第3話

それはお彼岸の三日前のことだった。

俺は皆のため必死にご祈念をしていたときに聞こえてしまったのだ。

村の人が俺に食事を持ってきたときに偶然耳に入った「法主様に捧げられる」ということの本当の意味を。

 それは曰く、生贄であると。法主様や教団が上手く周るようにするための人柱だと。


 耳を疑った。そうだったのか。

 俺は兄弟たちに、売られたのだ。

 兄弟たちが俺を贄として捧げることで、

 兄弟たちは法主様の御弟子になれる。

 兄弟たちこそが本当の贄だったのだ。兄弟たちが俺を捨てることであいつらは教団のために生き、ここで幸せに暮らしていくのだ。俺は兄弟たちが教団の贄になるための贄だったようだ。

 毎年のお彼岸の贄とは、法主による弟子の選別期間だった。贄である俺はお彼岸の日に神の元に返されるのだろう、もう俺は7つを越しているが。いらない子だと、捨てられたのだ。大事だった兄弟たちに。優しかった雪、不器用で温かい榊。お転婆な亜美も。俺を欺いて陥れ、あいつらは全てを手に入れるのだ。許せない、俺はこのまま死ぬしかないのか?


だしてだしてだしてだしてここからだしてだしてだしてだしてここからだせ、だせ、だせ、俺を助けてくれ....!


俺は叫び疲れて崩折れた。この扉はいくら叩いても空かなかった。


 そしてお彼岸の日になった。

俺はこれから、目の前の盃に入った酒...否、毒を煽る。それしか俺はできない。

俺は、生きてはいけなかったのだ。


イキタカッタ。

みんなで幸せに。

この暮らしが続けばよかった。

俺を犠牲にした。あいつら。

ユルサナイ


そこで意識は途切れた。

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