第8話 女戦士
「あ、あの、隊長…?」
恥ずかしそうに俺の胸に指を立てている女隊長さんを見て、もう1人のお付きの兵士が戸惑っている。
そりゃそうだよな、俺の頭ごと吹き飛ばさん勢いで殴りかかって来ていながら、急にこんなデレデレした姿を見せられたら誰だって混乱する。
聖剣の力だと分かっていても、俺自身まだこういう状況に馴染めていない。
「アントン、お前はヘッケラーを幕営地の治癒師に見せてこい。わ、私は彼とふ、2人だけで馬賊退治に向かう。早く行け!」
女隊長さんは俺の方をチラチラ見ながら部下のアントンさんに指示を出す。最後の「早く行け」なんて手で追い払う仕草までしてみせた。
「隊長、正気ですか?! こんな素性も知れない卑怯な奴と2人でだなんて… 一度本隊に帰還して…」
そこまで言ってアントンさんは口を噤んだ。女隊長さんの剣がアントンさんの喉元に突きつけられていたからだ。
「これ以上彼を侮辱するのは許さんぞ? 私は命令したぞ。復唱して実行しろ!」
この時の女隊長さんの目は完全に敵を見る目だった。ほんの10秒ほど前に俺に向けていた目だ。
「了解… ヘッケラーを治療すべく治癒師の元へ向かいます…」
アントンさんは絞り出すように答えて、ヘッケラーさんの切られた右手を回収、彼を背負って町の反対側へと消えて行った。
あまりの超展開に俺の頭も追い付いていけてない。まるで夢でも見ている様だが、足元にヘッケラーさんの手首から流れた血と彼の持っていた剣の破片が現実だと教えてくれていた。
ヘッケラーさんの出血量が思っていたより少ない。これは聖剣の切れ味が良すぎて一気にスパーっと切断したことで、血管が収縮した事とアントンさんの的確な応急処置のおかげだろう。
「ふ、2人きりだ、な…」
女隊長さんがモジモジしながら語りかけてきた。町の門を出てすぐの所なので門衛さんや通行人ら野次馬は何人か居るのだが、女隊長さんの目にはもう俺しか映っていない様だった。
「私の名はクロニア・バーフェート。クロニアで構わない。早速だがお前は馬には乗れるのか?」
女隊長、もといクロニアさんは俺の手を取って少し離れた馬屋の方へと引っ張っていく。そこにはクロニアさん達が来た時に預けていた立派な馬が2頭並んでいた。
恐らくは3頭あって、アントンさんがヘッケラーさんを乗せて既に立った後なのだろう。
俺は当然馬になんか乗ったことは無い。乗り方、というか乗馬マニュアル的な物は頭の中に浮かんできているのは、これも聖剣の力なのだろう。
「乗り方は分かるけど、乗ったことは無いかな…?」
「そうか… なら私が道すがら教えてやろう。敵は馬に乗って暴れるのだ。こちらも馬が使えないと話にならん」
なるほど、確かにそりゃそうだ。今後も旅とかする生活なら馬に慣れておくのは良いことだよな。
ちなみに「教えてやろう」と言った時のクロニアさんの顔は、初めて会った時の『鉄の女』みたいなイメージと真逆な、純真そうな乙女そのものだった。
☆
俺は元々ヘッケラーさんの物だった馬を借りて、クロニアさんと2人で馬賊が暴れているとされる地方へと向かっていった。
道中クロニアさんは俺に甲斐甲斐しく乗馬のコツや、この地方の事を教えてくれた。
ここは「王国」のガルソム地方、同名の侯爵様の治める温暖で過ごしやすいが、それ故に悪い人間も集まりやすくあまり治安は良くないそうだ。
加えてゴブリンを始めとする魔物の出現も最近多数目撃されるようになったらしい。クロニアさんは「何か良くない事の前兆」だと言っていた。
ラモグの町を出てから街道を半日ほど走った辺りで、俺の足腰は限界を迎えた。馬って全然楽じゃないんだな、こんなに乗ってて疲れるとは思わなかった。
とにかく内股が痛い。もうラモグの町に帰りたい。銀麦亭の大して美味くも無かった飯が早くも恋しい。
「もう少し進めば小さいが宿場町がある。今日はそこで宿を取ろう。そこまで我慢しろ、
そんな感じで励まされつつ、俺はフラフラしながらも馬を操り続けた。
☆
着いたのは宿場町とすら言えない、一軒茶屋みたいな佇まいの古い建物だった。簡単な食事は採れたが、宿として使える部屋は1つしか無いらしい。
クロニアさんはそれを聞いて恥ずかしそうに俺の方をチラチラと見ている。これはきっと決断を俺に丸投げするつもりなんだろうなぁ……。
「部屋が無いなら仕方ないよ。2人で泊まろう、クロニアさん」
俺の言葉にクロニアさんは目を輝かせて嬉しそうに頷いた。
☆
「あいたたたっ! もっと優しくしてくれよ…」
「そもそも体が
約束通りに俺の足腰をマッサージしてくれるクロニアさん。今は鎧も脱いで簡素な無地の麻製ワンピースみたいな服を着ている。これだけ見たら普通のお嬢さんで、とても怖くて勇ましい女戦士には見えない。
俺のリクエストを聞いて力を加減してくれる。優しい人なのだとよく分かる。この世界、何だかんだ言って現代日本より優しい人は多いんじゃないかな?
マッサージのおかげで脚の血行が良くなったら、その近くの血行まで良くなってしまった。
俺の脚の中心にあるモノが次第に大きくなっていくのを見たクロニアさんは、顔を真っ赤にして目を逸らせた。
そんなクロニアさんの
俺はおもむろにズボンとパンツを脱いでクロニアさんの目の前に俺の全てを曝け出した。
「手を止めないで。真ん中も凝っているんだ。こっちも解してくれないか…?」
「な、な、な、何を言ってるんだお前はっ?! そ、そんないかがわしい事なんて…」
「続けて…」
「…ハイ」
「クロニアさんも服を脱いだらどうだい…?」
「わ、私はそういうの初めてで…」
俺はこれ以上言い訳をさせない為に、俺の口でクロニアさんの唇を塞いでやった。
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