清水の転換
日が昇ってしばらくしてから、清水と梶木は護岸ブロックに挟まれた河川の沿いを歩いていた。辺りは森林豊かな公園や団地を含む住宅街が視界に広がっていたが歩数を進めるごとに市街地から完全に外れてくるのか樹林の数々がサイドに目に付くようになる。
距離を進めるごとにコンクリートの地盤までにも生い茂ってきたツルが邪魔をしてきて道幅が狭くなっていくように感じられる。夜間を通して稼働していた結果か、かなりの疲れが残っているが黙々と足を進めた。
「クライアントはご立腹なのか」
あまりこういう時に一人で考え込んでいても気がまぎれないので清水は試しに聞いてみた。曇った表情になっているのか元々そういう陰気臭い顔をする人間だからなのか。梶木は常に思案に暮れている。
「どうだろうな。お前は今までただの請負業者だっただろうがなんせこういう事態だ。大人しく二人で報告してやったほうが話が早い」
それが最善策なのだろうか。クライアント、ボス、呼び名は幾つか思いつくんだろうが今回の件の親玉的な存在に少しばかり気が向く。天気は快晴、のように見えるが清水の気は晴れない。人に顔を見られることなくひっそりと生きていくことを誓ったというのにこのざまだからだ。
道中、小銃を隠ぺいしたポイントで回収がてら各通信拠点を確認した二人はある事実に気づいた。
「片っ端から破壊されてたな」
気を紛らわす効果など微塵もない言葉を清水は吐いた。少し前を歩く梶木の足取りはさっきより輪に掛けて重くなる。通信拠点は工作に時間がかかる。位置の選定に労力を費やしたというのにどこの誰かもわからない謎の勢力に妨害工作をされたのだ。
腹も立つだろう。隠された小銃の部品が全て無事だっただけでも良しとするべきなのか。小銃は回収する際に全分解することになった。携行するにしても目立つためいつでも結合できるようOD色のリュックサックに格納している。
「復旧はお前ひとりでやれよ」
恨みがましく梶木は言った。顔もむけず相当の怒りようだ。散々準備段階で引きずり回された怨念が垣間見える。清水にはその禍々しい何かを直視するのが躊躇われた。どうすればこんな邪悪なものを生み出せるんだと思わず目を凝らす。答えなど出る訳もないが。
清水には正直なところ未だに状況が整理できない。梶木に持ち掛けられた依頼を達成するべく対象である元中隊長、奥田大尉の身辺調査を行ったものの公安の存在までは判明しなかった。ロシア人風の男たちとやり取りをしていた奥田大尉の周囲に渦巻いている何かがあるとすれば外事一課だろうか。
東欧担当の部署が本当に監視に当たっているのか、現段階で嗅ぎつけているのかは謎だ。
「あいつらがすぐに公安だってわかったのか」
梶木は意味ありげに呟いた。
「お前を抑えるとしたらそれしかないんじゃないか」
今頃なんなんだと清水は怪訝そうにする。
「さっきあいつらに共闘を持ちかけたが、奥田たちが公安には完全に気づいてないと思うか?」
「仮定の話だ。仮に気づいていたところであの人は行動を控えたり巧妙に隠したりはしないぞ。陸軍ってやつはそもそもが邪魔などさせないって考え方で動く。警察みたいに隠れて妙な小細工をしたりすることは無いのさ」
清水の考察を聞き終えても梶木は足取りを緩めなかった。
「お前警察だったのか」
清水の続けざまに投げかけられた質問に梶木はやれやれと言わんばかりに振り向く。
「俺もお前も訳ありだってことだな」
「…それは答えたつもりか」
ところで二人はどこへ向かっているのか。冒頭でクライアントへ報告、とあったがその通り、事後報告というものに向かっている最中だ。事前の偵察活動の真っただ中、対象含む集団から攻撃を受け撤退、現状即時に殺害することはかなわない旨を報告する、これが目的であり梶木の案内に従って気の進まない足を清水は進めていた。
あと少しなのか正確な距離を梶木は特に話すこともなかったが段々と景色が変わり一つの洞穴の入り口のようなものが進行方向にあるのを肉眼でとらえ足を止めた。
「特に説明もないまま付いてきたがお前のボスはこんなとこに住んでるのか。ちょっと立地を悪くしてコストを下げたにしろ、これは酷いんじゃないか」
「こんなとこに定住してるわけねえだろ馬鹿が」
梶木のあきれ具合を見て清水は思考した。組織の規模は正確には不明で聞くところ小さく考えればそれなりのサイズになるし、関連会社含め全てを一つとして捉えれば巨大となる。完全に独立した武装集団であり暗殺などとアウトローな家業を営む組織がバラバラに日本で点在していることは無いと梶木が言いきっていたのを思い出す。
そこには清水のような軍人崩れから傭兵などあらゆるならず者が集まりこの奥に入っていけばきっと屈強な兵隊みたいな連中が自動小銃を片手に横柄な態度で所持品検査をするに違いない。そこで何もなくとも、いいか、この空間で妙なことをしたりすればお前らの首なんか簡単に切り落としてやるからな、そんな眼光を向けてくる。そういう光景が脳裏をよぎった。馬鹿な、映画の見過ぎじゃないかと清水は首を振る。
こんな時は梶木のあほ面を見ているに限る、そう思っていた矢先、同じく立ち止まった梶木は振り向いた。
「辺りの景観の変わりようを見て分かると思うが人目につかないようなこんな殺風景なところでアジトを構えてる。決してここはボスの家なんかじゃないが、お前のその減らず口だけは勘弁してくれよ。首が何本あっても足りんからな。北九州でウィザードもどきを何人殺したか知らんが余計な緊張感なんて演出されるのは俺はまっぴらごめんだからな」
長ったらしいセリフを聞き終えて清水は梶木の調子はいつも通りだと安心した。梶木はすぐに踵を返して洞穴を目指す。
「ところで俺が何人ああいうやつらを殺してきたか、気になるか」
「…なんだ」
うんざりしたように梶木は進もうとした体を再び反転させる。清水は自身の過去とはいえ度々探ってくる梶木に少しばかり愛着心が湧いた。これからしばらくはビジネスパートナーだと考えると少しばかり心を開くものだ。
「あの場所でテロもどきを起こした奴らはただの武装集団じゃなかった。三人のウィザードにここはめちゃくちゃにされた」
「それで?」
「二人は息の根を止めてやったよ」
「化け物が」
顔色をブルーにした梶木は視線を逸らして川の水面に浮かぶ自身の表情を確認した。リヴァイアサンという公安での後輩が口に出した『とんでもないもの』。リヴァイアサン含め怪物ぞろいであることが梶木には手に取るようにわかった。普通に生きてて遭遇していいものでなければ相手にするものでは絶対にない。
軍隊ですら大量に殺害されたそれを二人も殺した男が目の前にいる。こんな間抜けな面をして突っ立っているのだ。しかしその言葉に嘘は感じず掴んでいる前情報や後輩の言葉の信ぴょう性から精査して梶木は思う。これからの身の振り方をよく考えねば、命は本当にいくつあっても足りないと。気を取り直して清水へ向き合う。
「とにかくだ、大人しくついてこい」
その言葉に清水はただうなずいた。そこから地下へ続いているような光を寄せ付けない空間へ二人は足を踏み入れた。少し気を抜けば昨日からの疲労が一気に二人を襲ってくる。清水の服装の破れ具合から恐らくは元後輩たちからの意見を踏まえてウィザード、と交戦したことが伺えた梶木は尋ねた。
「昨日は一体どんな奴に襲われたんだ」
薄暗い洞穴は内部も自然に構成された作りかと思われたが実際のところ人工物のようでプレートによって施工されていることが等間隔で両サイドに備え付けられた灯火のおかげで確認できる。組織の拠点である以上ありのままで運用するのも難なので手を加えたという所だろうか。
梶木のすぐ後ろをついてくる清水の表情は光に照らされながら暗闇の中でも一応は見えている。その表情は色々あっただろう出来事を整理しているようだ。しばしの時を経て口を開く。
「奥田大尉のウィザードとやりあってきた」
「…それで?」
「何とか逃げ切ったってのが正しいかな。かなり危なかった」
清水の力を以てしても奥田大尉の刺客の能力は計り知れないという事実に梶木は眉をひそめた。
「お前は何人もそんなやつを相手にしてきたんじゃないのか」
「まぁ初見はそういうもんだな。次会ったら殺してやりたいところだが、どうにも乗る気になれなかったのもある」
「どういうことだ?」
「まだ子供だった」
清水は洗いざらい何があったのかを話すことにした。その内容は清水自身の推察も含まれかつての中隊でウィザード小隊がどういう運用をされてきたか、その少女が秘密裏に奥田大尉に飼いならされ清水を殺しに来た事実。聞き終えた梶木は暗闇の中で悟られないよう思考していた。
「俺が正直にこうやって話してんだ。お前だって俺に色々隠してるんじゃないのか」
「その前にもう少し聞きたい」
「なんだ?」
「お前が俺と出会う前、北九州で起きた暴動の主犯だが、お前が殺したっていう連中は一体どこからやってきた」
清水は息を呑んだ。
「ロシアか」
「やってきたところはそうだろうが昨日の連中とどこまで繋がってるかは正直分からんな。直接会ってみるまでは…」
「奥田大尉はもしかしたら相当に黒いことをしてきたかもしれんな」
「奥田が?」
怪訝そうにした梶木を見て清水は顎に手をやった。
