第19話 眷属の刻印②
「ええっと……本当にアネモネさん…………なんですよね?」
沈黙の中で一番に口を開いたのはリリィだった。
「うん。私はアネモネだよ。本当はドラゴンだって事秘密にしててゴメンね?」
「アンタがドラゴンだって言うのは疑う余地も無いけどなんかいろいろと有り過ぎて頭が追い付かないわよ」
「ホントにね。いきなり落とされてドラゴンブレスで消し炭にされそうな所を別のドラゴン、アネモネに助けられて………………なんておとぎ話でもこんな話は聞いた事が無いよ」
「あはは…………少し状況を整理する事が必要ですね」
「分からない事が有ったら後で何でも答えるよ。何から話そうか?」
「まずコレ何なのよ?」
シェリーはアネモネに口づけされ疼く首元を指差す。
「えっとそれは刻印て言ってね…………」
それからアネモネは成り行きながら眷属になった三人へと説明していく。
ドラゴンは自身の所有権を他のドラゴンに示す為に魔力を込めた刻印を対象物に刻む習性がある。
命有る者に刻めば眷属、土地へと刻めば縄張りと分類されて他のドラゴンはそれに手を出す事は掟で禁じられ、主のドラゴンは眷属を庇護する義務が生じる。
そして刻印の力により眷属には主への絶対服従を架せられ全ての行為、自身の生殺与奪さえも奪われ一生を捧げる事となる。
「へえ。つまりはアンタがアタシ達のご主人様になって一生仕えなきゃいけないワケ?」
シェリーは不機嫌そうに確認する。
「はう!?う、うん…………ごめんね」。
「シェリー、アネモネは僕達を助ける為にしたんだよ?」
「そうですよ。そうでなければ今頃私達はドラゴンブレスで消し炭になってます」
申し訳無さそうに項垂れるアネモネをカインとリリィが庇う。
「はぁ…………分かってるわよ。んで?眷属って何するのよ?」
「ええっと…………眷属って言っても色々な関係性が有って…………」
ドラゴンとその眷属の関係性は様々だ。
眷属は人とは限らずむしろ動物や魔物を眷属とする場合の方が多い。
自身の縄張りに侵入する存在を自身の代わりに排除を命じて放置する場合もあれば側に侍らせて身の回りの世話をさせたり、愛玩用として愛でたりと全ては主であるドラゴンの自由だ。
「私としては自由に生きて欲しいから別に何か行動を制限とか命令とかしたくは無いかなって……………ただその…………出切れば友達として一緒に居られたらなって思うんだけどどう……かな?」
アネモネは恐る恐る尋ねる。
「まあ構わないけど…………」
「別に今まで通りなだけだし僕も構わないよ」
「竜教徒の私としては身に余る光栄ですのでむしろこちらから伏してお願いする程です。これからもよろしくお願いしますね」
「ホント!?やったー!」
あっさりと了承されアネモネは感激のあまり飛び付き、三人纏めて抱き締める。
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