第20話 脱出
「ちょっ……!?」
「うぐっ…………」
「アネモネさん…………苦……苦し…………」
「あ、ごめんね」
アネモネは謝罪し力を緩めるがその抱き締める手は離さない。
《おい、いつまでそこに居るつもりだ?さっさと出て行け》
奥に引っ込んだ漆黒のドラゴン、ノワールが苛立たしさを隠さず語り掛けてくる。
「…………とりあえずここから出るのが先決ね。ドラゴンブレスで消し飛ばされたくは無いわ」
「それには賛成だけどどうやって出るの?」
「どうしましょうか?」
ここへは落ちて来たので来た道を辿って帰る事も出来ない。
周囲を見渡しても道らしき物は一つも無く、何処にも行く宛は無い。
「道…………無いね?」
「有ったとしても外に出るまでに力尽きない自信が無いわ」
「既にかなりの消耗ですし魔物と戦闘になればどうしようも無いですね」
「随分と高い所から落ちて来たのね。私達」
シェリーは遥か遠い天井を見上げて他の三人も後を追うように見上げる。
「私に任せて!私なら皆を上まで行けるよ!」
「は?何をお!?」
「おわ!?」
「はわわわ!?」
アネモネの身体が光に包まれ膨れ上がり竜の形に変わって行く。
光が収まるとアネモネは竜の姿となっており、シェリー達を両手で包み込む様に掴んでいた。
《危ないからじっとしててね》
そしてそのままアネモネは翼を広げて頭上へと真っ直ぐに飛び上がった。
「うぐぁ!?ちょっ待っ!?」
「あがががが!?」
「う…………くぅっ!」
その速度にアネモネの手の中の三人は血が一気に下がり苦しむ。
「ちょっ…………ちょっと待ちなさい!アネモネェー!」
堪らずシェリーはアネモネへと必死に叫ぶ。
《へ?どうしたのって……ありゃ!?》
凄まじい衝撃音が轟く。
それはシェリーの叫びにアネモネは余所見してしまい、坑道の岩盤を紙の様にあっさりと突き破ってしまった音だった。
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