「あくまで俺の予想の範囲内だからほっといてくれていいんだが、俺の考えが全て正しいとするならば前提としてあの人は取り返しのつかないことをやったのかもしれん」
「よくわからんな」
「そんなことよりだ」
「わかったよ」
観念して梶木は話した。この一件は組織を挙げての一大イベントであり清水は立役者に選ばれたこと。選ばれた人間にみすみす実行前に飛ばれるわけにもいかず良く事情も分かってない清水をこの任務に引きずり出したこと。対ウィザード戦になることは想定済みであったこと。
「それで全部か」
「今のところはな」
なるほどな、そう清水はつぶやいた。
「結局これを命じたやつらの大元なんて今の話からは分かりもしなかったがこの先にいるボスとやらに聞けば全部すっきりすることだな」
「そうなる。俺自身もうまく伝える自信はないんだ」
ふん、と鼻を鳴らし清水は悠然と歩みを進めた。
その時、正面から二人を捉えるように二人の男が歩いてきた。凄まじく体格のいい、東洋人ではない風貌の二人であり、一人は豪快さ、一人は冷静で知性を感じさせる雰囲気を醸し出す。地下につながっているせいで肌寒さを感じさせる空気をさらに一際、増長させた。
現れる訳もない外国人の二人の迫力に押されて梶木は思わず飛びのく。先ほどまで話題に出ていたこの国に迫る連中がわざわざ姿を現してきたからだ。
「落ち着け」
その肩を清水は抑えて言った。
目の前の男の威圧感に警戒感を表しながら清水は聞いた。
「昨日の連中だろう。何の用だ」
「ご明察だ」
一際巨大な体躯を持つ男は手を広げて言った。
「我はアレクサンドル・イワノフ、ロシア陸軍大佐だ」
その言葉に清水は目を細めた。
「同じく、陸軍少佐ミハイル・ガブリロフ」
もう一人の男は控えめに、言いながらも常に上官を見据え何か意味ありげに視線を送っている。
これは交渉だ、そう清水は予想した。
「お前たち二人、昨日かなり手痛い目にあったそうじゃないか」
朗らかな表情でイワノフは話すが目はあまり笑っているようには感じない。こちらの反応を常に一言一言発しながら伺っているようであり清水と梶木の心情を探るようだ。
「お前たち二人にお願いがあってだな、こうして参上したということだ」
清水と梶木はお互いに相手に気取られないよう見やった。
「奥田大尉と談合してたやつらがなんのお願いだ。俺たちを始末でもしに来たか」
清水の追及にイワノフは笑って答えた。
「違うな、奥田を、頼むから殺してくれないか」
ガブリロフは鼻で笑うのみで残された二人にとっては全然笑える空気ではなかった。大真面目に答えたイワノフを梶木は観察した。全く動じることなく嘘をついた直後に発汗する、というような反応も見せない。至極冷静であり思惑を孕んでいることをこちらに伺わせない堂々とした素振りだ。意図が読めない梶木は頭を悩ませる。
「お前たちにとって協力者になるのが奥田なんじゃないのか」
苦し紛れに梶木は尋ねた。
「あくまでそうなればいい話だが、胡散臭いやつでな。お前らが言うなってか?まぁそういうな。こうやって会えたのも何かの縁だろう」
待ち伏せしといて何を言うんだ、その時ばかりは清水や梶木はお互いに意思の疎通が言葉を交わさずとも図れたと思えただろう。
「ついでに我の言うことを聞いてくれる代わりにこちらからも良い情報を提供しようと思っていてな」
誰も了承などしていない。勝手に話を進めるなと梶木はさえぎろうとしたとき、
「氷結の女王というやつを追ってきた」
その言葉に梶木は目を見開いた。
「なんだ?」
繋がった、という目をした梶木に清水は声をかけた。一体いくつの揉め事に首を突っ込むことになるんだと呆れる心を抑えながら聞いてみる。
「それを追ってきたら俺たちと出会ってしまったって言いたいのか」
「左様、この空間、お前たちがやってきた場所以外にもいくつか連絡通路があるようでな、そこからお邪魔させてもらったというわけだ、お前たちはこの先で何かやることでもあるのか」
「ちょっとした野暮用だよ。…いや、待てよ」
清水は一旦置いて同時に梶木とお互い顔を見合わせた。
「「そいつがここに来てるってことか」」
その言葉にイワノフは顔を上げ哄笑した。呆気に取られている二人をよそにイワノフは続ける。
「我々も万能ではない故あの娘の位置を正確につかんでいるわけではない、あくまでもおおむねの予想を立てて追跡行動を取っている。まぁ、お前たちが話し合いに興じているさなかひょっこりとやつも姿を現してくれるかもしれんがな。そもそも何の目的があってこんなところにあの娘が忍び込んでいるのやら」
豪快な口調に清水は横やりを入れた。
「まだどこにいるか分かってねえんだな。ところでそれは一体なんだ?」
