第16話 窮地

「この感じ…………」

「ちょっと?いきなり立ち止まってどうしたのよ?」

 アネモネが返事をする間も無く、突如轟音と共に坑道全体が揺れ始める。

「こ、これは…………」

「うそ!?うそでしょ!?」

「地震!?こんな所で……?」

 立てない程の激しい揺れは坑道を崩壊させ、四人の足元が崩れ落ち、突如現れた空洞に飲まれて落ちていく。

「「「「ああああああぁぁぁぁ!!??」」」」

 四つの叫びが重なりかなりの深さがある空洞を落下していく。

 叫びが続かなくなってようやく底へと辿り着き四人は叩き付けられる。

 水飛沫が豪快に上がり、四人は水の底へと沈んでいく。

(み、水!?)

 魔石を背負っていたアネモネは崩壊した坑道の瓦礫が沈む底まで一気に沈む。

(地底湖!?他の皆は!?)

 アネモネは周囲を見渡してシェリー達を探す。

(三人はどこ?………………いた!)

 水の中は坑道と同じ様に魔石の光で明るく照らされているのもありアネモネは水中を力無く漂っている三人を見つけた。

(待っててね!すぐ行くから!)

 アネモネは魔石を捨て置いて水底を人ならざる力を込めて蹴る。

 蹴った瞬間にアネモネの体は砲弾の如く水中を突き進んで三人纏めて抱え込む。

 両手が塞がったアネモネは両足と尻尾を使って一気に水面に向かって浮上した。

「ぷはぁ!シェリーちゃん!…………カイン君!…………リリィちゃん!」

「ゲホッ!…………う…………ぁ……」

「アネ……モ…………さん…………」

「ゴホッ!…………うぅ…………」

 アネモネは三人に声を掛けるがかなりの高さから水面に叩き付けられた衝撃で三人は虫の息だった。

「とりあえずこの地底湖から出ないと」

 アネモネは三人を抱えたまま一番近い岸へ泳ぎ、地底湖から這い上がり三人を引き上げる。

「よいしょっと。待っててね。すぐにポーションを…………」

アネモネはシェリーの懐を探りポーションの小瓶を取り出し栓を開ける。

「シェリーちゃん…………!コレ飲んで…………」

 アネモネは一人ずつ体を抱き起こしポーションをゆっくりと飲ませる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る