第23話 街の混乱に乗じて③
「あ、あはは…………ごめんね?嬉しくつい」
奇跡を施されているカインへとアネモネは謝る。
「い、いや…………こちらこそ遅くなっちゃってゴメンね…………」
「分かれてから結構時間経ったけど何か有ったの?」
「この騒ぎで食料や旅に必要な物を買い漁る人が増えまして…………街を出る支度をするのに時間が掛かってしまい申し訳有りません」
「遅くなったのはアネモネの重ったい荷物のせいも有るし全部アンタのせいじゃない!」
「あう!?ゴメンねぇ……」
反論の余地も無く、アネモネはしおらしく謝る他に無かった。
いろいろ有り過ぎた一日に疲れ切った四人はそれ以上移動する気になれずそのまま丘の下で野営する。
「はむっ……んぐ…………それにしてもこの首のコレ何だけど」
焚き火を囲い食事をしている時にシェリーは自身の首元に刻まれた花を象った模様が光を失ってはいたがくっきりと刻まれていた。
「刻印の事?」
「これって一生消えないワケ?カインは手首だしアタシは首元だから隠せなくは無いし良いけどリリィは顔に出てるじゃないの。嫁入り前の女にそんな物刻んじゃうのってどうなのよ?」
シェリーはジトッとした目でアネモネを睨む。
「あら、私としては一向に構いませんが?しいて言うならこの目で見られないというのが残念ですが」
しかしリリィは気にするどころか誇らしげに刻印の刻まれた頬を撫でる。
「あー…………刻印を刻む時に注いだ魔力が注がれた側に馴染んだら消えて普段は見えなくなる…………らしいよ?」
アネモネは自信無さげに答える。
「らしいって何よ?」
「らしいんだけど誰かを眷属にするのは始めてだからどれくらいで消えるのかは分からないかな?」
「なんと…………それは残念ですね」
「なに残念がってんのよ?そんでこの刻印は何の意味があんのよ?」
「えーとねえ、他のドラゴンに手を出させない様にアピールするのと後は主従同士で互いの位置が分かったり念話のやり取りとか出来るよ?」
「へぇー…………ん?あれ?だったら僕達を待っている時に遅くなってたからって心配する事も無く僕が潰される事も無かったんじゃ…………」
カインは気付き、アネモネに潰されかけた腹を擦る。
「それを忘れるという事も無いでしょうし、刻印が馴染むまでは使えないとか恐らくそういった理由が有るのでしょう」
「そ、そうそう!そんな感じ!あ、あはは…………」
アネモネはただ不安から使えなかっただけだだった事を笑って誤魔化す。
「まあ悪い事が無いなら良いわよ。ドラゴンの魔力に耐えきれずに体が弾け飛んだりするんじゃないかって心配したわ」
「そんな事ならないよ!?むしろ少し元気になるらしいし!」
「元気にねぇ?」
「あー!シェリーちゃん疑ってるでしょ?」
「だってそれも聞いた話なんでしょ?」
「それは…………そうだけどぉ〜。もうっ!シェリーちゃんのイジワル!」
「はいはいゴメンってば」
四人は焚き火を囲いながら賑やかに夜を過ごす。
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