梶木に正直に尋ねたところではぐらかされるのが関の山だと踏んだ清水は思い切ってイワノフに聞いてみることにした。巨人は顎に手をやり悩まし気に眉間にしわを寄せながらも答えた。
「ううむ。そうだな、あれはいわゆる、絶対零度ともいわれる知れ者でな」
「絶対零度?」
「アブソリュートゼロとも言おうか。長らくロシアで管轄に置いていたんだがいくつか不手際が生じてな、この国にあいつを転がりこませることになった。奥田のやつは要領を得ない解答に加え全く持って邪魔になるとしか思えん。あの日本軍の士官ははその娘が人間兵器であり、この国如き簡単に滅ぼすことに目を付けたとみる」
事態を飛躍させそうな話を聞いて清水は一瞬気が遠くなった。梶木の奴は何を思ったか話をすることを躊躇っていたがこういうことなのか、そう理解した清水は聞いた。
「万物を凍らせる力ってことでアブソリュートゼロ、氷結の女王だなんて呼んでるのか」
「物分かりがいいな。お前たちは中々粋が良くていい酒が飲めそうだ」
清水は欠片になったパズルを一つずつ脳内で嵌めて完成させていった。または点と点をつないで一つの物を作る感覚だろうか。自分の環境適応能力をほめてやりたいと思ったところ
だが以前にそういった事態と対面したおかげで特に状況に頭が混乱することもなく適応できている。自らの素養に感謝するべきかそれとも経験に感謝するべきか。どちらにせよ、再び深い深淵に更に足を踏み入れることになりそうな自分を何とか持ちこたえさせようと頭を回転させることにした。
「わざわざロシアからやってきてそっちで飼ってた凶悪な女を捕まえるために工作活動をしていた、そんな中、奥田大尉と繋がって何とか迫ろうとしたがあまりに怪しく裏切る気配が漂うから暗殺しにきた俺たちの片棒を担いでやるってことか」
「…概ねそれでいいな」
イワノフは一旦落ち着きを取り戻して声音を低くして言った。
しばらくの静寂が流れようやくイワノフの脇にいたガブリロフが口を開いた。
「この先でお前たちがやるであろうことをこちらは邪魔はしない。ただ氷結の女王が近傍を徘徊している可能性もある。警戒を促すとともに、緊急事態になれば邪魔をするが、気にせずやってくれていい」
次いでガブリロフは清水と梶木が反論が無いか確認しながら続けた。
「追って奥田に対する対処については協議、その際そちら側が要求する情報についてもこちら側が用意できる限りのものは可能な限り提供したい」
それからと言うものの一定のまとまりを付けた後ロシア軍人の二人はどこかへ姿を消した。一瞬の出来事に残された二人は呆気に取られながらも本来の目的へ向け足を進めることにする。
清水は隠しごとしかしない同僚に嫌味を言ってやった。
「さっきのはお前も知ってたのか」
梶木は悪びれる気配も見せない。
「あの連中がこっちに接触してくるのはイレギュラーだった。ただ氷結の女王は前情報だけなら俺の元まで届いてなくもなかったが…如何せん不確定で不鮮明な情報ばかりだ。お前こんなこと続けざまに垂れ込まれて面倒に思わないか?」
「お前の仲間や奥田大尉と関わるだけで充分面倒くせえよ。今更変わるもんか」
「馬鹿野郎、公安はもう仲間じゃねえよ」
そうやって二人のやり取りは終了した。そこからは特に会話することもなく二人の歩哨らしき人物が待ち構える大きな扉の前に到着した。鉄製のようで綺麗に施工された痕跡が伺える辺り真新しいものと見受けることができ、それは組織が拠点を複数持つか変えている可能性を示唆しているものと思われる。
奥にどんなやつが待ち構えているんだと警戒心を隠せない清水は予想通り横柄な顔をした二人の男を観察することにした。
体格のいい軍人上がりなのか傭兵なのか男二人は着ているシャツから鍛えられた腕が見える。彫られたタトゥーも垣間見え日本人らしくないと思いきや照らされた明りによって見える顔は西洋人風で自分たちより高い位置からこちらを侮蔑的な目で見降ろす。特に何か言うわけでもなくかといって二人の存在を嘲笑するかのような目つきだ。
「ボスなら奥だ」
唐突に一人の男は日本語で言った。組織はかなり国際色豊かなものなんだなと清水は感慨にふけった。とても気持ちが落ち着ける感覚にはならず踏み出そうとしたときに男たちに制止される。
「ボディーチェックだ。武器は置いていけ」
男たちのローレディーで保持された自動小銃の整備油の光沢が目に付く。威圧的な表情に梶木は辟易として従えという風に清水にアイコンタクトをする。二人は持っていた拳銃やナイフを門番二人に渋々明け渡して他に何か怪しいものを持ってないかまさぐられ特に何もないことを確認されたのち開けられた扉を潜ることができた。
