夕焼けのサーファー

various(零下)

夕焼けのサーファー

 海を人生に例える理由が、なんとなく分かった気がする。

 波が、すべてを飲み込む勢いで荒く畝る日もあれば、心地よい風と共に、穏やかにウェーブする日もある。


 我らは、サーファー。

 ボードの上に立ち、バランスを取り、ひっくり返らないように、波に乗る。

 海の波をコントロールする行為は人間には不可能だけど、それでも、自分が乗るボードをコントロールする行為は可能だ。

 すべては、自らの意思でボードに乗り、ボードを操る努力を怠らないか否かにかかっている。


 日暮れが近い。水面は、みずみずしく澄んだオレンジ色に輝いている。


 美しい女性が、一人、サーフボードに乗っている。

 彼女は、サーファー。

 いついかなるときもボードに立ち、波に乗った、勇敢なサーファー。


 わずかに肌寒さを残す空気は澄んでいて、空にかかる雲は、彼女の行手を妨げないように道を開け、水平線は金色に煌めいている。

 彼女の背筋は凛と伸び、美しい横顔は穏やかで、けれども、腹の底からみなぎる圧倒的な力強さは、今も変わらない。


 彼女は、サーファー。今も変わらずボードに立ち、コントロールできない波に乗り続けている。


 彼女はサーファーであり続けた。

 金色に煌めく水平線の彼方がどんな世界なのか、私は知らない。

 でも、美しいサーファーを迎えるに相応しい素晴らしい世界だろう。そうに違いない。

 煌めきを増した水平線が、彼女を拒む日は来ないかもしれない。ならば、せめて彼女に相応しい美しい世界であってほしい。


 凛と波に乗る、美しいサーファーがいる。波は、とても穏やかだ。

 彼女が水平線の彼方へと到達したとき、私たちは、どうすればいい。


 波に乗ろう。彼女のように、コントロールできない波に乗ろう。

 ボードを操り、ひっくり返らないように、ボードから降りたりせずに、波に乗ろう。


 人間にはコントロールできない海の波だけれど、彼女のように、いつか辿り着く水平線の彼方まで、私も波に乗り続けよう。


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