第15話 異変

 それから魔物との戦闘と魔石の採掘を繰り返したが危なげなく勝利し順調に魔石が溜まっていった。

「流石に疲れたかな。皆は大丈夫?」

 何度目かの魔物の襲来を打ち倒しカインは少し息を乱しながら他の三人の状態を確認する。

「私はいつも通り魔石を運んでるだけだから大丈夫!」

「私は後衛で戦闘は控えめなので余裕は有ります」

「アタシは…………もう結構辛いわね」

 壁によりかかっているシェリーは魔物を察知と魔術を用いて戦う事の両方で神経を擦り減ってしまい最も消耗が激しかった。

「順調だったからつい行き過ぎたね。もっと早く引き返しても良かった位だ」

「そうね。既に魔石は充分だし帰りましょう」

「シェリーちゃん少し休も?辛そうだよ」

 よろよろと歩みを進めようとするシェリーを心配しアネモネは体を支えようとする。

「歩くくらいなら平気、そんだけ魔石が有るんだからのんびり休んでいる暇は無いわよ」

 アネモネの背負う袋は魔石で半分程膨らんでいて魔物を引き寄せるには充分過ぎる量だ。

 ましてや今までより深い場所、魔石の純度も今までよりも高いので危険度も段違いだ。

 立ち止まっていては魔物に囲まれるのは間違い無い。

「急ごう。シェリーは魔術はなるべく使わないでね」

「そうさせて貰うわ……」

 四人は魔石の採掘を終えて帰路に付くことにした。

「でやあああ!」

 立て続けに来る魔物をカインは次々と倒していった。

「はあ…………!はあ…………しんどい……」

 カインは魔物の襲来が途切れたのを確認して壁へと寄りかかる。

「流石にヤバいわね。カイン、丁度魔物も途切れたし少し休みなさいよ」

「そうすべきですね。少しだけならば私一人でも食い止められるでしょうし息を整える間くらいはお任せ下さい」

「任せて大丈夫かい?」

「アタシもまだ魔術を打てなくも無いし危なそうなら援護するわよ。それよか今は心配なんかせずに休んでなさいっての」

「う、うん。お願い…………」

 カインは壁に寄りかかったままズルズルと腰を下ろしシェリーとリリィが見張る中で一息付く。

「今日の稼ぎで何を買おうかしらね」

「ダメだよシェリー?そういうのは無事に帰ってから言わなきゃ」

「そうですね。最後まで気を引き締めて行きましょう」

 そう嗜めるカインとリリィだがその言葉とは裏腹に声色は明るく、機嫌の良さを隠す事が出来ないでいた。

 この量の魔石を持ち帰れば、今までとは比べ物にならない程の稼ぎなのは疑うまでも無い。

 多少疲れている程度ではこの高揚感を抑えるには到らなかった。

「ハイハイ。分かった分かった」

 帰りの道のりは緩やかに傾斜していて細かく枝分かれした道をただひたすらに上って行けば坑道の出口へと自ずと辿り着けるので迷う事は無い。

 四人は引き寄せられる魔物を倒しながら順調に出口へと向かって行っていたがアネモネが違和感を感じ立ち止まる。

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