男たち二人を通り過ぎるとき、会いたかったぜ英雄、と聞こえた声を清水は聞き逃さなかった。
「待ってたぞ梶木、そして、清水 総一郎、初めましてだな」
開かれた扉の向こうは想像通りというか殺風景な内装が広がり一般的なオフィスと言った感じだ。自然溢れる空間から一転、こんなビジネス空間へ繋がる場所があるとは普通は誰も思うことは無いだろう。
そんな中どこからともなく迷い込んで怪しげな商談を持ち掛けてきたロシア軍人二人を思い出す。他に従業員というか組織の構成員はいないのかと見渡すがまるで人の気配はしない。
まっすぐ歩いていった先にある奥の一室では中央に備え付けられたデスクがある。そこには書類が詰まれ一台のノートパソコンがあり、いつでも飛べるように簡略化されているせいからかデスクトップではないのかと穿った見方をしてしまう。
どうにも反社会的勢力として考えると全ての事象を清水は悪い方向へ曲解してしまう癖があるようだった。
そしてそこにはマネージメントチェアに腰掛ける白いスーツ姿の男がいて悪人の模範ではないかというような面がある。物音ひとつしない辺りの風景を観察しながら清水は一礼した。
まずは梶木が切り出した。今回の清水を実行者として行った奥田大尉の周辺の偵察、そして襲撃を受けたこと、その際運用しているウィザード小隊の所属と思われる一般では異能と称される存在から攻撃を受け殺されかけたこと、梶木は公安の網に引っかかったということに加えて清水から回収したUSBメモリを手渡す。
ロシア人二人と接触したことは報告の内容からは消えていた。
「ほお、随分はしゃいだもんだな」
男はUSBメモリをパソコンで起動した動画を確認してから静かに笑い机の上で手を組んだ。年齢は40台前半と言った所か。一体その男がどんな悪行を積んでその地位に上り詰めたかは分からないが表情からこれまで積んできた結果である強い狡猾さを感じることができる。
以降ボスと呼ぶが清水にとって所属上のトップという意味合いだけであり心から信頼していい人種でないと認識している。
ボスの視線は清水を興味深げに捉え初めて対面したせいだったとしてもヤケに見られていることを気にした清水は視線をどこに向けていいのか悩んだ。
「清水、奥田は元上司なんだろう。どうだ、あいつは殺せそうか」
反応を確かめるようにボスは尋ねる。その期待を孕んだ声に清水はなんと答えるのが正解なんだと思い、
「勿論です」
無難な返事をした。門番の男が言った言葉が心の奥に突っかかる。一体どんな認識をされているんだと想像を膨らませるがどこからともなく清水の存在を抹消された一件がある程度漏れているとしか考えることができなかった。ボスは依然好奇心を衰えさせない様子だ。
「先の暴動でお前は大活躍したようだが、こちらの界隈までもその名は轟いているんだよ。まるで伝説の日本兵だ」
中々聞きなれない言葉だが何かを察したのか清水は固まった。
「ああいや、他人の空似なんだが、俺が個人的に深く傾倒している人物でな。お前の名前や、お前自身を見聞きしていると再来なんじゃないのかと期待してしまうもんだよ」
馬鹿げた空想話に清水は気が遠くなりそうになった。梶木はただ押し黙って突っ立っているのみであり話題を変えてくれるような気配はない。
「俺を英雄と並べるのは失礼です」
「そうか?俺はひょっとしたら生まれ変わりなんじゃないかと思ってたんだよ。ロシアの地で暴れ倒した、陸軍が崇め奉る最強の英雄、神様みたいなものだ。ぴったりだと思わんか」
何とか話題を変える必要があると清水は頭を悩ませた。SOSの視線を梶木に送り続けているとようやく助け舟を役に立たない同僚は出すことにした。
「この男は気難しいやつでしてそれに加え荒くれものです。あの北九州での暴動でもウィザードを殺しつくし挙句殺害されて世間から存在を抹消された男であり、しかしなぜかこうして一命をとりとめています。それだけじゃありません、こいつは軍にいた時も記憶喪失で唐変木のわからずやになっていましてね。とにかくいかれた男であってその伝説の日本兵と話を混同してもなおさら持病が悪化するだけだと思いますよ」
その出まかせのようでありのままの真実を述べただけのような言葉にボスは目を丸くした。
「なに、記憶がないのか。それじゃあほんとにひょっとしてなんてことがあるのかもしれんな」
ボスは変わったものが好きな趣向がある、機嫌がいいだけ今回の件を特に咎める気配もない、お前はそのまま気に入られとけ。そういう風な視線を受け取った清水は黙って固唾をのむことにした。
