第2話

俺は今日、法主様に捧げられる。


周りには名誉なことだと褒め称えられた俺はそれから一ヶ月後のお彼岸に法主様のもとへ捧げられる予定のようだ。

だがなにかおかしい。

その日から家族のみなは裕福になり、食事も豪華になった。今まで食べられなかったお肉などの高級食材が多く食卓に出揃い、俺は普段着ないような着物を着ることが増えた。曰く、法主様の御膳でみっともない姿を晒さないようにとのことらしい。

 また周りも雪や榊、亜美のことを前より一層丁重に扱うようになった。

それから一週間ほどがたったある日、俺は俗世の穢を払い法主様に召されるために六畳半の一室で祈りを捧げながらお彼岸の日までひとりで過ごすように、決して外に出ないようにと兄弟たちに口酸っぱく言われ、一人寂しくこの狭く暗い神聖な部屋で過ごすことになった。


知らなければ幸せだった、幸せなまま何も気づかずにいられたのに。


 今日俺が、死んでしまうことを。

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