7日目。かやのご両親の元へ。(1)

 今日はかやが来てから一週間。かやを家で預かる、と言うことでかやの両親に挨拶に行くことになった。今日は金曜日なので午前は講義を受けて、今日の夜泊まって明日帰るというスケジュールになっている。かやの両親からは大したお構いはできませんが泊っていってくださいってお返事をもらっている。


 今日はかやは初講義。友達に会えるのを楽しみにしている。


 先日かやにヘアアレンジをしたら好評でまたお願いされた。僕はと言えばまたかやの髪の毛に触れるというのが嬉しくて僕の息子も喜んでいらっしゃる。


 今日は一つに纏めようと思っている。まず、38mmのコテで髪を巻く。下ろしているだけなら腰と肋骨の間程の長さのある髪もポニーテールにすると肩甲骨のあたりまでに落ち着いた。コテで巻いたのもあるとは思うけど、やっぱりこうするだけでも違うよね。


 僕自身は、肩甲骨程まであるストレートヘアをポニテにするのが最強って思ってた時期もある。でも今は、かやの髪が至高で、最強なんです!


 よし、これで終わり。


「かや、できたよ。行こう」


 かやが後ろを振り向く。美人だ……はっ!これが見返り美人ってやつか!(絶対違う)


 僕らはいつもの川沿いを通り、校門の前まで来た。すると、かやのクラスメイトだろうか……男子がかやに声をかけた。


「かやさん、おはよ!」


「おはよー」


 やっぱりかやはモテるみたいだ。少しそのことにやきもきしつつかやの講義のある講堂に向かった。


「んじゃあ、帰りに迎えにくるね。終わったら食堂でこれでも食べてて」


 そう言って僕はかやにお弁当を渡した。


  ***


 自分の講義のある講堂へ行くと明るい茶髪のきゃぴきゃぴ女子が話しかけてきた。


「ねー、あおいくん。今朝のかわいい子誰~?」


 個人的にはケバくて好みのタイプではない。鬱陶しいことこの上ない。相手にしないで放置していると、スマホを覘きこまれた。ちょうどその時表示していたのがかやと撮った家での写真。


「え、もしかしてあの子と一緒に暮らしてるのー?」


「そうだけど?何か問題でも?親公認だよ?」


 未成年の子を―とか言ってくるだろうからこういうの。だから先制しておくのが吉。


「うそ!?――」


 それ以上は講堂に入ってきた先生が言わせてくれなかった。つか、僕の隣から動かないんかい。隣に居られるのは嫌なので、一つ空けて耀あかるをここに呼ぼう。壁になってくれ。そしたら心の中で健闘を祈っておくよ。


  ***


 それはもう、嫌そうなを通り越して嫌な顔してたけど、いつかなんかおごるかなんかするからと言っておいた。


「なぁ、あおい。胡桃くるみが言ってたのが聞こえちゃったんだけど、年下の子引き取ったの?」


「あーうん。なんか、住むとこないって言うから住む?って聞いてみたら住むって言うから一緒に住んでるけど……あとあいつそんな名前だったんだ……」


 あかるがめちゃくちゃ不審者を見るような目を眼鏡越しで僕に向けてきた。


「一応、今日直接ご両親には挨拶に行くんだよ。だから犯罪じゃねぇ」


 あかるはまあいいけどさ、と言うと話題を変えてきた。


「そういやお前、結構モテてるんだぞ?聞いた話だとくるみもお前推しだとよ」


「へーーーふーーーん」


 あかるが苦笑いしながら話を続ける。


「くるみって結構人気あるんだよ、かわいいって。まあ、俺はあいつよりも明音あかねみたいなのがタイプ」


「名前も知らないし、興味ないやつに好かれてもねぇ……」


「よっ、色男」


「うっせえ、お前には負けるよ!」


 言い合いを楽しみ、休憩が終わる。また講義が始まった。


  ***


 よっしゃー、終わったー!


 講義が終わり晴れやかな気持ちで荷物を片付ける。すると、かやがやってきた。周りは見知らぬかやに疑問符でいっぱいだろう。


「あれ、かやなんでここきたの?まぁいいや。お待たせ」


 かやに向かっていい笑顔で話す。今、周りは僕がかやに向けている顔に驚きを隠せていない。


 女の影0こと、僕あおい。氷点下の言葉攻めで相手が凍る、こと僕あおい。全部あかるが教えてくれた。


「かや、僕、モールで手土産買ってくるからモールの中の好きなとこいて。後で教えて」


「ラジャ」


 モールのホールでかやと別れると、僕はお酒が置いてあるコーナーへ向かった。


 小さいサイズのボトルの日本酒を買うと、次はハンドクリームを買った。それと、菓子折り。


 日本酒はかやのお父さんに。ハンドクリームはかやのお母さんに。菓子折りは兄妹もいるので持っていく方がいいだろうと思ってのことだ。


 食品売り場を出てホールに行く。すると見覚えのある明るい茶髪がこちらに向かって歩いてくる。


「あれ、あおいくんじゃん」


 うげ。きゃぴきゃぴ女子じゃん。


「何か用?」


「こんなところに来るなんて珍しいなって思って」


 これでも近所だからよく利用してるんだけど。なにをどうやったら珍しいって言えるんだ?


「別に」


「そうつんけんしないでよ」


 うざい。じゃま。迷惑。意味わかんねぇ。


「ちょ、そこまで言わなくてもいいじゃん」


 あれ?声に出てたかな?まぁいいや。


「聞こえてたんならそういうことだから」


 そう言い残し、僕はその場を立ち去る。かやを待つんじゃなくてかやのとこ行くよ。


「かやー」


「先輩!お疲れ様です」


 かやは妙にテンションが高い。


「テンション高いじゃん。どうしたの?」


「先輩と旅行みたいで楽しみなんです!」


 僕は緊張してるよー(⋮^⋮)


 楽しみなところに水はさせないので、そのままに東京から福島へ出発した。


  ***


 福島とうちゃーく。かやの家と僕の家はそんなに遠くないらしく、地元と言うこともあってすんなりと着いた。


ピンポーン


『はーい』


 かやのお母さんが出迎えてくれた。


「遠いところわざわざご足労頂いちゃって。ありがとう。さ、上がって上がって」


 かやのお母さんはきれいな方だった。かやも美人だから血だなぁ。


 リビングに通されるとソファが向かい合わせになっていてお父さんが上座に座っていらした。


「こんばんは。僕は鷲岳わしだけ 藍依あおいと申します。こちら本日お世話になるので手土産です。お受け取りください。ただいまかやさんを家で預からせていただいております。つきましては、そのご挨拶に参りました。かやさんとの約束は住むところが見つかるまでです。付き合う前に僕からはかやさんには指一本たりとも手を出すことはございません。ここにお約束いたします」


 少し堅苦しいけど、一応ね。


「丁寧なご挨拶ありがとう。かやの父のたち 祥慈しょうじと言います。どうかかやをよろしくお願いします」


 それからは晩酌し、酔ったお父さんは退室。僕とかやもお風呂に入ると布団で寝てしまった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る