「伝・説・の・日・本・兵・はもう70年ぐらい昔の人物です。そんなやつが今頃そのまんまで生きてるわけもないでしょう」
梶木の言葉はその場しのぎのインチキさを孕んでいた。
それでしばらくはこの件に関しては深堀する気もなくなったのかボスは今回の報告に対する追及を始めた。
「清水が途中で戦闘を行ったという娘のようなウィザードを攻略するには何が必要であり、何がそいつの砦になると思う。その忌々しいガキを始末しない限り話も進まんだろう」
人でなしらしい発言をボスは繰り出すようになった。ここからが具体的な本命になってくるのだろうか。回答を促された清水は言葉を選んだ。
「風を詠唱の基準として武器とする異能を行使するウィザードです。手つかずの潜在的な者でなく奥田大尉らによって軍事訓練を積み重ねられることにより人を殺すことに躊躇を持っているようにも見えません。練度も充分。ただ奥田大尉のバックに何があるのか、関わってる背景を解き明かす必要もあり捕まえて吐かせるのもありかもしれません」
「それも考えてもいいかもしれんな。ところで清水、お前は軍にいたころああいう連中とやり合ってたみたいだが詠唱とかそういう言葉にもずいぶん詳しいところがあるんだな。もしかしてどこかで教育でも受けたのか」
清水の過去を探るような発言にどう答えるべきなのか分からず悩ましげな表情を作る。相手の意志は強く一切話題を切り替えることもしない、その押しに負けて清水は続ける。
「自分自身がウィザードの教育を実施したこともあれば戦闘経験もあるからです。そこに至った過程なんてのは個人的であり組織的な問題ですが詠唱は訓練さえ積めば、あとは素養次第でなんてことない真人間でも使えたりするようなもんです」
その言葉にボスは笑みを浮かべた。
「そういうのが聞きたかったんだよ。今後の仕事にも使えるようなことだと思ってな。今度お披露目でもしてもらいたいもんだ」
お断りします、と清水は心の中で念じた。これ以上の会話は身が持たないと悲鳴を上げかけていたところ梶木はあとは任せろと言わんばかりに開口する。
それにしてもさっきから妙に温度が下がって気がするな、と清水は肩をさすった。
「ボス、奥田に反撃を受けた以上公安警察も絡んでくる事態は想定できます。念のため拠点を変えて安全地で大人しく静観していることが望ましい。ここは俺たちに任せてください」
「例のロシアから送り込んできた人間兵器の件も含めて言っているのか。確かに噂が本当なら俺たちみたいな海外マフィアが当てつけに狙われでもしたら溜まったもんじゃないな。あそこの大元とは少しぐらい関りもあるがあまりに危なすぎてすぐに手を引かせてもらったんだ」
目の前に立っているボスの表情は険しいものとなり清水と梶木を見据える。その背景に気のせいなのか白い靄、霧、冷気のようなものが漂い始めてきて清水は異変を感じ取った。何かがおかしいと。まさかとは思いながらも目を凝らす。
「そうだな、いつ死んでもそれも覚悟のうえで渡り合ってきたが、ロシア人に喧嘩を撃ったのが関の山だっただろうか…いざ迫ってくるものがあると分かれば俺も殺気立つもんだ」
漏れてくる言葉には後悔や怒り、これまで蓄積された様々なものがあることが見て取れた。だがそんなことよりも清水は目の前の事象に待ったを掛けるべきだと思ってしまった。それが間に合うはずもなかったのだが。
もしも一瞬で氷河期というものがやってきてこの目に映ったとしたらきっとこんな感じだったんだろうと誰もが思ったに違いない。それ相応の出来事が起きた。
次の瞬間、さっきまで寒気を覚えた室温を裏付けるように爆音とともに目の前の空間が巨大な氷晶で覆われ、吹き飛ばされた。
血しぶきが舞いボスの姿は無残なものに成り代わり外ごと破壊してきたせいか凄まじい衝撃に残された二人は圧倒された。横から突風が吹き荒れるだけで彼らは無傷で済む。
とんでもない速度で気温が下がり凍えそうになる体をなんとか適応させようとしながら清水は叫んだ。
「これがお前が隠してた氷結の女王ってやつか!」
梶木は表情を強張らせて、
「さあな、今はそんなこと考えたくもないな!目の前で起きたことを整理するだけで精いっぱいだ」
爆音が轟く中大声で意思の疎通を図って次なる一撃がどこからともなく降ってくるのではないかと二人は必死になってどうやって退路を切り開くべきか考えた。
ボスの生死の確認はどうなんだと冷静な視点から見ればなるだろうが野生の勘が叫ぶのだろう、今はそんなことより安全なところへ身を隠せと。
右方を穿つように開けた穴から氷晶は伸びてきていることが確認できる。そこからは大量の冷気、蒸発したドライアイスのようなものが流れてきて視界を奪うがやがてうっすらと人影が見えてきた。その人影は段々とはっきりしてきて一人の少女の身体をさらけ出す。
「お前が…」
透き通る肌に美しい銀髪、ルビーのような赤い目をした少女だった。特質なのはセーラー服を着ていることくらいで制服から察するに誠堂高校だ。どこからどう見てもロシアから送り込まれたと思われる言わば氷結の女王と思われ、次々に疑問が湧いて出る。
清水はぽつりと声に出したきり次に言葉が出てこず何と声を掛けたらいいのか迷った。目の前で起きた怪現象にただ震えることしかできずこれはきっと気温の急激な変化のせいだと割り切る。
「エヴァ・ブレイフマンだな」
代わって梶木は努めて冷静に少女に声を掛けた。なぜそんな名前が出てくるんだと清水は唖然とする。少女は眠たげな眼を向けて興味のなさそうに切り捨てた。
「なんだ。思った以上につまらない」
透き通った声は日本語で、そして綺麗で清水はただ聞き惚れる。だが彼女から出た言葉に耳を傾けてみると随分物騒なやつだと見受けられる。殺人を犯してこんな感想が出てくるあたりとんでもない人格破綻者であることは否めない。芝居とも思えない特殊性を醸し出したエヴァ・ブレイフマンを見て梶木は呆れた。
「どこの誰に頼まれたか知らねえが口封じのために海外マフィアを潰しに来たか?うちは殺し屋稼業専門だがお前のいる組織に喧嘩まで売ってるとは思いたくないな」
清水も肩をすくめてどうしようもないな、と意思表示をしようとしたがあまりに目の前で起きた事象の希少さから何をしようともちぐはぐなものになりそうで結局どっちつかずな、ただ黙って指をくわえている状態になってしまっている。
「おい清水、なんとか言ってやれよ」
清水にも呆れたように梶木は白い目で見た。わかったよ、と誤魔化すようにしかめっ面を作り清水はエヴァに訊ねた。
「どこから来たんだ?お前の目的は一体なんだ?怖いおじさん達が探しに来てると思うが迷子か何かなのか」
「エビルガーデン。アダム、預言者によって示唆されやってきた。イワノフ達は軍の犬」
途切れ途切れな説明のおかげで電波のような印象を見受けられるがよく聞いてみるとかなり的確に質問に答えてくれていて理解能力は人並みにあるようだ。
「一体何の話だこれは?そのやばそうな庭ってのは?」
小声で清水は梶木に情報提供を求めると向こうの国のウィザードで揃えられたテロリスト集団だと添えられる。何でも知ってるんだなお前は、と清水は伝えたと同時になんでもお前は隠してるんだな、とも伝える。
凍てつく空気に侵食され足先まで凍る感覚に覆われこれ以上は耐えられないと二人ともに意見が一致し掛けていた時、
「邪魔な連中が来る」
そうエヴァは寒がる様子も見せず言った。目つきは心なしか鋭く明確な敵意を感じることができる。
それから先ほど通ってきた扉の方から二人分の足音が近づいてきた。
「英雄!無事か!」
流ちょうな日本語で西洋人の二人がやってくる。轟音を聞いてやってきたようで凄まじい焦りようだ。室内に生成された巨大な氷の結晶を見て戸惑いを隠せないようでエヴァを見据えて怒鳴り散らした。
「てめぇこの糞アマが!ボスをやりやがったのはお前か」
凄まじい怒りようの傭兵二人を目の当たりにしようとも一切たじろぐこともなくエヴァはあろうことか舌打ちをして見せる。その姿を見てスプリングで垂らされた自動小銃を構え男たちは威嚇した。
「忘れてた、お前に返すよ」
そういって男の1人は振り返って清水に自動小銃と拳銃、ナイフを返す。梶木の拳銃を清水は我先に押収し、そしてなぜか分解された小銃が結合されて返ってきたのを確認して清水は思った。この門番達は一切仕事らしい仕事なんてしてないじゃないかと。
「そういうことで、ここに攻撃することがどういうことなのか、嬢ちゃん、きっちりわからせてやるからなぁ。そんな制服まで来ちまってもしや破廉恥なことでも希望か?」
やたらと精神不安定になって叫ぶ男たちを見てボスが死んだこと以上に自分たちの食い扶持がなくなることに対しての怒りなのではないかと清水は推察してしまう。
「梶木、お前もパパ活希望か」
「何の話だ」
さらに気温が変わったことに気づいた時には異変は起きていた。腕組みをしたエヴァはその美しい相貌から放たれる凄まじい眼光を向けた。
「…」
さっきまで喚き散らしていた二人が急に静かになり、あまつさえ呼吸まで聞こえなくなる。一瞬だけ肺が凍ったかのように白い息を吐くような音は聞こえたが。
返事のない傭兵二人を恐る恐る清水は確認した。そして驚愕する。
「凍ってるのか」
