第21話 街の混乱に乗じて①
《ありゃりゃ、行き過ぎちゃったかな?》
外は既に日が沈みかけた真っ赤な空をしていて山の麓に広がるエルビスの街も赤く染まっていた。
《えっと…………とりあえず外へと出れたよ?》
「山をぶち抜いて出るって…………ヤバいわね」
「は、ははっ…………流石ドラゴンだね」
「あのこれって不味いのではないでしょうか?」
しばらく間を置いて街の方から悲鳴がいくつも上がる。
言うまでもなく山を突き破り出て来たドラゴン、つまりはアネモネに対しての恐怖の悲鳴だ。
《あわわわわわわ…………》
「アンタこれどうすんのよ?」
「このままでは街が混乱の渦に…………」
「既に手遅れじゃない?」
街は阿鼻叫喚となり山の反対側、街の外へと続く門へと人々は一斉に駆け出していた。
《ど、どうしよ〜?》
街の騒乱は凄まじく膨れ上がり続けて留まるところを知らない。
「アネモネ、アタシ達をここで下ろしてアンタはどっかに飛んでいきなさい」
《へ?》
「シェリーさん?」
「何か考えが有るのかい?」
「考えってもんじゃないわよ。とりあえずアネモネがここからどっかいかないと収まらないでしょ?アタシ達は後から合流するわよ」
《わ、分かった》
「アネモネさんとはどこで合流しましょうか?」
「ええっと…………あっ!あそこ!」
カインは遠くに見える街道から少し外れた場所にある丘を指し示す。
「僕等とアネモネが出会った場所だよ!あそこにしよう!」
「決まりね。アネモネ、アンタはさっさと飛び立って先に待ってなさい」
《分かった!また後でね!》
アネモネは三人を下ろし山から這い出る。
そして翼を広げて一気に飛び立ち、街の上空を突っ切って合流地点の方へと飛び去った。
「街の方はこれで静まるでしょうか?」
「さあね。アタシ達もさっさと街を出るわよ」
「そうだね。ここに居るのを見つかったら面倒にしかならなそうだ」
三人がそそくさと山を降りて街に戻った頃には多少は落ち着いていたが街のあちこちで荷物を纏めている者が溢れかえっていた。
既に日は落ちていたが街の外へと向かう者も少なく無い。
「この分だと街から出て行っても怪しまれる事は無さそうね」
「アネモネを待たせちゃ悪いし急ごう」
「そうですね」
シェリー達は騒がしい街中を歩く。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます