4日目。入学式。

 今日はかやの入学式。かやは朝から着慣れないスーツとヒール、新しい大学生としての生活に心が弾んでいるようだった。まだ桜は散りきっていないがもう終わりの頃。僕はかやの入学式についていこうと思っている。終わるまでどこかで待っていようかな。


 いつもより少し綺麗めなメイクをしてテンションが高いかや。


「そろそろ行く?」


 ずっとそわそわしているから少し早いけど出かける準備も終わっているようだし、出発しても良い頃合いかなと思い声をかけてみた。


「大学までそんなに時間かからないからまだ行かなくていいかなって思ってるんですけど」


「落ち着かないんでしょ?だったら少し早いけど出かけて待ってたらいいんじゃない?」


 落ち着いてないのがバレていたことが恥ずかしいのか顔を赤くしてうつむくかや。


「そんなにわかりやすかったですかね……?」


 めっちゃわかりやすいよ。言わないけど。


「じゃあさ、その髪の毛少しアレンジしていい?そしたら時間も潰せるし」


 かやの髪をまず二つに分け、編み込みをしながら下めの位置で結ぶ。反対側も同じく。かやがメイクしたのが綺麗めだったのでバランスを取るために編み込みツインテをしてみた。かわいらしさと綺麗な感じでいい感じのバランスになったと思う。ついでにピアスも見えてかわいい。ちなみに息子が喜んでいらっしゃる。ばれないように少し長めのジャケットを羽織った。


 と、言うことで髪を結っていたらちょうどいい時間になったので家を出て川沿いを歩く。


 ツインテが揺れるのがかわいいし、うなじが綺麗に見えている。


 あれ、語彙力が落ちてる気がする。さっきから綺麗かかわいいしか考えてない。まぁかわいいんだけど。


 考えていたら大学の門まで来たのでかやとは別れて別行動をする。


 近くの本屋さんで本を見繕ってカフェへ。タブレットで読む電子書籍もいいんだけど、紙媒体の楽しさってあるよね。さすがに狭いアパートに本をたくさん置くわけにはいかないので実家の自分の部屋に本棚を増やして置いている。段ボールに本を詰めて実家へ送る。そうするとその段ボールに少しだけ中身を入れて母親が仕送りをしてくれる。で、その段ボールにまた本を詰めて送るを繰り返している。実家に帰ったら山積みになった本をしまうところから始めないといけないかも。


 図書館を利用したりしてどうにか本が増えすぎないように調整はしているが、今は大学がやっていないので本を買うしかない。古本屋にたまには足を延ばしてみようかな。


 カフェでカフェオレを飲みながら本を読むこと数時間。持って来た本を読み終わり、今日買った本を読んでいる頃、電話が鳴る。発信元はかやからで入学式が終わったことを告げられた。


「じゃあ、大学の前まで行くね」


 残り少なくなっていたカフェオレを飲み干しカフェを出る。


 大学の門の前にはたくさんのスーツ姿の新入学生の女性がおりかやの姿を見つけるのに少し苦労するが周りは高校卒業と共に髪を染めているらしく黒髪のかやは目立っていたのですぐに見つかった。


 かやの周りには女子二人と男子一人がいた。


「かや、お待たせ」


「先輩、お待たせしました」


 かやに声をかけるとかやと周りの視線も僕に集まる。


「かやちゃん、この方は?」


 髪をほんのりピンクに染めた女の子がかやを小突いて聞く。


「この人はあおい先輩。ここの大学の2年生だよ。先輩、彼女は藤季ときちゃん。この子は椿香ちかちゃん。この人は緑杜りくとさん」


 髪をほんのりピンクに染めた女の子がときちゃんで、活発そうなショートの子がちかちゃんで、こっちをめちゃくちゃ訝しげに見てるのがりくと、ね。


「かや、友達ができたんなら僕は帰ろうか?」


 かやが友達ができたみたいなので、新入生は新入生同士で遊んで帰るのに部外者は遠慮しておいた方がいいだろう。


「お願いします」


「ん、じゃあまたあとで」


 そう言って僕はかやと別れた。


 僕は家に帰ると家事をして時間を潰した。課題もある程度進み集中力が切れてきた頃、うっかり昼寝してしまった。


 隣に人がいることに慣れきっていなかったからか、緊張しっぱなしだったのだろうか、気が付けば22時を過ぎていてニュースが増えてきた頃合いにまでなっていたのだ。


 目を覚ますとかやはしっかり布団を引いて寝ていた。僕の分の布団も敷いてあるし、キッチンには晩ご飯が用意されていた。晩ご飯はありがたく頂き、軽くシャワーだけ浴びると布団に入った。


 あれだけ寝たのに僕は布団に入るなり早々に寝てしまった。

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