彼女に睨まれたであろう二人は気温の低下と共に体を完全に凍結され、さっきまでの姿勢を保ったまま生命活動を停止していたのだ。携行していた武器を含め完全に凍てつき二人だった物体からは冷気が漂い見開かれた瞳がある。彼らは氷像として成立し、まるでアートだと思われてもおかしくなさそうだ。
この状況は、どうやら女に見とれている場合ではないと清水は悟った。
「ボスを殺すことでお前の任務は果たされるのか。何がしたいのやら、俺には全く分からないぜ」
気休めのように言って清水は辺りを警戒するように観察する。起きている異変と言えば少しずつ室内を含めこの地下シェルターのような構造物全体が氷に覆われているんじゃないかという懸念だ。だとすれば一刻も早く脱出したいと誰もが思うわけだが如何せんこうして一瞬で精強な男二人を氷漬けにした女だ。
そこにどんなマジックが仕掛けられているのかも定かではないがこれまで数々の超常現象を目の当たりにしてきた清水は様々な憶測が邪魔をして行動を起こせないでいた。
「目ざわり」
少女は誰もいない空間に一人呟いて清水と梶木を見つめた。その空気の異変を感じ取った梶木はどうにも動きの悪い清水に飛びついた。
「伏せろ馬鹿野郎!」
轟音、氷河の塊が押し寄せてきたなんて経験は人生でそうあるものではないだろう。人間一人が気分1つでこうして人を殺すことができる現実を知って多くの日本人なら一体どう思うのだろうか。命の危険を感じた瞬間というものは物事の時の流れは遅くなるように感じる。
ゆっくりと迫ってくる結晶に反射する自分たちを見て数千年後ひょっこり探検隊に発掘される未来なんて言うものは想像したくないと清水はこの期に及んでも暢気なことしか考えることはできなかった。
戦争、戦闘を経験したものとして結局清水は幾度となく窮地に追いやられ死の淵に追い詰められたとしても駄目だと思った瞬間、存外恐怖より楽観的でくだらないことを思い浮かべていたのかと己の精神を嘲る。梶木はどんな心境でこの状況を捉えているのかは不明だが殺し屋稼業に加担している以上理不尽な展開を目の当たりにしたところで泣き叫ぶ、悲観して追いつめられるなどということは無いだろう。
そんな二人のピンチを救うべくすんでのところで飛び込んできた助っ人たちがいた。
「ガブリロフ!詠唱だ!」
「Gott, gib mir Schutz vor den großen Prüfungen!」
伏せた清水と梶木を抑え込むようにロシア軍人イワノフ大佐、ガブリロフ少佐は飛び込み二人とも低い姿勢を保ち、少佐は素早く詠唱した。聞きなれない外国語と共に眼球まで空気を侵食して氷柱が届くんじゃないかと思われた距離で敢え無く弾ける。
まるで見えないシールドでも張られたように空気を侵す氷河の結晶は防がれ清水たちを球場のバリアが覆っているのか円を描くように空間は凍っていく。綺麗に弧を描いたそれはさらに後ろに広がるオフィス空間を完全に吹き飛ばした。
一片たりとも破片を残さず粉々に。鼓膜を震わせる爆音とともに一瞬で白銀の世界が形成され四人はただ歯を食いしばって氷により激動が止むのを待った。
「とりあえず一発目は凌いだか」
冷や汗を流しながらイワノフはやれやれとため息をついた。
やがて目の前に広がる巨大な氷壁はじわじわと溶けていきセーラー服がやけに似合うエヴァだけが依然変わらず傲岸不遜な態度で立ち尽くす。誰が見ても美少女と形容するだろうその容姿を見れば新しい性癖に目覚める物がいてもおかしくないと言えるだろう。
「残念ながらこの状況でそんなことを思えるバカはお前だけだ、清水」
梶木は呆れを通り越して真顔で清水の思惑を見破った。人間の慣れというものは恐ろしいと清水は実感し、やがて何もなかったかのようにまじめな顔をして慣れたフォームで自動小銃を構え銃口をエヴァへ向けた。
「銃如きで肩を付ける気か、逃げるぞ」
イワノフは清水の身を案じて声を掛けるが反応のない蛮勇をふるう男に戸惑う。
こいつに何を言っても無駄だと梶木は開き直り自身の拳銃も強奪された以上早々にこの空間から離脱を試みて、イワノフとガブリロフは仕方なくそれに倣うこととする。
「貴様、こんなとこでプライドを張ることは無いんだぞ。さっきの男どもを見たであろう。下手に刺激を与えてこのざまだ」
去り際のイワノフの言葉をありがたがる様子も見せず清水は一蹴した。
「問題ねえな。まあ離れたところから見てろ」
その根拠のあるのかないのか分からない自信に辟易とした三人は入ってきた鉄製の扉へ向けて駆けていく。
舞台は二人の独壇場となる。
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