…その名の通り…魔法を纏うイメージだ…魔法を撃つ時にそのまま…撃つんじゃなくて自分を覆うようにするんだ…」


「分かった!」


「まさか…使うつもりか?無理だ、そんなすぐ出来る技じゃない…」


アイツが棍棒を振り下ろす、ここで出来なきゃ死ぬ


「大丈夫、俺天才だからさ」


最初は魔力衝破のように全身の魔力を外に放つイメージをする、そしてそれを放たず留めて自分を覆う!


「ブルルフオオオオ!!!!!」


「ああ…リュウ…!」


部屋が衝撃で揺れる、終わった…私も…リュウも死んだ…


…?


「あ、お前…!それ…大丈夫なのか…?」


「なるほど、無属性魔法を纏ったら防御魔法になるのか」


「ブル…?!」


俺は両手で棍棒を受け止めていた、痛みはない


「悪いね、まだ俺達は死ねないんだ」




さぁ…ここから反撃だ


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