第30話 閑話:マニュアルを読もう①
研究材料というものは
超古代遺跡などは、探知機で発見、専用機械でひそやかに発掘調査ができる。
しかし、真に埋没しているものはそれ以外にある。
接触が禁じられている文明を解析するのは、それについて語っているご当地の古文書が必須だ。この資料は研究者に大人気だ。それがあれば、研究馬鹿達は目の色を変える。
だが法規制上、入手は困難を極める。この矛盾が、古文書を文明に埋没している聖遺物扱いの原因となっていた。
そもそも、接触が禁じられているのに、どうやって入手するのか。
カイルのように特異な事情で、大量の古書に接触し、記憶できるのは珍しいケースだった。
だからこそ、裏取引の材料になるほど価値があった。ディム・トゥーラは、いまだにそれを切り売りして、大災厄に対する協力を取り付けている。
こういうことに関する研究馬鹿の口の硬さと、
そして、今、ウールヴェ姿のディム・トゥーラと、地上の初代賢者の代表であるエルネストとアードゥルの3人は、一冊の真新しい書を前にしていた。
「エトゥール王、
エルネストは素直に感想を述べる。研究者として目がキラキラしていた。
「
『セオディア・メレ・エトゥールの
「なるほど」
3人は
3時間後、二人と一匹は精神的疲労でぐったりとしていた。
『なぜだろう、全力でセオディア・メレ・エトゥールに
「私は、この宿泊と3食昼寝付きを要求するふざけた行動にロニオスの遺伝子を深く感じる。実は息子ではなく、
「やめろ。カイル・リードがロニオスのコピーなら、私は即、逃亡の準備をする」
アードゥルの言葉にディムは突っ込んだ。
『ロニオスはあんたの
「嫌悪ではない。ロニオスは私の元
『過去形なのは、気のせいか』
「彼が
『そこは親子で、そっくりだ』
「私がある意味、君に感心しているのは、ロニオスの
アードゥルはディム・トゥーラに、はっきり言った。
『俺はロニオスの
「ロニオスと息子の共通点が、この書に
『……
「精霊鷹を受け入れようとしない
「ロニオスも
「
「ロニオスも人たらしで、周囲を
「暗殺者に
「修羅場で
「戦争の負傷者の治療に関しては、突っ込みどころが
「自分の体内チップを使ったと推察するが、まさか使いつくしたわけではあるまい。いくらなんでも、そこまで馬鹿では――」
虎のウールヴェが、視線を
「………………」
「………………」
「馬鹿だったか……」
「馬鹿だったな……」
「君は苦労しているな」
「その問題児の
エルネストは感動の涙を
「それにしても自覚のなさが酷い」
「自分に関する情報収集能力が欠落している」
初代は
「この城下の初市のくだりは、特に酷い」
「ある意味、自覚を促したメレ・エトゥールの行動は正しい」
「定期的に自覚を促した方がいいな。絶対に3歩歩けば、自覚を忘れるタイプだ」
「鳥頭か」
「いや、鳥の方が賢いかもしれない。だが、記憶力はいいし、人の本質は見抜くのに、何故だろうな」
『…………自己肯定が低いからだ』
ぼそりとディム・トゥーラは、告げた。
「
アードゥルが驚いていた。
『
「西の地と
『もちながら、だ。それに関しては、多分自覚はない。それに極端に人に拒絶されることを恐れる。おそらく幼少期からの体験からきている。
カイルは
何度言っても、
『
「自信とは、
『何を?』
ウールヴェは切り返した。
『カイルは無自覚な人たらしで、お人好しで、自己犠牲が強くて、本能で突っ走る馬鹿だ。褒めて、人たらしとお人好しと自己犠牲を限界突破させたくない。人たらしの犠牲者とお人好しの利用者が増殖されるだけだ』
「あー、君の危惧は理解できる。そもそも
『初耳だ』
「初耳だって?500年たって、
『所長のエド・ロウ』
エルネストとアードゥルは絶望感に
「エド・アシュルか……ジェニ・ロウとロニオスを加えれば、三大ラスボスじゃないか……」
「ディム・トゥーラの性格を読んで、説明を
「ほっといても
上司の
「性格を
『規格外だと、いつも
「「それは
初代から同時に突っ込みを受け、ウールヴェはむっとしたようだった。
『俺にとっては最高級の
初代の二人はその難解な課題に、しばし真剣に検討した。
「………………規格外……かもしれない」
ほら、見ろ、とウールヴェの視線が
『本人にもちゃんと「規格外」が褒め言葉だと説明してある』
「いや、説明の必要な言葉を採用するのはどうかと思うが……もっと普通の褒め言葉もあるだろう」
『よくやった、とか?』
「そうそう、そういう
『カイルにとってできて当たり前のことだ。カイル以外には、ちゃんと言ってる』
「――」
「――」
「これは面倒くさい事例だな」
「ディム・トゥーラは、
「ディム・トゥーラ、君は重要なことを一つ見落としている」
エルネストが
「カイル・リードは、
虎のウールヴェは固まったようだった。エルネスト達はその反応を正確に分析をした。
「どうやら、その事実を失念していたようだ」
「カイル・リードも気の毒に……」
「カイル・リードが幹部候補生にならなかったのは、よくわかる。それこそお人好しすぎる。情がありすぎるんだ。絶対に初回の性格判定試験で不合格だ」
「さて、ディム・トゥーラ。カイル・リードを
『…………よろしく頼む……』
白虎がイカ耳になり、やや反省している姿は、なかなか可愛いものだ、とアードゥルは密やかに思った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます