第22話 街の混乱に乗じて②

そして街の外へと飛び立ったアネモネはと言うと合流地点の丘に降りて、人の姿に変わって丘の上で三人を待っていた。

「遅いなあ…………」

 既に日が落ちてからかなりの時間が経つが三人は来ていなかった。

 街道を行く人影は多く、アネモネはシェリー達ではないかと何度も期待したがどの人影も丘を通り過ぎ、アネモネの待つ丘には誰も来なかった。

「もしかして来ないのかな?やっぱりドラゴンなんて怖いだろうし…………通り過ぎた人影の中にあの三人が居たんじゃ…………」

 ドラゴンとその眷属は刻まれた刻印により繋がっており、その気になればどこに居るかは探し出せるし念話も送れるのだがアネモネはもし三人に逃げられていたらと考えると恐ろしく、そうする気になれないでいた。

 アネモネは不安に打ちひしがれ、膝を抱えて座り込む。

「アネモネェー!どこ居るのよー!」

「は!?」

 塞ぎ込み、じっと孤独に耐えているとアネモネを呼ぶ声がアネモネの耳に届き、アネモネは勢いよく顔を起こす。

「見当たりませんね。居ないのでしょうか?」

「んぎぎ………………きっと丘の反対側に居るんだよ。それより二人共、もっと力入れてくれるかな?重くて腰が砕けそうだよ」

 アネモネが丘の下を見下ろすとそこにはアネモネの鞄を背負うカインとそれを両脇で支えて運ぶシェリー達の姿があった。

「シェリーちゃん!カイン君!リリィちゃーん!」

 アネモネは歓喜のあまり、丘の上から跳躍し、三人へととびかかる。

「へ?…………上よ!」

「きゃあ!?」

「へ?うぎゃあ!?」

 シェリーとリリィはギリギリ跳び退いたが重い荷物を背負うカインは未動き取れずアネモネとアネモネの巨大な鞄に押し潰された。

「う…………ぐぅ……」

「ふっふ〜!遅かったから心配したよ〜!」

 ぐったりと倒れるカインの胸にアネモネは頬ずりして喜びを表す。

「アンタねぇ!流石にあの高さから跳び掛かるのは危ないでしょ!カインが死んだじゃない!」

「ごめんねぇ〜!もうしないよ〜!」

 シェリーに怒鳴られてアネモネは謝るがその声色に申し訳なさは欠片も無く、喜びの感情しか込められていなかった。

「う、ぐう…………い、生きてる…………よ…………」

 カインは息も絶え絶えに声を振り絞る。

「ああ…………後で癒やしの奇跡を施しますね」

「すぐに…………今すぐ…………お願い…………します」

「ほら、アンタが離れないと奇跡使えないでしょうが…………って離れなさいよ!」

 しかしアネモネはなかなか離れずアネモネの気が済むまでカインへ奇跡は施されるのは少し先の事だった。

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